ドラマで勉強(虎に翼第39話)

「ドラマで勉強」にはなっていませんが、感想を。

今日の回は何度も見直しました(毎回そうだけど)

穂高先生が弁護士事務所にやってきて、寅子の状態を伝えてしまう。
「寅子を休ませてくれ」というお願いだった。

上司の雲野先生も先輩の岩居弁護士も「婦人が入社した時から、こういうなる日が来ることを予想していたよ」と言われる。

この状況ならば誰もが「まず休みなさい」と言ってしまうだろうな。
だって実際に倒れているんだから。

時代や偏見だけでなく「仕事量を調整して、仕事を続けられるかやってみよう」という案は出せなかったでしょう。

何も知らずに出社した寅子が3人の大人の男性から「休みなさい」と畳み掛けられている様。
セリフが違えば何とかハラスメント、いじめ状態のようにも思えた。

悪人も意地悪な人もいない。
性差の偏見もない。
心から寅子の体を心配している良い人達だ。

穂高先生も「弁護士の資格があるんだから復帰できるよ」と声をかけてくれた。
誰も「弁護士を辞めろ」とは言っていない。
ただ「今は体を大事にして下さい」と心配りをしているのだが、寅子には伝わらない。

最後の砦の仕事場での出来事。
虚ろな表情で「そうですか。ありがとうございます」と答える寅子。
もう頭は真っ白というか回っていない状態。

よねさんは唇を振るわせながら無言で立ち去っていった。

後日、よねさんを訪ねてカフェー「灯台」に来た寅子。
置いてある舶来酒は日本酒となり、賑やかな音楽は軍歌になり。
喫茶とよねさんのよろず法律相談で細々と生活をしていた。

よねさん、自分の出来ることをやっていたんだ!
こんな暗い場所で、誰にも伝えることもなく。
寅子の知らない世界で、例えて言うなら日陰の世界で、よねさんは黙々と自分の仕事をしていた。

よねさんは「おまえは男に守ってもらうのが似合っている。もうこっちの世界に戻ってくるな」と寅子を突き放した。

よねさんは「私が寅子を守る」と決めていたのだろう。
だから何かにつけて寅子をサポートし、寄り添いながら言葉をかけてきたのだ。

結婚も妊娠も、仕事と育児の両立も。
よねさんに相談をしていたら、大応援はせずとも反対もしなかったはずだ。

両立の道を探らず弁護士を辞めることもショックだっただろうが、そもそも一連の出来事を話してくれなかった。
自分は信用されていなかった。
「私」ではなく男性達のほうが詳細を知っていた。
それが悔しくて悲しかったのだと思う。

よねさんは差し出しても受け取って貰えなかった過去がある。
お姉さんが騙し取られたお金を取り戻す為に弁護士を使った。

その時「弁護士は武器になる」ことを知ったのだが、それが仇となってお姉さんはお金を受け取ることもなく消えた。
自分の「女」を売って作ったお金だけが手元に残り、「お姉さんのお金」で学校に通い、弁護士を目指している。

寅子は妊娠という「女性が持つ体の仕組み」で自分の意志が貫けない。
よねさんは身売りという「女性の体を持っている」ことで傷ついたことがある。
「体が女性というだけで」だ。
当たり前のことだけど、そうなのだ。

よねさんは、これまでも、これからも。
「お姉さんのお金を使って勉強している私」を責めるだろう。
だからこそ弁護士を諦める道などない。

よねさんには逃げ道がない。
親との縁を切り、肉親もいないのは優三さんと同じだ。
逃げ道がない人ほど優しいのだろうか?
優しさを与え、繋がりを得ようをしているのだろうな。
やっぱり人間は本当の孤独で生きていくのはシンドイから。

「女が金に困ったら道を外れるしかない」
よねさんは自ら経験済みなのだ。
それでも、お姉さんが喜んでくれれば良かったのだが。
「道を外れた先に明るい未来などない」がよねさんの出した答え。

