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ゆく年来る年。

あけましておめでとうございます。2024年もよろしくお願いいたします。
このブログ(ご挨拶)は1月2日に急ぎで執筆したため、稚拙な箇所も多々見られるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

さて、ゆく年2023年ですが、まずはお世話になった方々に感謝申し上げます。みなさんの出会いとサポートがなければ、素晴らしい2023年を過ごすことはできませんでした。

私にとって、2023年は「苦難を味わい、人生の中で一番の成長を遂げた年」でした。

具体的なイベントをあげると、まず新たな研究室で本格的に研究をスタートさせた年でした。*1 きっかけは学部3年の研究発表会およびその準備段階で、教員の皆様から研究の外部発表を強く勧められたことでした。2023年は2回、学術論文(フルペーパー)を執筆・投稿しました。結果として国際会議はどちらも不採択でした。2023年を振り返ると研究をはじめ、様々なトライの「結果」は不幸にも報われない一年でした。しかし、結果を生み出そうと惜しみなく投下した時間、熱量は、結果以上の変化を創り上げてくれました。そして、それらは私自身の心を突き動かし、Exponentialな成長へと導いてくれました。そんな心の変化と成長をすこし語らせていただき、新年のご挨拶とさせていただきたいと思います。

論文の執筆を始めたのは2023年1月でした。この頃、私は2月のバレンタインデーが締め切りの暗号に関するトップ国際コンファレンスであるCRYPTO'23に投稿することを目標としていました。*3 なぜCRYPTOを選定したかというと、教員の方におすすめいただいたからです。今を思えば論文すら書いたこともない学部生にこのようなトップ国際コンファレンスへの論文執筆の機会をいただいたことは光栄なことです。*2

学部生がトップ国際コンファにチャレンジすることに関して、意見や賛否は様々あると思います。しかし、私はトップコンファに投稿する機会をいただき、それに向けていただいたご指導・ご鞭撻は、私の劇的(Exponential)な成長に直結しました。なぜなら、研究の質を研ぎ澄ますことはもちろんですが、それ以上に議論する上での視座、私自身の問題意識(issue)をどのように形に落とし込み(non-nativeな英語で)それらを主張(claim)・共有(share)をするか、学術研究にとどまらないトレーニングが自らの経験を通じてできたからです。トップの場の議論において、いっさいの妥協は許されません。学部生だからといってハンデはいっさいなしで、世界中の研究者と同じ土俵で挑む(戦う)ことになります。
しかし、そのような挑戦と数々の苦労・困難を経て、私は人類の英知の結晶が今も磨かれ、学術が日々進化しているその歩みを肌で感じられました。

この経験は学問への関わり方、モチベーションを大きく変容させてくれました。振り返れば、私は高校時代、勉強が嫌いでした。なんとか大学には合格しましたが、当時は学問とは馴染めないだろうと自答していました。しかし、私は学問への新たな関わり方をこの1年かけて確かなものにしてきました。それは「私が先人になりたい」というモチベーションを築き上げたことです。正直、「先人の教え」を初等教育・中等教育の勉強・大学の受験というフレームを通じて教授しましたが、それらを学ぶことの「楽しさ」や「目的」を成績や大学受験以外に見いだすことは残念ながらできませんでした。つまり当時の私にとって勉強は苦痛の部類に入ります。

しかし、この1年は自らのポジションに大きな変化がありました。それは「学術研究を通じ、人類の知を積み上げ、誰かの先人になりたい・なれるかもしれない」というモチベーションと期待感を得たことです。知を積み上げるために、先人たちの教えを説き、自らの信念をベースにクリティカルに思考し、新たな知を創造する学問の営みは、私の「ワクワク」を爆発させました。しかし、正直、学術に貢献することは決して容易ではありません。ですが「ワクワク」をdriverに自らを突き動かした結果、これまで見えていなかった学問の本質的かつ重要な側面と出会えました。そして、学術機関の一つである大学に身を置くひとりの人間として、学問にコミットする・したいという新たな姿に出会えたことは、幸せなことであり、私の人生観を大きく変容させてくれました。

