見出し画像

魔法戦隊特進Z(トクシンズ)


特進クラスだって
手がかかるのよ。


6歳チビに聞かれました。
「おかあさんは、どのクラスで
 教えているの?」

うんとね
お母さんが教えているのは
2年生の
C,D,E,F,G,H,I,Jと、あとZクラス

Zクラスだけ
アルファベットが飛んでいるでしょう?
それはね、特進クラスだから。

ちなみにこちらは
午前の特進クラス。


午後の特進クラスは
1年生のときあったのですが、
大学や大学院に進学した学生が
続出して、なくなってしまいました。


そう、昨年度私が教えていた
スルメクラスです。

度肝を抜かれるほど個性的で
噛めば噛むほど味が出る
ヘンタイ...もとい!
優秀だったクラス。



みんな、元気かな。


午前の特進Zさんたちは
人数が少ないものの
まだ残っています。


日本語能力試験N2が
難しくなくて、
N1保持者だって
少なくないクラス。

言っておきますが
日本人だってN1は
難しいですよ。


工業簿記も商業簿記も
2級に日本語で
ケロリと合格してしまうクラス。

お国ではSNSのフォロワー2万人超えの
有名人もいます。

スルメクラスはとにかく
読み書きが素晴らしかったですが、
こちらは四技能、つまり
話す、聞く、読む、書くが
バランスよく出来る。


天才肌かと思いきや、
休み時間のたびに
しっかりコツコツ勉強しているクラス。


最近までは
能力の高さに感動こそすれ
ノーマークだったんです。


おかしくなったのは
今月から。


オンライン授業が終了し
全員対面授業になってから
クラスの学生たち全員の仲が
良くなりました。

それは良いのです。
良いのですが、
楽しくなってしまったようで
化けの皮が剥がれた、というか
本性剥き出しになりました。


先週はこんな質問が出ました。

「先生、安倍晋三さんの前の
 総理大臣を
 順番に10人程度、教えてください」


何ですと???

それをサラリと言えるほど
ワタクシは素晴らしいとお思いか?


ネットで探して表示、ポン!

「首相一人ひとりの特徴を
 教えてください」

いやん💕
こういう時のために
日本語教師は
新聞を読み込まなければ
ならないのであるぞよ、
ワトソンくん。


何とか説明。


「岸田内閣の特徴は何ですか」

この手の質問は
気をつけなければ
なりません。


反論や肯定を安易にして
まだ若くて純粋な学生たちを
洗脳させてはいけない。


ことばを選びながら、説明。


私は政治はどちらかと言うと
苦手分野です。
詳しくもありません。
その証拠に一度だって
政治の記事を書いていません。


だけど、
外国人に関わるのなら
政治は学んでいなければならない。
外国人は本当に
政治の話が好きです。

政治に興味がない
日本人が、異例なんでしょうね。


まあとにかく。


それは良いのです。
真面目な質問です。
授業時間、押したけど。


ところが今日は何故か
パチンコの話から始まりました。


「お金を稼ぐなら
 パチンコが一番です!」

と、23歳ウズベキスタン人くん。

「嘘です!先生、
 彼はいつも嘘ばかりです。
 ギャンブルで
 お金が稼げるわけがないんだ!」

こちらはスリランカ人くん。

この日本語レベル、
イタホンダイ!(シンハラ語で素晴らしい)

「んだ(のだ)」を使いこなせる外国人は
とても少ないのです。

「わけがない」はN2文型。
それがさらりと使えるとは
さすがであるぞよ。

「うるさい、だまれ!
 先生、彼は赤ちゃんです。
 先日一緒にレストランへ行ったら
 全然食べないですよ。
 子どもと同じですよ」

「彼は食べ過ぎです!
 ナーンを一人で3枚も食べました!
 お腹が爆発します!」

口喧嘩が始まりました。
一番前と一番後ろの席で😅

う〜ん、

口喧嘩出来るほどの
高度な日本語。
素晴らしいわ〜、と
もはや母親目線で
成長ぶりに感動するワタクシ。

「先生!
 昨日のワールドカップの曲は
 ヤバかったですね」
と、口喧嘩をよそに話し出したのは
ミャンマー人くん。

いや、どこから
ワールドカップ出てきた?

