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本源的通貨の金の今後の行方

日経新聞にこんな記事が出ました。

24年の金相場は 「2300ドルも」「欧米の買い拡大」

2023年の金相場は記録的な上昇となった。ニューヨーク金先物は12月4日に一時1トロイオンス2152.3ドルと史上初めて2100ドルを突破。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止めや利下げへの転換を前提に、金利のつかない実物資産を裏付けとする金先物に資金が向かった。世界の中央銀行の需要や地政学リスクの高まりを背景とした個人投資家などからの引き合いも注目された。

(出典:日経新聞2023年12月19日

「世界の中央銀行の需要や地政学リスクの高まりを背景に」とありますが、その通りであり、今後も金には注目が集まるでしょう。

【今後、金価格が上がるであろうと思う理由】

BRICSには2024年1月1日から新たに6カ国(アルゼンチンは不透明)が加わり、拡大BRICSが始まります。そして、2024年の議長国はロシアであり、その次はブラジルです。

この2カ国は最もBRICS共通通貨の推進国です。また、ロシアと中国は貿易をドルで行うことを完全に停止しており、自国通貨で行っていると発表しています。ロシアはインドとの貿易も盛んで特にインドはロシアからの原油の輸入を増やしており、その決済通貨はルピーです。

特にロシア、インド間での貿易において課題となっていると報じられているのが、ロシアがルピーを多額に受け取っている点です。ロシアは多額のルピーを受け取っても使い道がなく、かといって外為市場でそれだけ多くのルピーの需要がないため、売ることもできません。

そのため、共通通貨の必要性を非常に感じているのです。

ブラジルはブラジル人のエコノミストで、元新開発銀行の副総裁、パウロ・ノゲイラ・バチスタ・ジュニア氏が積極的に共通通貨のことを発信しています。

これらのBRICSや新加盟国はドル離れを進めており、米国債を売却もしております。当然、貿易でドルを使用しない方向に動いておりますので、外貨準備としてドルの保有量を減らし、金の購入に向かっています。

これが冒頭の日経新聞の言う「中央銀行の需要」の背景です。

これらの拡大BRICSの11カ国が金を売り越す事はまず考えられません。金価格は長期の上昇トレンドに入ったように見えます。

価格を下げる要素として考えられるのは、金価格を上げたくないFRBの覆面口先介入によるFRBの影響力を受ける銀行とファンドの金ETFの売りです。しかし、金ETFの発行残高は3281トンと多くはありません。最大に売ったとしても年1500トンが限界です。

それ以上売ることは、金融危機になった時に金の売却による益出しの時しか考えられません。価格が上がってきた金ETFには、下がった国債、あるいは株よりも大きな含み益があるからです。

大量に売れば価格は下落します。そのため、利益の確定のための売却は慎重にならざるを得ません。

また、金地金の所有者は中央銀行を筆頭にゴールドバーの長期保有が多く、買った金を放出することは少ないのも特徴です。

金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、22年の中銀による純購入量(購入から売却を除いた値)は約1082トンと、データのある1950年以降で最高水準になっています。

(出典:日経新聞2023年12月3日

仮に金ETFの大量の売りがあったとしても、非西欧の中央銀行のグループの買いが2倍になっているので、今後の金価格の大きな下げはないと思われます。

今後、金融危機があった時、ファンドが金ETFを益出しのために売りつくしてしまえば、一時は下がるでしょうが、その後は下がる要素がなくなるので、急騰する可能性があります。

2013年から2015年の金価格と金ETFの関係を見ておきます。高騰した金価格(ドルベース)を30%下げた2013年、2014年、2015年の金ETFの売り越しは、936トン、134トン、112トンであり3年間の合計で1182トンでした。2015年にファンドは112トンの金ETFを売却した次年度の2016年に慌てたかのように582トン(普段の年度の約3倍:5.8兆円)の金ETFを買い越しています。1182トン売って、ファンドの金の運用ポートフォリオの下限に達したのでしょう。こういった背景から、ファンドからの金ETFは多く見積もっても1500トンという推測です。

【金価格の行方】

市場の実勢では金の需要は増えて金価格は上がると予想します。

2000年代の大きな買い手(500トンから1000トン/年)として登場したのが中国、インド、産油国、グローバルサウスなどG7に反感を持つ国々です。

G7の中央銀行の金の売却制限を決めた「ワシントン合意(1999年)の後の金価格は、反西側の国の中央銀行のドル外貨準備の売り=金買いによって200ドル台から2000ドルへと23年で10倍に上がってきました。長期では平均10.5%の上昇です。

米国FRBは本音では金は本源的通貨、ドルは信用通貨で金利を調節することでいくらでも増発することが可能であることを知っています。

そのドルが米国(経常赤字国)が発行する矛盾した基軸通貨として使われていて、米国はいくら赤字でもドルを増発して渡せばいいという基軸通貨の特権に甘んじています。

このため、対外負債は米国GDP(約25兆ドル)を超える、30兆ドルと返済が無理な金額に増えてきました。これからも毎年1兆ドルから2兆ドル増えます。米国の財政と貿易は赤字だからです。

財政の赤字は国債の新規発行の増加となり、貿易の赤字は対外負債の増加になります。米国は政府、企業、世帯の体質は借金経済、株価が高いだけです。

金価格の市場の売買の実勢からの上昇は、下がるドル外貨準備の売りと金の買いを生んで、ドル基軸通貨体制の終焉の兆しとなるでしょう。

ただ、上昇傾向の金といえども、短期(6カ月)では下がるときもあります。年間変動幅のボラティリティは13%だからです。価格変化が13%の幅に収まる確率が推計の統計学(標準偏差の幅)では95%の確率であるということです。

2023年の非西欧の中央銀行の金買いは1000トン以上です。これは金価格にとって、過去20年の倍増なので、インパクトのある構造変化です。金ETFを使ってFRBが金価格を下げる介入の効果は小さくなっています。約1年、価格を横ばいからわずかな下落にする程度ではないでしょうか。

事実をみると、2021年、22年、23年の金ETFの売り越し(合計547トン)の中で金価格は上がっています。

ウクライナ戦争も、イスラエルーハマス戦争も、世界の米国離れを促進しているように見えます。日本がかつてないほどに対米従属なのも、もはや米国の言うことを聞く国が少なく、日本ぐらいになってきているということでしょう。

ウクライナ戦争の対米従属に欧州ではかなり反感が出ています。しかし、日本はいまだ「日本はウクライナと共にあります」と内閣府が堂々とホームページに掲載し、さらに支援を拡大しています。日本国民には直接的な影響を感じにくいという側面はあるでしょうが、対米従属でウクライナ支援、イスラエル支援を全面に打ち出して、自国の意思を全く出していない日本政府。

世界的な動きは米国一極から、多極化です。そして、目に見える戦争ということの背景で起きている通貨戦争に、米欧は明らかに負け戦の様相です。

その動きの中、果たして日本はこれでいいのか?もちろん、良いわけはない。

せめて、自己防衛の手段の一つとして、金の保有は考えておくべきことの一つと思う。

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