2023年8月には二度目のトップ国際コンファレンスにチャレンジしました。
投稿先はNDSS'24というコンピュータセキュリティを扱うトップ国際コンファレンスです。NDSSではCRYPTOの査読結果と反省を踏まえ、全文を書き直しました。大学では授業もあるため、かなりタイトなスケジュールで論文執筆をこなさなければなりませんでしたが、教員の方々から的確なご指導をいただいたお陰で期日までに論文のクオリティを底上げすることができました*5
しかし、不運にも査読結果はWeak rejectであと一歩でボーダーラインというところでした。*4
授業の合間や放課後などバッファを惜しみなく投下した分、かなり落ち込みました。二ヶ月ほど研究のモチベーションがわかず、直接的な要因かどうかはいまだ不明ですが、10月ごろにメンタル的な病気にもかかりました*6。
しかし、学術研究に地に足がついた実感はCRYPTO以上に得ることができました。不採択だったものの、査読者から取り組む問題意識や研究手法については高く評価をいただき、同時に今後の課題(研究内容だけではなく、視座や心構え等のマインド部分)も明らかになりました。*7
そして、それらは自らの成長の余白を作り出してくれます。今はその成長をいつか実感できるよう日々精進しています。*8

そう感じられたのも、私が1年時からお世話になっているラボの教えによるものです。*9 研究活動に今は身を置いていないものの、ラボのメンバーやボスとは今も仲良くさせていただいております。
ボスはよく「変化」に着目せよ、と度々、私に指南していただきました。私はそのメッセージを「成長」へフィットさせました。結果として劇的な成長を遂げられた、成長の原動力になったと確信しています。
それは今の肩書きや得た知識、技能に満足するのではなく、昨日やある時点と比べて、自分がどう成長したのか、それを自らの評価軸に定められたことです。成長「度」、つまりδに意識が向いたことで、成長の余白を探り、成長度を最大化するために、どのようなトライが必要なのか、それを意識できた経験が今に直結しています。先述した「ワクワク」の源は、学問を探求する楽しさだけに起因するものではありません。成長を感じる体験そのものが、「ワクワク」を生み出し、そのワクワクが新たな余白も生み出してくれるフィードバック効果が起きているとも言えます。これが劇的(Exponential)な成長を遂げることができた根源であると私は確信しています。

2024年3月、私は学部を卒業予定です。そして4月からは慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 (the Graduate School of Media and Gonvernance)Cyber Informatics (CI) programに進学予定です。昔を振り返ると、入学当初は大学院へ進学することなんて思ってもいませんでした。これは学部時代の高々4年間のあいだに起こった心の変化の結果です。

また、この4年という短い期間を振り返ると、私だけではなく世界情勢や社会の動向も大きく変化しました。さらにそれらは、4年前でに予測はできなかった変化でしょう。そんな中、安宅さん(安宅研ボス)がおっしゃっていた、「未来は目指すものであり創るもの」というメッセージを引用したいと思います。昨今、AIをはじめ、未来を「予測」することにフォーカスが向けられ、その行為自体に価値があるとされている風潮があります。しかし、未来は予測から生まれるものではありません。このメッセージの核心は、自分自身がどのように生きたいか、その心が未来を決めると私は解釈しています。そんな未来は、高々、論理回路の結晶であるコンピュータの情報処理の一部にすぎないAIには予測できない、そして創り出せない世界です。*11
大学院進学は、私自身が4年間の学びを経てたどり着いた目指すべき未来像であり、4年前の私では到底予測は不可能であったこと思います。世間ではそれをより広いスケールでVUCA(不連続的な変化が立て続けに起こるような未来の予測がしづらい不透明な状態を指す)時代と表現しています。この言葉は、時折ネガティブな意味で用いれているような印象を受けます。ですが、その状態は上のメッセージをもとに再解釈すると、より人間が人間らしく生きれる状態でもあるといえるでしょう。すなわち、未来を創る土台はAIではなく人間が握っています。JobがたとえAIに代替されようが、人間がすべきことは別の軸、空間で広がっています。そんな時代に生を授かったことを武器に、生きていきたいと思います。

