practice 7 龍珠
『ドラゴンボール』『ドラゴンボールZ』シリーズは言わずと知れた名作で、今も続いているご長寿漫画だ。多数の派生作品が存在するが、現在は作者監修という形で、全編鳥山明先生が書いているわけではないらしい。
同じジャンプに以前連載していた『銀魂』の中で、「女はベジータ好き、男はピッコロ好き」というタイトルがあった。なぞらえるなら「お母さんは悟飯好き」だ。
推しキャラとして世の母親の胸を射抜くのは悟飯だと思う。
主人公の|孫悟空《そんごくう》は、途中、息子の悟飯に主人公の座を譲る。悟飯(4歳)は、悟空不在の間、ピッコロに連れ去られて無人島で無理やり修行をさせられる。恨んでもよさそうなものなのに、修行後、自分を強くしてくれたピッコロに感謝し、師として敬愛する。
悟空はまさに大器だが少し自己中で甘い。悟飯は幼いころから周囲に気配りができる細やかさをもつ(思春期は悟空に似てきていた)。家では教育ママのチチに英才教育を施され、ナメック星人ピッコロの苛烈な修行はまさに獅子千尋だ。それに対し一途に懸命に応えようとする悟飯のいじらしさに打たれる。
大魔王だったピッコロは神様と同化して、話が進むほどに性格が和らぎ、冷静な賢者になるが、神と同化する前の暗く攻撃的な彼を変えたのは悟飯の存在だった。「ピッコロさんは本当は優しい人だよ」と慕う悟飯の健気さに次第に心を開いたピッコロは、セル戦で死を覚悟した時「悟飯、オレとまともにしゃべってくれたのはお前だけだった」と泣く。それに泣ける。
実は私は「師弟愛」に弱い。悟飯が好きというより、ピッコロとの師弟愛にぐっとくる。強さを追求するこの漫画は全編を通じ「父子関係」を描く。俺の屍を越えてゆけ!というやつだ。師弟も「父子」の内だ。
孫悟空・クリリンと無天老子の師弟関係がなければ究極奥義「かめはめ波」が無いし、その必殺技が無ければセル討伐時の感動が生まれない。ピッコロと悟飯の師弟愛がなければ悟飯が地球と仲間の数々の窮地を救うこともない。実の親子関係に比肩する、物語の要だ。『ドラゴンボール』の元ネタでもある『西遊記』はまさしく、斉天大聖孫悟空と三蔵法師との師弟愛が軸だ。
中国武侠系のドラマや文学では親子の忠孝と同じくらい師弟の絆や情を重視する。『ドラゴンボール』は「中国武侠」の流れをしっかりと受け継いでいるように思う。
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