【創作大賞2024恋愛小説部門】早春賦 #13「ふたりの距離」
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十月。若葉が着物姿でカウンターに立つようになって、半年が経った。
お茶の稽古の成果が表れ始めたのか、はたまた、つぼみという妹分ができたおかげか、若葉は急に大人びて、つぼみからだけでなく、比較的若いお客からも「若葉ママ」と呼ばれるようになった。
それに合わせて、着物の色柄も少し落ち着いたものを選ぶようになってきた。露出度高めの派手な格好をしていたのが、随分と昔のことのように感じられる。
ある定休日の昼下がり。
地味な着物姿の若葉が鼻歌を歌いながら