見出し画像

読書メモ|だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル


  彼は、東大の建築学科を出て、経営コンサルティングのマッキンゼーに就職。その後、コロンビア大学に留学し、帰国後30歳で不動産会社の役員をしていた。(略)さまざまな選択肢があったわけだが、なぜか収入やステイタスをあげていく道には進まなかった。(略)マッキンゼー時代、1週間のLA出張の最後の夜、疲れ切ってとあるホテルにたどりついた。そこは当時話題になりはじめていたデザインホテルだった。その空間、空気感、喧騒、演出やデザイン、すべてが衝撃的だった。「一気に心臓がどきどきしました。その夜が僕の人生のベクトルを変えた。こんな空間をつくる仕事に関わりたい」(略)一年後にマッキンゼーを辞め、建築とビジネスの接点である不動産開発の修行をするためにアメリカに留学する。
  不動産屋の先輩たちに「そんな手間かけたら割に合わないよ」と言われたけれど、僕らはその「体験そのもの」を伝えるために、一見面倒なことを続けている。(略)不動産には大きなお金が動き、見えにくい部分も多いので、悪いことを考える輩が多いのも残念ながら事実である。僕らはそんななか、誠実に真摯にお客さんと向き合える不動産屋でありたいと思っている
  個人のニーズは多様化しているのに、不動産屋は相変わらず単一的なやり方で運営されていて僕らはそれに不満を持っていた。(略)築年数や平米数、予算などでしか物件を探すことができない。定量的な判断より、もっと定性的な「なんとなく自分好みの雰囲気」といった感覚で選びたいと思う人は多いはずだ。(略)だれかにとって価値のある空間をつくっても、それを求めるひとに届かなければその価値は浮かばれない。そして退屈な最大公約数のようなマンションばかりができていってしまう
  すべては自分たちの「やりたい」から始まる。(略)一方でビジネスとしてちゃんと成立させることには当然こだわる。ビジョンとイメージがあって、戦略も行動もきっちり伴って、はじめてそれは仕事になる。続けるのはさらに大変だ。それでも株主の利益や、規模の「成長」のためにといったことだけで、強い思いもなく始める仕事がうまくいく気がしないのだ。

第1章 東京R不動産の仕事

  不動産契約で重要事項説明というものがあるが、東京R不動産のそれはとても長い。(略)東京R不動産は、借りたひとや買ったひとが改装することも多いから、しきり役である僕らがさまざまな状況を想定して慎重にやらなければトラブルになりかねない。経験のなかった僕らはだいぶここで苦労したものだ。
  メンバーたちは他の業界からきたパターンが多い。同じ業界から来たひとは、常識を知りすぎているからむしろやりにくいのだ。
  組織に所属してステータスを上げる出世の道も確実にこなしながら、同時にプライベートで社会的出世をするという水平展開の軸も持つ「ナナメ出世」に対して、東京R不動産で可能なのは「ジグザク出世」なのではないかと思っている。例えば今年は水平、来年は垂直と決めてみるということだ。
  僕自身とても臆病で、臆病だからこそ僕の目には「〇〇社の」△△です、と「安定した企業」に依存する働き方の方がむしろリスキーにみえてしまうのである。(略)仕事がAIにとって代わられたり、労働力の安い海外にアウトソーシングされる時代に、会社員ならではの給与、保険、福利厚生の「安心感」がどうにも安心と感じられない。(コラム_室田)
  街にはりついて機微をみていると、人生の縮図をみているようだ。いいことよりも悪いことの方が確実に多い。 しかし、私の記憶構造は優れている。おおかたいいことしか覚えていないのである。(略)つらいことの反復作業、自己の弱点を補う作業、そして稀に至福の一瞬が訪れる。おそらく私は自分だけに感じ取れる輝く一瞬を掴み取るためだけに日常の鈍感力に磨きをかけているのだと想う。(コラム_松尾)
  