ずいぶんと話が脱線してしまったので軌道に戻したいと思います。私は政策・メディア研究科に進学しますが、進学先はかなり悩みました*12 。実際のところは3年後期から外部への進学に向けて、勉強や研究計画を準備していました。しかし、進学先に悩み老ける中、この2年間、私にたくさんのチャンスを設けていただき、劇的な成長を遂げたられたのは、今の環境だからこそです。その上、私のモチベーションは成長「度」であることにこの1年で再認識しました。そして、成長度を最大化できる環境は今の場所しかないと確信しました。その環境にあと2年、自分の研究に対する熱量と愛情をぶつけてみたいとおもいます。

2023年は決して研究だけではありません。私にとってわずかな部分です。2023年はほかにも写真表現に没頭*10したことや、IETF 116WIDE Projectへの参加、Open Campusのスタッフ、Sony CSLのRA(ちょうど1年経ちました)、友達のすすめで新たなサークルに参加したり、大切な仲間と過ごした時間など、研究以外にも充実した1年でした。このブログには書ききれませんでしたが、何かの都合でお伝えてきたらいいですね(自己満になりそうなので執筆は控えました)。

安宅研ディズニー部会?T-shirt
2年ぶりのFUJIROCK 23。5時間運転したので疲れています。


国際会議IETF 16のNOC (Network Operation Centre) memberとして。画像はCiscoのLayer3 Switch.

最後になりますが、2024年は2023年を超える成長を感じると共に、皆さんに感謝をお伝えできる1年にしたいと思います。感謝の形は様々あると思いますが、まずは論文の採択です。Master courseへの進学もあり、研究の奥底へとさらに足を踏み入れる1年になるかと思います。もちろん論文を書くことだけがMaster courseのゴールではなく目的でもありません。ですが論文の採択は学術に自らの爪痕を残すと共に、それまでの歩みを振り返ることのできる人生のチェックポイント(節目)でもあります。その機会に皆さんに感謝を改めてお伝えできたらと思います。

真夜中に勢いで約6000字も気づいたら書いてしまいましたが、最後まで目を通していただきありがとうございました。

2024年も皆様よろしくお願いいたします。

*1 SFC-RG, Delight. 分散システムや非中央集権型のシステムを研究するグループです。
*2 英語すら怪しいですが。
*3 国際コンファレンスにも論文の通りやすさなどパラメタのがあります。その通りやすさや、発表(出版)された論文のインパクト(被引用数など、h-index)をもとに、国際コンファレンスにはランクがつくことがあります。トップコンファはacceptance rateが低く、さらに一般的に発表される論文のインパクトが高い傾向にあります。
*4 ボーダーラインになると、シェパードという指導役がつき、採択に向けて論文を修正、再投稿する機会を得ることができます。一般的にはMajor revisionやMinor revisionという名称がこれに当たります。
*5 ただ、時間に追われ、ギリギリになってしまったことは確かです。
*6 新たな研究テーマを見つけたので、それに時間を投下していました。自律神経失調症になりました。今も完治には至っていないです。
*7 Cryptoは最終試験と最終レポートと重なって今思えばもっとタイトだったかもしれないです。ですが、このときは研究の仕上げ方に戸惑いが生じていたと共に、タイムリミットが迫ってくる焦りと恐怖、不安に追われていたのでしょう。
*8 年末年始は1月中旬にデッドラインの国際コンファレンスにむけて追加実験・論文執筆をしています。このブログはその合間に休憩程度に書きましたので、クオリティはご容赦ください。
*9 安宅研究会
*10 FUJIFILM X-T5 + XF 35mm f/1.4とSony α7M4 + FE 50mm f/1.2 G masterを1年で購入。貯金の底が見えそうです。
*11 Deep Neural NetworkをはじめとしたAIは、人間が認知不可能な膨大なパターンをマシンが発見(学習)し、それをもとに予測を行います。人間の遺伝子の情報量は高々1GB(10^9 byte, 1 byte = 8 bit)と言われています。ですが、それらをベースとした人の心のパターンは1GBの情報量で表現できるとも考えられません。なぜなら人間はこの1GBの情報をもとに、無作為のごとくバラエティをもつ生き物へと成長します。そこに科学的なルールや秩序を見いだすことは、今の知識や計算パワーを土台にしても不可能です。それらを踏まえた私の主張は、AIが本当の未来を予測することは不可能です。
*12 かれこれ悩んでいたら内部推薦入試をとうに逃していたため、一般入試でした。慶應義塾大学から給付型の奨学金をいただけることになりました。

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