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ヒトラーを知らない留学生と、戦時中の日本人の過ちを知らない日本人。

日本人は、外国人の知らない事実を
知っている。

外国人も、日本人の知らない事実を
知っているんです。


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一昨日、マーケティングの授業で
広告媒体別の特徴を
教えていたときのことです。

つまり、テレビ、インターネット、
ラジオ、新聞、屋外広告などの媒体です。


「この中で信頼できるのは
 どれですか?
 真面目で、嘘をつくことが少ないです」


「新聞です」

と、何人かの声が挙がった直後、
ロシア人の女の子が言いました。

「え〜?先生。
 新聞も嘘をつきますよ


あぁ、そうか...国籍が......。
この導き方は失敗でしたね。


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数年ぶりに国際関係論を
教えています。


この教科はなかなか面白くて
リベラリズム(自由主義)や
マイケル・サンデル教授で有名な
コミュニタリアニズム(共同体主義)なども
教えます。



何年か前、
ポピュリズムについて
教えていた時のことでした。

入試倍率5倍、
100倍で沖縄から来た
学生もいたクラスでした。


真面目で素晴らしい学生たちでした。
国籍の内訳は
ミャンマー人、ネパール人、中国人。

全員がスピーチや
研究発表を
ボイコットしないクラスでした。

(これは珍しいです😅)


さて、ポピュリズムというのは
いろいろ意味を持っていて
定義が難しいのですが、



複雑な問題を
国民に分かりやすく
単純化すること

意味することがあります。


例えば、
国内で政治が不安定になったら
近隣の国を批判して
国民の不満を外に向け
現政権が叩かれないようにする。


これの代表的な政策が
ナチス政権のホロコーストです。


そこで私はこのクラスに
まず鉤十字(ハーケンクロイツ)を描いて

「これは何ですか?」

と質問しました。


発言の活発なクラスです。

「え〜先生、何ですか?」

おや???鉤十字を知らない?

それなら、と

「アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)」

と、日本語と英語で書きました。

※英語の堪能なクラスでした。

「わかった、先生!
 お笑い芸人ですね!」


えっ?
待て待て待て!

「ホロコースト (holocaust)」

これは?


「分かりません。何ですか?」

「ユダヤ人(Jews)」

これは?

「ユダヤ人???初めて聞きました!」

……何とまあ‼︎

ナチス政権下で行われた
ユダヤ人の大量虐殺を
誰も知らなかったのです。


何度も言います。
大変優秀なクラスでした。


大学進学者が多く、
超有名ホテルへの就職など
就職も早く決まった学生たちでした。


中国人は、まだ分かります。
彼らは内モンゴルのことも
ウイグル族のことも
何も知らない。
知る機会を根こそぎ
奪われてきた子たちです。



ミャンマー人はとても優秀でしたが
軍事政権なので、まあ、分かります。


大変勉強熱心な
知的好奇心の強い
ネパール人まで!知らない。


そこで、教えました。

ヒトラー率いる
ナチスドイツが
ユダヤ人に何をしたのか。


ユダヤ人とはどういう人たちか。


どうして現代のドイツ人が
移民受け入れに寛容なのか。


そこから私たちは
何を学ばなければならないのか。


こういった問題は
他の先生方は
スルーするんだそうです。


「みおいち先生よ、
 知らねえぞ、そんなこと教えて
 後で問題になっても」


他の先生に言われました。


はい。
私も悩みます。


自分の意見を言わないように
教育されてきた中国人に
自分の意見が皆の前で
はっきり言えるように
スピーチをさせる。


他の国が
わざと教えなかったホロコーストを教える。


そうすることで
将来彼らが国へ帰ったとき
不利益を被らないのか。


きっとそれがマイナスに
働くとすれば、
日本人の想像を超えた
酷い不利益になる可能性がある。


だから、
他の先生方は、スルーする。


テキストに書いてあって
学生が理解出来ずに
怪訝な顔をしても、
さっと飛ばして
次の話題へ持っていく。


それも優しさ、
なのかもしれません。


だけど、私は
本当の、
私が知っている中で
本当だ、と思えることを教える。

それを知った上で
「自分は」どうすべきか
考える癖を身につけさせる。

そういった教育を
彼らにする。


自国へ戻ったら
そんな教育は
危ないのかもしれません。

だけど、それなら
日本へ留学に来た時点で
もうアウトでしょう?


だから、
日本人として
正しいと思う教育を
彼らには与えたいのです。

自ら学んで、自ら考えて
自ら選択して生きる。

それがきっと
彼らの力になると思うから。




この話には
続きがあります。


「先生、日本人は
 戦争のとき日本人がしたことを
 全然知りません!」


はい。

私たち、日本人も同じ。


私たち日本人は
我々の祖先が侵略した国がどこなのか、
即座にはっきりと、言えない。



如何に残虐に
広範囲で侵略したのか、知らない。


知っている人でさえ、
「でも日本人は
 侵略後は他の国より
 そこの土地の人たちを大切にした」
なんて言う。


本当ですか?



そこで私は
学生に、こんなことも教えます。


日本には「教科書問題」があること。
つまり、日本では戦中に
日本が侵略したことを
細かく教えないという
事実があること。


日本の情報開示の自由度は
他国より大して高くないこと。

以前の記事でも引用しましたが
日本の報道自由度は67位。


留学生なら多くの人が
日本人がかつての日本の過ちを
全然知らないことを、知っています。


学生にはこう伝えます。


「教科書は本当のことを教えません。
 ときどき嘘をつきます。
   皆さんは教科書を、新聞やテレビを
 100%信じてはいけません。

 いつだって、それは本当なのか
 考えながら読んだり聞いたり
 する必要があります。

 皆さんの国でも
 本当のことを教えません。
 日本も同じです。

 本当のことはどこにあるのか
 いつも考える癖をつけてください」


日本人の皆さん。


日本は言論の自由があって
情報を常に開示されていて
子どもに施されている教育は
安心できるものだ、なんて
思っていませんよね?



ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。