民話で独りコラム~怪談話の記憶と思い出~
小学生、中学生での修学旅行。
我が家の謎ルールで、よその家でお泊りが出来なかった私には、それはそれはもう心弾むイベントでした。
何が楽しかったのかって、それは日光東照宮を見たことでもなく銀閣寺を見たことでもない。(いや、今思えば『もう少し文化を味わえ、この山猿』と、昔の自分を叱咤したい)
夜、皆でパジャマに着替えて布団にもぐって始まるおしゃべり。
これが一番心弾む時間。
その頃携帯がありませんでしたから、消灯の後はひたすら布団の中にもぐりみんなでおしゃべりするのですが、6人ぐらい集まると始まるのは怪談話。
大体一人ぐらいは、とってもうまい子がいるんです。
あまりにうまくて?怖すぎると他の子に怒られている子もいました。今振り返れば、怪談話が怖すぎて怒られるって、不条理だわ・・・。
さて、そんな怪談話を楽しめたもう一つの場所が、毎年夏休みに出かけていた母親の実家。
四国、きっと町の中心は自分が住んでいた関東の町とそう変わらなかったのでしょうが、母親の実家は肝いりの田舎でした。
そもそも町とよばれる場所から山一つ越えなければ行けない場所なのに公共交通機関がほぼ壊滅。
歩いて行ける範囲の店はただ一軒。
その代わりに魚とかは軒さきまで売りにくる。
心太も玄関までやってきて売ってくれる。
歩きで川まで3分、海まで6分。
夜になると、街灯などというもののほとんどなく、月の明かりと家から漏れている明かり、そして記憶に頼って移動しなければなりません。
そしてちょっと道から外れると水神様やらいろんな神様がいたような場所です。
さらに、家の作りがすごかった。
家の中の水回りは台所だけで、トイレは外。
生まれた時から水洗トイレしか見たことない子供には、外での汲み取り式のトイレは衝撃でしたね。
極めつけに外にある薪風呂。
そんな田舎で、従兄弟たちと枕を並べてする怪談話。
恐怖の舞台は完璧なので、あとはスイッチを入れるだけという状態。
怖いと言いながら、何度も同じ話をねだる従兄弟。
泣き出してしまう従兄弟。
従姉妹の話を聞いて夜中にトイレに行けなくなる自分。
同じような風景は無理でも、似たような思い出を自分の子供にも残してあげたい、
と、思うまではよかった。
同じ経験を共有しようと怪談話が好きな娘と一緒に二人でホラー映画を見に行った日のこと。
夜中に娘の部屋からなにか激しく争う音が聞こえてくるじゃないですか。一体全体何が起こっているのかと急いで見に行くと、娘と飼い犬のシェパードが取っ組み合い。
なんでも、娘は私と一緒に観た映画があまりに怖くてこっそりと犬を上に連れてきてベッドで一緒に寝ようとしたようですが、それはさすがに私に怒られるだろうと察した犬(理解力満点の犬だった)が抵抗して取っ組み合いになっていたそうで。
べそべそしている娘を見て、『なにか別の思い出を残しちゃったみたい・・・』と努力の方向性を間違えた自分に反省したある晩のことでした。
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