見出し画像

人前で話すことに、意味はあるの?

「リーダーを育てる」


私が授業をする上で
ここ何年も目標にしていることです。


社長になるとか大臣になるとか、
壮大なリーダーじゃなくても良い。


ママになったら
ママ友グループをまとめられる。


パーティーをするなら
皆の前で司会ができる。


子どもを導く、お父さんやお母さん。


誰だってリーダーです。


リーダーをするには、
人前で自分の意見が
はっきり言えないといけない。


その力を、伸ばしたい。


(我が家で栽培しているタマネギの芽が出てきました!)


何度かお話しましたが、
私は毎年授業中に、全員に
スピーチまたは研究発表を
やらせていました。


他の先生方には、ご賛同頂けている反面

「よくやるわね、自分で自分の
 首を締めるだけじゃない」なんて

おっしゃる方もいらっしゃいました。


そう、大変なんですよ。
留学生は嫌なことは全力で
拒否する子も多いので。


学生たちに責任を持たせるために、
スピーチの予定日と
順番を自分たちで選ばせて
予定表に自ら記名させ、
教室に掲示します。


やらない子は落第、と
しつこく言います。


自分で決めた
予定の日にやらなかったら、
マイナス5点にすることも、強く言います。


反論があるなら
事前に言うように何度も伝えます。


スピーチ予定者の名前は
直前の授業でも読み上げて
忘れないようにクギを刺します。


それでも、自分のスピーチ当日になって

「先生、忘れました」

これは、まだ良い。


死んだように寝たふり。
揺すっても、大声を出しても
寝たふり。たぬきですか。

これも、まだ良いです。


「やりたくないです」と、ごねる。


「何でやらなきゃいけないの!」と逆切れ。


何度も言いましたよね?

先週も「来週スピーチですよ」と
言いましたよね?

その時「分かりました」と
言っていましたよね?

と言っても、

「こんなことさせるの、
 みおいち先生だけです!」と

喧嘩を売って来ます。


これも普通です。


そのうち真面目グループが

「自分のためなんだから、
 先生に文句言わないでやれよ!」

と怒り出す。


一昨年度だったか、
やりたくない学生が
集まってしまったクラスで
真面目な学生が


「みんな何でやらないんだ!!
 全員、落第決定だ~!!
 先生、落第にしてください!!」


と猛烈にキレて立ち上がり、

ずかずかと教室に貼ってあった
スピーチ予定表の方へ行って
バリッ!と思い切りはがし、 

その場でびりびりに破いた
ことがありました。


真面目な学生が、傍から見ると
問題行動を起こしているように 
見られる一件でした。


こちらはもう慣れているので

あ~、また始まったか。

と思います。



私がどんなに説得しても
やらない時は担任の先生が見学に来ます。


それでもやらないツワモノもいます。


この場合、担任の先生+留学生統括の
それは大変お偉い先生まで見学に来ます。


1クラスに、私と、
担任と、留学生統括3名の教師が
怖~い顔をして勢ぞろい~♪


ここまで来ると、さすがに
やらない学生は1クラスに
1人くらいまで絞られます。


この1人はもちろん、
担任の許可を得て落第にします。


しつこいようですが、
この学校は倍率5倍の難関校です。


留学生の入学試験は
頭脳だけで入れません。


日本語学校時代の出席率や
アルバイトの課税証明書まで
入念に確認されて
素行も調べられた上で入学してきます。


嫌なことははっきり
態度で示す外国人の意思表示の強さ、
ある意味見習うべきですがね。


とにかく、そんな訳で
毎年スピーチや研究発表をさせるのは
大変に手間がかかります。


私のドタバタをご覧になって
他の先生は誰もやりません。


自分の授業見学に担任はおろか
留学生統括まで来るなんて、
普通は胃が痛むほど嫌ですからね。


それでも、人前で話す機会は
絶対に必要だ
と信じてやってきました。


2年間ご縁があって私が教えた学生は
スピーチ3回、発表1回の経験を得て
それは堂々と、鳥肌が出るくらいに
熱く語れるようになりました。


それでも学生からは
何より拒否される、スピーチ&発表。


今年。


コロナ禍でいまだに
オンライン授業または
半分オンラインと半分対面の
ハイブリッド授業です。


スピーチや発表は
飛沫が飛ぶので出来ません。
学生たちは、ほっとしている様子。


そんな中、昨日、2年生のクラスで
一人の学生が言いました。


「先生、スピーチをやりたいです。
 緊張します。本当は嫌です。
 でも、絶対に大切です」


そうするとそれに賛同したもう一人が

「そうです。人の前で話すのは
 就職してからも大切です。
 慣れないといけません」

と、訴えてきました。


私の想いは、方向性は
間違っていなかった、と思うのと同時に

この学年が本当に
大変な時代を過ごしていることを
改めて感じました。


昨年の2年生には

「スピーチや発表をすると
 就職活動の面接にも役立ちますから」
と言って

就活間際のスピーチの題は
自己PRもOKにしました。


彼らは本当に熱心に、
スピーチしていました。


今年の2年生は
留学生就職氷河期の中、既に

「募集がない!」

と言いながら
毎日のように日本人のような
リクルートスーツを身に固めて
走り回っています。


不安で、心配で、いっぱいのはずです。

それでも前を向いて頑張っている学生に、
本当は、もっと経験を積ませてあげたい。
自信をつけさせてあげたい。


スピーチ&発表は
「コロナが終わったらしようね」と
言っておきました。
だけど、どうなるか。


大変な時代を過ごしたからこそ
強くなって欲しい、と思います。


普段より就活が大変でも
負けないで、あきらめないで
何とかつかみ取って欲しい。


私も毎回の授業を貴重なものとして、
学生の熱を呼び起こすことばがけ
忘れないで接しなければなりませんね。


どうか、あの子たちに、幸運を!



(聞いている学生には感想を書かせています。)



p.s.正義は一つじゃないから、難しい。



#日本語教師
#日本語教育
#授業
#留学生
#毎日note
#毎日noteの会

ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。