見出し画像

旅行log#001:小布施への一人旅、北斎と祖父/長野県

 高校の教師をしていた祖父は90歳間近で非常に博識な人だ。未だに知的好奇心旺盛で、先日帰省した際には江戸時代の庶民が鰯の油で火と灯していたことを教えてくれた(美味しそう)。
 祖父はもう耳が遠く、また認知症の祖母との二人暮らしをしており大がかりな遠出は望めない。そんな祖父が「長野へりんご畑を見に行ってはどうか」と言ってきた。
 本当は祖父自身が、私や兄を連れて行きたかったのかもしれない。自由に連れ出せるうちになぜもっとたくさん行動を起こさなかったのか、とてもとても後悔している。せめて薦めてくれた長野に行ってきたよ、すごくいいところだった、と写真を見せながら祖父とおしゃべりがしたくて、唐突に一人旅を決めた。

 一人旅は好きだが旅程を超適当かつその場で決めてしまうので、人と一緒に行く「旅行」と比べるといささか緊張感に欠ける。今回も急遽取れた有給を使って当日に長野行きの新幹線の席を取った。
 祖父に長野行きをメールで報告すると、「小布施に行くとよいよ。北斎は海外で人気があり、外国人観光客の集客に熱心」と返信が来た。まず私は無知なので小布施と北斎の関係を知らなかったが、北斎が晩年を過ごし、絵を描いたりしていた土地らしい。祖父、よく知ってんな~。

出発日:小布施へ至るまで
 東京から長野はびっくりするほど近く、11時くらいに出たのに13時くらいには着いていた。運転に自信がないので旅程は全て電車で組んだ。
・東京ー長野/北陸新幹線
・長野ー豊野/しなの鉄道
・豊野ー小布施/徒歩
 -途中しなの鉄道沿いや"アップルライン"を歩きりんご畑を見る
 この豊野ー小布施間の徒歩が結構楽しかった。ふらふらいろんなものを見ながら一時間半程度歩いたか。特に成田園という道路沿いの農園で農園の方とお話してりんごをたくさん頂いたことと、千曲川を渡る際、橋の徒歩通路の作りがめちゃくちゃ心もとなくて怖かったことが印象に残った。あとりんごはもちろん栗(小布施は栗の名産地)やらぶどうやらが道路横や家と家の間に平然と生えていて面白かった。

iOS の画像 (5)

iOS の画像 (7)

出発日:小布施観光~周辺の散歩&小布施堂本堂~
 出発日の夕方小布施についたときにはお目当ての北斎館が閉まりそうな時間だったので翌日帰宅日に訪れることにし、その日は周辺を適当に散歩した。コンパクトな街で観光スポットが盛りだくさん!というわけではないが、古い家をリノベーションした建物が多く、落ち着いたいいところだと思った。祖父の言う通り外国人観光客をよく意識されていて、標識や看板は英語での注釈が多かった。今回ゲストハウスに宿泊させていただいたが、街の規模の割にかなりゲストハウスの数が多かったのも外国人観光客需要なのかもしれない。
 自分自身かなりの地方出身ということもあり、様々な地方を旅するたびに東京へ出なかった自分というifを想像するのだが、今回も例に漏れず散歩しながら夕暮れ時のそういったことを考え、一人センチメンタルになる等していた。
 散歩の途中に小布施堂本堂という栗のお菓子で有名なお店へ行き、栗のタルトを買って食べた。めちゃくちゃ美味しく買い足しした。余談になるがこの小布施堂という会社は和菓子店(小布施堂)の他に洋菓子店(小布施堂 えんとつ)・高級旅館(桝一客殿)も経営しているらしく、商圏の作り方が素晴らしいなと感嘆した。小布施堂本堂の店員さんが非常に親切だったこともあり、軽率に好きなブランド入りした。

iOS の画像 (3)

帰宅日:小布施観光~北斎館へ~
 
ゲストハウスのオーナーのご厚意に甘え、朝はチェックアウト時間を大幅に過ぎ11時頃まで寝ていた。チェックアウトし、北斎館へ向かう。東京のすみだ北斎美術館の方で行われていたらしい「北斎 視覚のマジック」展が行われていたところだった。社会人になって美術展も全然行かなくなっちゃったな、等と思いながら入った。美術には全く明るくないが、日本史は好きだったこともありかなり楽しめた。
 天才的な画力を持ちながらも性格のきつさで様々な人・流派とぶつかっていた北斎が、独立し次々と力作を生み出していく様がわかりやすく説明されていた。
 独立してからしばらくの間、北斎は当時流行していた読本の挿絵に力を入れていたらしい。(小説家滝沢馬琴と組んでの読本出版のエピソード等は有名らしい、私は無知なので…(n度目))説明書きを読みながら、唐突に祖父が言っていた「海外では根強く葛飾北斎が人気。鬼滅の刃もすごいけどね。」の意味を理解する。なんで急に鬼滅なんだ、というか祖父鬼滅知ってるのウケるなと思っていたが、読本の挿絵は今でいう漫画そのものなのだ。この読本の挿絵や、イラスト集「北斎漫画」等が西洋に伝わりジャパニーズ・ポップカルチャーの基礎というものが築かれたらしい。鬼滅の大先輩だったという意味だったのね。やはり祖父と、富嶽三十六景しか知らない私とでは見える景色が違うのだなと痛感した。まだまだ背中を追わせてほしい存在である。

iOS の画像 (1)



帰宅日:帰宅
 他の観光地も行ってみようかと思っていたが、なんか満足していたのでそのまま帰路についた。小布施いいところだったな。

 早く祖父と祖母に写真を送っておしゃべりしたいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?