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八重洲ブックセンター本店閉店 ありがとうございました。

あれは大学生の頃でした。

当時の実家から
徒歩30分ほどのところにある
八重洲ブックセンター本店で
私は1ヶ月限定のアルバイトをしました。



本売り場の担当ではありません。


この大きな書店の8階には
当時洋書コーナーがあり、
その脇に八重洲ギャラリーという
一角がありました。



デパート式に言えば
催し物会場です。



この催し物会場が
私の担当でした。


そこでの初めてのお仕事は
木版画家 井堂雅夫先生の
「宮沢賢治の世界展」の
受付でした。


井堂雅夫先生の作品は
優しく明るい色合いです。


美しい木版画に囲まれて
お仕事出来たのは、
知的好奇心もくすぐられ
高尚な気持ちにもなり、
本当に幸せでした。



これがきっかけでまた
一から「銀河鉄道の夜」を
読み直した記憶があります。


ここでのアルバイトは、
恵比寿に出張して
村上龍さんのKYOKO展や
篠山紀信展などの
担当も行い、
非常に文化的な日々が
過ごせました。


催事が無いときは
「シロネコヤエスの配本便」の
担当もしていました。


すごい名前でしょう?


注文を受けた本を
直接届ける仕組みなのですが、
この「注文された本」が
かなりマニアックで
どこの書店にも無いような
専門的な本ばかりなんです。


英語ではない
外国語の本の注文も
たくさんありました。



今と違って
インターネットで簡単に
在庫の有無が分からない時代です。



注文されたお客様は
この本が八重洲ブックセンターに
あるかないか、など
知らないまま注文して来ます。

それで、
このシロネコヤエスの担当の
社員さん達は、
注文のあった本が
どこの階にあるか探し
各階に取りに行くのですが、
無い場合も多いんですね。


この場合は、
その本の詳細を
八重洲ブックセンターに無ければ
どこかから取り寄せ可能か、
絶版になっていないか、など
本当に本当に、懇切丁寧に調べて
情報提供する訳です。



もちろん
取り寄せられるのであれば
取り寄せて、配達します。


たった1人のお客様の
たった1冊の注文のために
こんなに手間暇をかけて
探しているのか、と思うと
若輩者ながら
頭が下がりました。



ここでのアルバイトが終わっても
私は暇なとき
よくこの書店へ行きました。


どこかのフロアに確か
「階段で歩くとここまで何歩」と
書かれているんです。


それで、
私は家から30分ほどかけて
歩いて行って、
運動がてら
フロア毎に興味ある
本を手に取り、
立ち読みしては元の場所へ返し
8階まで行くのです。



エスカレーターで行くのも
好きでした。
左手に絵などの展示が
してあることが多く
じっくり見ながら上がります。


社会福祉士の
国家試験を受ける際、
当時、このテキストを
置いている本屋さんが
とても少なかったので、
こちらの書店でお世話になりました。




今や社会福祉の本なんて
どこにでも置いてありますが、
私が社会福祉士になったのは
介護保険法が施行される前です。


ケアマネジャー、なんて
存在すらしていない時です。


※お前いくつだって?
 嫌だなぁ、自称26歳ですよ。



それで、
本当に福祉関連の本を探すのは
大変だったのです。


でも、八重洲ブックセンターには
他の書店には置いていない
様々な福祉関連の本が
充実していました。


社会福祉士になるための
テキストは全17巻ほどでしたかね?



これがけっこう高いので、
1冊ずつ
少しずつ大事に買っては
他の本も手に取って
立ち読みして帰りました。


卒業論文を書くときも
お世話になりました。

私は
「認知症高齢者の音楽療法」について
書いたのですが、
当時、こちら音楽療法についての本も
滅多に見かけず、


ましてや
認知症高齢者に特化した
音楽療法の本など
普通の書店では手に入りませんでした。


もちろん図書館にも
国会図書館などでなければ
ありません。

そこで私はまたもや
八重洲ブックセンターに
足繁く通い、
大事に大事に
一冊ずつ買って
論文を書き上げた覚えがあります。


私は20代は
洋書の虫だったのですが、
ペーパーバックも
八重洲ブックセンターで
買うことが多かったです。



八重洲ブックセンターの
いいところは、
洋書の小説が
TOEICの点数ごとに
最適なものが選べるように
展示されていたんです。



それで私は
ハリーポッターは
児童書でもかなり難解なこと、
ダニエル・スティールは
大人向けでも取り掛かりやすいことを
知りました。



余談ですが
ハリーポッターは
使用語彙量が
半端じゃなく多いんですね。


英語の語彙力を身につけたいなら
こんなに良い良書はありません。


話を戻します。


目的があって
行った場所でもあり、
ただただ暇つぶしに
行った場所でもありました。


本屋さんの中に
何時間もいられる、
そんな書店でした。


私の中で
とても大切な
かけがえのない場所でした。


3月末で閉店、
5年後に新設の複合ビルで
再開するそうです。


でもあの品揃えの多さは
もう出来ないかもしれませんね。



いろんなことを
教えて頂きました。


八重洲ブックセンター、
本当にありがとう。



ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。