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カミのコラム#4 −presented by「紙の温度」−

こんにちは!
中庄の未来をつくる部 刑部渉です。
本日のカミのコラムはロクタペーパーについて書いていこうと思います。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ロクタペーパーは、ネパールが原産のロクタという植物を原料に用いて作られている手漉き紙のことです。風合いの良さはもちろん、とても丈夫で加工しやすいという特徴を持っている紙です。鮮やかなプリントを施されたものも多く、とても魅力的な手漉き紙。

そんな魅力的な紙、ロクタペーパーについて、お伝えしていこうと思います…。

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色とりどり染めとプリントが施されたロクタペーパー。選んでいるだけで楽しくなります。

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種類を確認できるような見本帳?!も存在しています。もはやこの見本帳自体が作品です!

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工房でロクタペーパーを乾かしている風景はとても素敵です。


アジアの紙たち。

ロクタペーパーの話の前に、アジアにはどんな紙があるのか?
を少しご紹介していこうと思います。

そもそもネパールの位置関係が、僕自身もはっきりわかっていなかったため一度世界地図で確認してみることにします。

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地図で確認するとネパールは、中国とインドの間に挟まれた国だということがわかります。国自体は決して裕福な方ではありません。自国だけではインフラを整えることにも限界があることから、インドやその他各国の支援を受けたりもしているんだとか。そんな中、ロクタを使った紙はもちろん、カーペットや衣類産業をおこない他国へ輸出しています。

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ネパールの街並み

似たような場所に位置しているお隣の国、ブータンでもロクタと同じジンチョウゲ科の植物であるダフネという植物を用いた紙漉きが行われています。ダフネには「レショー」と「サショー」と呼ばれるものが存在し、サショーは竹簾を用いて漉かれたもののことで、レショーは布を用いて漉かれたもののことを指します。

ブータン紙

↑ブータンの紙。
カミのコラム#1でも紹介していますので、ご興味ある方は下記よりご覧下さい。

ネパールとブータンは、同じヒマラヤ山脈がまたがっていることもあって、植物などの生殖域なんかも似ているのかもしれません。国としての文化や特徴なんかにはついては、専門外になりますのでここでは言及しないことにします。※ご興味ある方はぜひぜひ調べてみて下さい。

続いて、タイ、ラオス、ミャンマー、中国の雲南省ではカジノキと呼ばれるコウゾ属の植物を用いて紙漉きが行われています。
※コウゾの種類については、カミのコラム#2で詳しくお伝えしています。

ミャンマーでは、地面に穴を掘って雨水を溜めてそこで紙漉きを行ったりもしているだそう。奥深き紙漉きの世界です…。

まったくの余談ですが、
中国では竹(仙紙/画仙紙)を使った紙が多く流通しています。僕自身の勝手なイメージとして、中国から日本へ伝わってきたとされている紙ですが、中国の手漉き紙における歴史を感じるようなものをあまり見たことがありませんでした。(あくまでも私の個人的な認識です。)今回のお話をお伺いしている中で、それは文化大革命が起きた時に、中国の古い文化財や技術なんかが無くなってしまったことも関係しているのかもしれないなということがなんとなくわかりました。興味のある方は文化大革命についても調べてみて下さい。世の中知らない事だらけで、自分自身の学の少なさを恥じるばかりです…。


では、話をもとに戻しましょう!
続いてインドはどうなのか?

インドも他の国と似たような感じがしますが、インドではカジノキは生息しておらず(しているのかもですが、カジノキを使った紙漉きは行っていません。)紙についてはコットンペーパーを使った機械抄きが主流なんだそう。インドは繊維の産業が盛んで、元々紙の産業はありませんでした。繊維の街で使われた後の綿くずと古紙を使って紙を生産するようになったんだとか。綿くずからできた紙は、紙質が柔らかいため、型押し(エンボス)のような模様の紙が多く存在します。

PW(アジアの紙③)

インドの伝統柄であるバラの模様のエンボスがかけられた紙です。

同じようなアジアの国でも、まったく異なる背景や歴史の中で、各地域における紙の生産方法、特徴が多く存在していることがわかりました。確かな因果関係はわかっていませんが、仏教国経典の残っている国においては、紙の文化がしっかりと残っているようにも感じます。

では、改めて様々なロクタペーパーを見ていきましょう。


多彩なロクタペーパー。

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ロクタは、ネパールの標高1,800m以上の山間部に生息するジンチョウゲ科の植物です。ジンチョウゲ科ということもあって、日本で言うところの雁皮紙によく似た照りがあります。何より繊維がとても太くて長いので、ものすごく丈夫でしなやかなのが特徴です。ですが、ジンチョウゲ科なので雁皮ほどではないにせよ、成長がゆっくりで中々育たないんだそう。かつてはもう少し標高の低いところから採取できたものがなくなってしまい、採取場所の標高が上へ上へと移動しているらしい。

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原料にロクタを100%使用して漉いた極薄のロクタペーパー。

伝統的なロクタの製法は溜め漉きで行うが、日本人が技術指導に入っていた経緯もあって、流し漉きなんかも行われていたりするんだそう。

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では、ここからはあらゆるロクタペーパーを紹介していこうと思います。


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↑可愛い魚柄がプリントされたもの。

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↑月の表面のような、凹凸を施したもの。

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↑染色したのちに揉み加工されたもの。

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↑染色したのちにもみ加工をし、乾かしてから最後にキャレンダーをかけて平らにした紙。

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↑ヨーロッパの石畳を思わせるような型押しされたもの。

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↑作家さんに墨で描いていただいたもの。

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↑矢車草を手が透けるほど薄いロクタペーパーで挟み込んだもの。

プリントされたものだけではなくて、あらゆる加工を施したロクタペーパーがあります。僕自身も自宅で藍染を行ったときにロクタペーパーを使ったのですが、本当に丈夫で全く破れる心配がありませんでした。

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真ん中の絞り染めが、ロクタペーパーを使って染めたものにならます。


ロクタペーパーを使った素敵な作品たち。


ドイツのペーパーワールドで見てきたロクタペーパーを使った様々な作品。

PW(デザインアジア④)

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ロクタペーパーを使った、小箱、ノート、名刺入れ、レター、ランプ、装飾品などあらゆるものがありました。世界各国のあらゆる方々がロクタペーパーに魅了され、作品として仕立てている事がわかります。


紙の温度さんで見せていただいた極薄の純ロクタを使ったカレンダー。

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弊社も本文用紙を提供させていただいた浪江由唯さん著の「世界の紙を巡る旅」初版や特装版の表装にもロクタペーパーが使われています。

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浪江由唯さん著「世界の紙を巡る旅」特装版


ここでは紹介しきれないほど、もっともっとあらゆるロクタペーパーや作品が存在しています。僕が初めて紙の温度さんを訪れ、ロクタペーパーを見せられた時に、今までの紙というものの概念を覆すほど衝撃的だったことを覚えています。その丈夫さから、ありとあらゆる加工を施すことができ、且つ紙そのものが持つ風合いや手触り感が存分に味わえる紙「ロクタペーパー」。紙の新たな可能性を開拓するヒントがロクタペーパーにはあるかもしれません。

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ではでは、カミのコラム#4はここまでとなります。
引き続き紙についてのアレコレをお伝えしていきますので、次回もぜひお楽しみ下さい!!


ご紹介した紙は、全て紙の温度さんでご購入可能です。是非現物を見て、触って、その質感を確かめていただけたら嬉しいです。
※一部作品につきましては、扱っておりませんのでご了承下さい。

※オンラインサイトURLはこちら↓
https://www.kaminoondo.co.jp


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