入学当初のよねさんは誰にも手を差し伸べなかった。

寅子に山陰校を教え、それを沢山の人達が喜んでくれた。
自分が差し出したものを受け取る人達がいた。
嬉しかっただろうな。

よねさんが「この先、必ず婦人弁護士は生まれる」と言っていた。
「私がその責任を引き受け、バトンを預かる。だから婦人弁護士の道は断たれない。安心して休め」なんだろうな。

よねさんは穂高先生の「復帰はいつでも出来る」という言葉に「あ、今、それを言ったら寅子は折れる」と察して表情を変えていた。
無言で立ち去ったのは寅子に対する諸々の想いも強いけど、男性3人に対する「人の気持ちがわからないバカども」への怒りもあったのだと思えた。

しかし全員が寅子を思っているのが当の本人に伝わらないもどかしさ。

寅子は母に「歩いても歩いても地獄しかなくて」と弁護士を辞めたことを告げた。
本当に地獄だったのかな?
婦人弁護士への世間の目は厳しいものだったけど、策略婚も出来たし、弁護士デビューもした。

欲しいものが多く、「手に入れること」に頑張った人ほど、持て余してしまうのかもしれない。

これから先、戦争でどんどんと持っていたものが無くなる。
誰もが「手に入れること」は出来なくなる。
「手に残ったもの」こそ大切にしよう。
そんな日が来るのではないだろうか。

そして「婦人の味方になるのだ」という思い込みから裁判で大きな失敗をした。
弁護士を生業としていくのであれば、トラウマ級の失態。
でも、そのことについて大きな反省も傷もなさそう。

このドラマの季節の移り変わりは早い。
寅子にとって大切なことを描き、日常は毎日の繰り返しなので早送り。
あっという間に優未ちゃんが生まれていた。
優未ちゃんについては早送りでよい事柄なのだろう。

今の寅子に何と言えばいいのか。
使命感と責任感が強い人は倒れないと分からないし、倒れて点滴を受けながらも「大丈夫です」と仕事に復帰するだろう。

そのことで周りがどれだけ気を使い、陰ながらサポートしているか。
私も若い頃、似たようなことがあった。
全然大丈夫じゃないのに「大丈夫です」と言い張った時期が。

そしてクオリティの低い成果を「私頑張ってます」と誇らしげに出していくのだ。
仕事人たるものクオリティが大切なのに、すっかり忘れてしまっている。
仲間の想いを背負い「弁護士」の肩書を持ち続ければ良いものでもない。
「良い仕事をする」弁護士にならないと、「女の弁護士先生は手ぬるいのね」とまた言われかねない。

そうだ。
寅子には「人様に迷惑をかけているかもしれない」という視点が抜けているのだ。
大丈夫なフリをしても周りは気が付くもの。

何も言わずにいてくれたのは幸いなことで、周り人達の存在や気持ちを舐めてはいけない。

ちなみに、今の寅子の状況を表すと以下の2枚セットで出ることが多いです。

10 of Wands(抑圧)

見ての通りオレンジ(暖色)なのでやる気はある。
しかし2本の思い棒で押しつぶされている。
この2本の棒は人間界のものではないので、自分では何とか出来ない。
やる気と障害物の間で悶絶しているが、障害物の勝ちなので、今は一旦引いたほうが良い。

10 of Swords(破滅)

沢山の人の剣(言葉)によって。
また自分の思考によって。
中央のハート(心)はボロボロになっている。
いわゆる「心が折れた」状態。

頑張って頑張って頑張り抜いた人によく出てくるセット。
このセットが出たら「とにかく休もう」と伝える。
敗北ではないんです。
むしろ戦い切ったので勝者です。
どのスポーツにも心身を癒すオフタイムがあるように、休みは必要です。

人生は勝ち負けではないし、仮に勝ち負けがあったとしても。
どの時点で判定を下すかによって勝敗は異なります。


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