「前回の曲は
 モチベーションが上がりましたが
 あれじゃ応援する気になりませんよ」


うん、流暢な日本語だけどね、
本当にどこから出てきた?

「先生!
 日本人で自分のことを
 自分と呼ぶ人は
 何を思ってそう言うのですか?」

と、これまた同時期に
話し出したのは
ミャンマー人ちゃん。


またこのパターンか!
何であなたたち留学生は
人の話を聞かないで
自分の好きなことだけ話すのよ!


「ちょっと待って!
 今、何の話よ‼︎」

「彼が子どもだという話です!」
と、ウズベキスタン人くん。

「ナーンの話です!」
と、スリランカ人くん。

「ワールドカップの
 開会式の曲の話です!」
と、ミャンマー人くん。

「日本人は何故自分を
 自分と呼びますか!」
と、ミャンマー人ちゃん。
※これについては丁寧に答えました。

「先生は都市計画法の
 話をしていました」
と、ウズベキスタン人くん。



聖徳太子でも
全員分は理解できなそうな
混沌とした同時並行的、会話。


「だからね!
 今大事なのは
 都市計画法!
 別の話は後でしましょうよ!」

「うわっはっは!
 いいじゃないですか、先生!
 楽しい勉強!ですよ

※楽しい勉強、は
 私の口癖です。


どわっと皆で笑い
なごやか〜な雰囲気の
特進Z。

こうなったら「トクシンズ」と
呼ばせて頂こう。



授業進まないぞ💦


「先生!」

救いの手が来たかと思える
発言をしたのは
中国人くん。


私はこのパターンに
何度も裏切られてきました。
もう騙されまい。

「この課題のここの意味は...」


やっぱり......。

いやだからね、
何で私の説明を聞かないと
解けない(はずの)課題を
もうやっているのさ!

しかも難なく出来るのさ!


誰か「授業を早く進めてください」と
言う真面目な人はいないの?
ここ特進クラスでしょうが!


「うわ〜💦時間がなくなっていきます。
 皆さん、ちゃんと勉強しましょうよ!」

「はい先生!
 じゃあ私、教科書を読みます」

というミャンマー人ちゃんに
朗読をお願いしたら...


「はい、いいですね。
 じゃあここまで」

「先生、いやです‼︎
 もっと読みます!」

何でやねん!

読み始めてしまいました。


「はいじゃあ
 区切りがいいので、ここで。」

「いやん先生💕
 まだ読みます!」

おいコラ。

早く読まないと止められると
思ったのか、
猛烈に早口で読んでいます。

日本人も顔負けの
早口朗読スキル。

こういうの、チートって言うの?


「素晴らしいですね。
 本当にここまで」

「いや〜ん💕もっと読みますう〜💕
 すなわち〇〇が△□であるために...」

......。
本当に何やねん、このクラス。

ミャンマー人ちゃん
1ページひとりで全部
読んでしまいました。
 


「素晴らしい〜‼︎」
「可愛い〜💕」
「もっと読んで〜!」

拍手喝采の、特進Z。
いや、確かに超絶可愛いけど、
可愛いは今、関係ない。

今日は……お祭り?


他のクラスなら指名しても
寝たふりをして読まないのにねぇ。


やれやれ。

時間が足りない!と思っても
そこはレベルの高い特進Z。
飲み込みが良いので
他のクラスよりずっと
特急で授業しても
ついてくるのがすごいところです。


「あ〜良かった、
 時間、間に合いそうですね。
 じゃあ最後に
 練習問題をやりましょうか」

「答えは1がC,2がB,3がAです」
と、ミャンマー人ちゃん。


大声で答えを言うなぁ〜‼︎
何でもう、終わってるのさ〜‼︎
もしかして自分以外の時間止めた???
魔法使える???


分かった!
魔法戦隊ですね?
魔法戦隊トクシンズですね?

「練習問題2の答えは...」

練習問題2まで終わってるの???
それ、何魔法って言うの?


何とか答え合わせをして
今日の締めに入ったとき...


「先生!私はテレビに
 出たことがあります!」
と、ミャンマー人くん。


へぇすごいね、
すごいけどさ……


今言うなぁ〜‼︎
もう終わりのあいさつじゃ〜‼︎



ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。