散文家。現実を物語にしています。

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  • 余命365か月──51歳の春だから

    平均寿命で計算すると2021年4月時点で余命約365か月の平凡な男性が、平凡な現実を物語にしています。毎月初日の記事に日々を重ねていく形で更新します。

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余命365か月/二〇二四年七月

 七月二十九日(月) 晴れ  朝比奈さんが休みの日の朝が好きだ。朝比奈さんが働く日は、午前三時台に起きる彼女のアラームで目が覚める。朝比奈さんが出かける用意をしているあいだ、私は二度寝する。そして、時間になったら起き出して彼女を職場へ送る。朝比奈さんが休みなら、自分が起きなければならない五時十分の少し前、自然に目が覚める。そして、熟睡している朝比奈さんの顔をながめる。彼女は歯ぎしりをしたり、にやついたりしている。見つめると徐々にゲシュタルト崩壊を起こし、顔が可愛いとか可愛くな

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    • 余命365か月/二〇二四年六月

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      • 余命365か月/二〇二四年五月

         五月一日(水) 雨  余命三百二十八か月になった。月単位の数字だと大して減っていない気もするが、体で振り返れば、確実に終わりに近づいていくのを感じる。最期に向かってゆっくりと腹も据わっていく。ずっと道を外した人生だったが、いまや頑丈なレールの上にのった気分だ。  ゴールデンウィークらしく超高稼働だった。来客が多く足は忙しく動かしたが、心は余裕があった。マルチタスクが売りの職場で、ただ一人、異様なほどのシングルタスクが許されている。そのおかげでエントランスに関してはスペシャリ

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        • 余命365か月/二〇二四年四月

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