専門家なら学び続けろ。
着付教室には10年ほど通いましたが、
成人式の前は大変な騒ぎでした。
成人式の何ヶ月も前、
まだ夏の気配が少し残っている
秋口から、
先生方は着付の練習を
始めるのです。
先生の先生である大御所も
例外ではありません。
毎年毎年、何十年も
着付をやっていても
例外なく、練習するのです。
外部講師を呼んで
自分の着付の出来具合を
チェックしてもらうのです。
先生の先生さえ。
大御所中の大御所も
注意を受けるのです。
私を一から育て上げて下さった
大恩ある先生が
私と同じように同じ場所で
学んでいらっしゃる。
不思議な感覚でした。
20歳くらいの若い子の身体は
毎年、体形の傾向が
変わるそうです。
現代の子は手足が長いけれど、
お尻が下についていて
出っ張っている。
昔よりウエストがくびれている。
つまりね、着物にシワが
よりやすいんです。
どんどん着物が似合わない体型に
なっているそうです。
5年程度でその年の「20歳」の体形は
変わるそうです。
また、着物も変わってきます。
帯締めにチェーンが付いている年。
ふわふわのファーが流行りの年。
それをどんなに上手に仕上げるかは、
練習量にかかってきます。
数年前の着付の知識や技では
もう間に合わない。
美しく着せられない。
だから毎年勉強するんです。
成人を迎えるお嬢様への
待遇のマナーも学びます。
いつどのようにお辞儀をして
どのようにお祝いのことばを
かけるか。
お嬢様の迷惑にならない立ち位置、
不快でない着物の着せ方、
着物への敬意と注意事項。
最近のお嬢様と
親の傾向まで学びます。
着物の知識がどこまであるか。
無いなら無い方に
どのように礼を尽くすか。
例えばそれをつけたら絶対に
似合わない飾りものを
持って来られました。
その場合でも、決して
「それはやめましょう」と否定せずに
それを使って美しくなるように
最善の努力をする。
正当に着せたのに
無知によるクレームをつけられた。
それでも、相手が間違っていても
決して反論しない。
当日は着付の先生の中でも
選ばれた精鋭のみが
出動します。
夜中は教室に泊まり込みで
朝早くから仕事します。
それは熱心です。
眼が。
眼が違う。
あぁ、この方たちは
こんなに上の位にいるのに、
どうしてこんなに真剣なんだろう。
という姿を
まざまざと見せつけられる。
成人式、今度着物を着ている
お嬢様を見かけたら、
是非ともよくご覧になって下さい。
その美しさは
もちろんお嬢様本来のものも
あるけれども。
相当頑張って着物を準備した親の気持ち。
着物を丹精込めて一点一点
作りあげた職人の技。
それを数えきれない程の
訓練を重ねて着せた側の技量。
一見しただけでは分からない
重みを背負っている。
それだからこその、美。
間違いなく、美しいですよ。
季節外れですね。
明後日、友人の
七五三の着付をします。
それでこんなことを思い出しながら
ここ数日は毎日練習していました。
専門家はね、
いつになっても
学び続けましょうね。
時代はいつだって
動いているのだから。
p.s.企画やっています。
通りすがりの方もお気軽に!
ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。