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472.傷だらけの人生。でも、自由だ。 / アジアの天使


数日前に久しぶりに映画館に行った。テアトル新宿。わたしは新宿の花園神社のすぐそばにあるオフィスビルに長く勤務していたので、新宿に愛着がある。すてきすぎないところ、おしゃれすぎないところ、ぜんぜん最先端じゃなくてどこかうらぶれた雰囲気があるところ、みんな好きだ。そこに加えて歌舞伎町に菊地成孔さんが住んでいるだなんてもう最高かよとしか言えない。

「かーにかにかーにかに〜かに道楽〜」と美しい女性のコーラスが響く中、地下へ降りていくとテアトル新宿がある。観たのは『アジアの天使』という映画だった。

オール韓国ロケで撮影された日韓合作の映画で、主演は池松壮亮くんで(くんとしか書けないのですみません)監督は石井裕也監督。なんで観ようかと思ったかというと、とりあえず池松壮亮くんという俳優さんの佇まいと声がいつもいつもものすごく好きで。

顔が好きとか演技が上手いとかそういうこと....なんだろうけれど、その人そのものを好きになるというより、その人が放つものを好きだと感じる方が近い。
わたしは誰かの文章や文体に強く惹かれるという経験を持つものだけれど、でもその「誰か」を個人として好きかと言われると「どうだろう?」と思う。
ただ、その人が書いた文章がすごく好きなんだよね、という気持ちを、わかってくれる人はきっといると思う。

そういう意味で、池松壮亮くんが映画の中でいつも表現している「文体」のようなものからいつも目が離せないような気持ちになる。
その彼が「とにかく脚本が素晴らしかったので、すぐに出ることに決めました」とどこかのインタビューで語っていたので、そうかそれならばすばらしいに決まっている。ので観なくては。と思って、観に行ったのだった。

観てよかった。観てよかった。観てよかった....!
と、胸の前でぎゅっと両手を握りしめながら、ぶつぶつつぶやいていた挙動不審な女が靖国通りを歩いていたと思うけど、それはわたしだ。

こんなふうにいつでもちゃんと自分に必要な作品と出会えるなんて、わたしは世界でいちばんラッキーなんじゃないか?と思うほど。出会いって情報量じゃない。だってわたしは「いい映画ないかな?」なんて1ミリも求めていなかったし、情報アンテナをはってなんていなかった。
ただ、BTSを特集していたローリングストーン誌を読んでいたら、そこに池松くんのインタビューがあった、ただそれだけ。

人は毎瞬、正しい場所にいて正しいことと出会っている。と心から信じて生きているけれど、本当にそうだと思う。だから人生は神秘なんだよね。出会いは情報が生み出すものじゃなくて、単純に、縁だ。

わたしたちは川に落っこちた枯葉みたいに、流れに飲み込まれながら石にぶつかりながらいつでも右往左往しているちっぽけな存在に見える。いつまでもしっかりとした大木にくっついていたかったけれど、青青としていた葉っぱは見る影もなく枯れ果てて、枝から落ちて、びしょ濡れになってみじめに水面をさまよっている。

大切な人はいなくなってしまう。
やることなすこと失敗する。
騙されるし、殴られるし、報われない。
良かれと思ってやったことは裏目に出る。
家族といっても名ばかりで、バラバラだ。
夢は終わった。金も尽きた。お腹も痛い。
天使が見える。ような気がする。
けど、その天使だってよく見るとなんだか変なんだけど?

そんな人生ですよ?そんな人生、生きるに値するんですか?ねえ、天使さま。


値するんですよね。それはもう、間違いなく、だれのどんな人生も、生きるに値する。いつでもわたしたちの絶望の中にある、ちっぽけであったかい希望。もしかしたらわたしたちに与えられているのは、そんなちっぽけな希望のカケラだけなのかもしれないんだけど、それをみんなでかき集めて、寄せ集めて、みんなで大事に運ぶことができたのなら。

わたしたちは、お互いの人生と人生とを重ね合わせて、ところどころ交わる点と点のその場所で、不器用にもぞもぞともどかしいままで、伝わりきれないカタコトの英語みたいな不完全なコミュニケーションのままで、一緒に生きていく明日があるのかもしれない。


ぜんぜんかっこよくないし、ブレない軸とかないし、キラキラしたなにかが待っているとは思えない世界なんだけれど、それでも「なにか」を信じることにして生きることに、してみました。
だって、どんな人生だっていいんだって、やっとわかったから。

大きな声で声高に語られる大義名分なんかじゃない、ささやかな声でかすかに語られる真実のメッセージが随所に散りばめられた、ほんとうに素敵な映画でした。


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