第2章 会社員とフリーランスの間

  メンバーたちは元々あまり拝金的なタイプではないし、好きな物件を見つけて素敵な人に紹介すること自体にやりがいを感じているのだ。(略)東京R不動産のお客さんは、押し売りするように物件をすすめても簡単に鵜呑みにするような甘い人たちではない。ちゃんと「わかっている」人たち
  「とりあえず数字は上がったけど最近おもしろくないな」という状況が続けばやがてダメになるし「おもしろいけど全然売り上げてないね」というのでは続かない。(略)おもしろいことを続けるために、ちゃんと稼がなきゃいけない
  リスペクトの軸をたくさん持つ組織を目指している。(略)各人が勝負どころを持つ組織。
  僕らの場合、モチベーションを左右する特に重要なファクターは「おもしろさ」と「納得感」である。(略)好きなものを探し出す努力は嫌いなものを探すよりずっとモチベーションがあがるのは当然だ。(略)「納得感」は自由とフェアネスがあること。理不尽なことがない。がんばれば返ってくる。納得するまで議論ができる。これがないと飲み屋でひたすら愚痴ることになり、モチベーションはどんどん下がる。
  従順な社員がたくさんいる会社には求心力はあるのだろうか。会社に依存する人たちの集団にあるのは求心力ではないはずだ。(略)関わるみんながビジョンやテーマに共感し、前向きな気持ちで取り組んでいることこそが何よりも求心力になるはずだ。
  はじめて2-3年の間は兼業している余裕がないというのが実情で、100%コミットして動かないときちんと成果が出てこない。ある程度コツが見えてくると新しいことをやりたくなってきて自分なりのバランスや広げ方を模索しはじめる。そうやってメンバーたちは自分たちの可能性を広げていくのだ。
   採用はとても重要になる。僕らは基本的に人は「やりたいこと」に一生懸命になるものだと思っている。やりたいことを好きな仲間と一緒にやっているときに、ダラけるようなひとはいないと信じている。大事なのは「この仕事をしたい」という気持ちに尽きる。

第3章 いいとこ取りの組織論

  人は結局、合理的でないことに没頭したいものなんじゃないかと思う。
  成長したいと思っているけれど、それは(大きくなることではなく)「インパクト」すなわち社会に対する「影響力」を進化させることが軸だと考える。(略)無駄に大きくなろうとしすぎないことも必要だと思う。ピュアに創造的集中力を発揮し続けられる状態を保ちながら質的な進化を積み重ねていくものは確実に影響力を増大させていく。
  テーマや目的がないと、とりあえず利益でも大きくしていくか、という気分になるのだと思う。だれしもリスペクトされたいし、達成感も感じたい。だけど、質的な影響力がなくただの大きな会社や事業はリスペクトされないだろう。単に金持ちであるだけで尊敬されるのは、もはや過去の話だ
  たまにサービスエリアのような「偏りなくいろいろな人がいる場所」に行くと「うちのお客さんぽいひとはどのくらいいるのかな」と思って見回してみるのだが、多くて1割くらいかなという感じである。(略)ぼくらはしっかり顔の見えるひとたちを相手にしている。お客さんとは気持ちが通じているし、仲間感覚を感じる。街で雰囲気をみただけで「あ!うちのお客さんぽい」とおもえることは強みだと思う。
  ぼくらは多数決で勝つものだけが残る世の中は好きじゃない。ランキングで売れるものを買うように誘導するのは違和感がある。コンビニのように各カテゴリーの1番売れるものしか置かないやり方も、それは確かに儲かるやり方なのかもしれない。でも「ひとをみんな同じだと考える、そうすると1番儲かる」という世の中は全然素敵じゃないと思うし、やってる人たちがハッピーかというときっとそうではないと思う。
  「できないのは自分のせいだ、力が至らないからだ」なら我慢できるけれど、理解できないひとがいたり、失敗するのが嫌だと考える上司がいるからできない、という場面はつらいものだ。
  社会はいろいろなことが複雑に関わっているものだし、美しい建築よりまず自分の資産を守ることが大事だと思うのも、ある意味「当たり前」のことだ。商売しているひとたちも、みんな真剣にやっている。問題は行き過ぎかどうかであり、商売そのものが悪いわけじゃない。
  みんなが自動的に偉くなっていく世界は、残念ながら終わってしまった。(略)出世だとか、やがては独立だとか、起業すればいつかは上場だとか、とにかく上へ上へという切迫感のようなものは、どこかで空虚感に包まれそうな響きがある。

第4章 ビジネスとおもしろさのマネジメント

家賃の値上げがえぐいので、自宅兼お店物件を探し始めました。(今は別々なので合体すると時間もお金も節約できると思ったのです)探すうちに、R不動産さんのことを知り、サイトで紹介している物件を見に行ったりもしました。現在移転はペンディング中ですが、R不動産さん自体に興味をもち本を読んでみた次第です。(結構たくさん出版されています)価値観に共感することが多く、そのせいか物件のサイトにはときめきが満ちていて妄想がふくらみます。東京R不動産と鎌倉R不動産は毎日みてしまう。YouTubeの「まったり不動産大学」もR不動産さんが物件を紹介しています。リハック好きなので「やっぱりね」という感じ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?