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悪魔の民話

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召使いは悪魔をお祓いする ~ポーランド口承文学~

 この話は1964年にポーランド東部で採集されたものです。今から60年近くも前ですね。その頃はまだ悪魔も妖も、この地に今よりもずっと広く深く住み着いていたと思われます。  それでは はじまり はじまり~。  あるところに、幾人かの召使を抱えている主人がいたんだよ。あれは女の召使だったな。でな、その主人は悪魔も抱えていたのさ。この悪魔は、屋根裏部屋の臼の中で寝泊まりしていたんだ。そんでな、この主人たちが、客として呼ばれてどこかにでかけるだろう。そうすると、この悪魔はいつでも

悪魔のような隣人

 この話は1964年にポーランド東部で採集されたお話です。なんだか、分類すると世間話のような感じです。  『隣人』、ああ、これは生活の質、人生の幸福度までに関わる大事なキーワード。舐めてかかると、痛い目見ます。 それでは はじまり はじまり~  まぁねぇ、悪魔とかの話を口にしちゃぁいけないって言われているけど、昔の人だって話していたんだからねぇ、私たちが話しちゃいけないってことは、ないだろうよ。このトフォリチュフ(地名)にちょっと頭の弱い男が住んでいたんだよね。でなぁ、

女の計画、悪魔の不覚 ~ポーランド口承文学~

 この話は1967年、Józefówkaという現在ポーランド領で採収されたものです。東に車で40分ぐらい走らせるとそこはウクライナという場所です。  タイトルは、原文を直訳するとちょっと違うのですが、韻を踏みつつ内容とそう違わないようにしてみました。  それでは はじまり はじまり~  悪魔が二人の人間を、喧嘩させようとしたんだがな、全くうまくいかないのさ。ある時、悪魔は肩に紐靴(革製のショートブーツ)をひっかけ、女の処に出かけたんだ。 「あの二人にいざこざ起こさせる

 ~悪魔の書による悪魔の召還~    ポーランド口承文学

  この話は1966年、ポーランド東部のHutaと呼ばれる場所で採収された話です。2011年の国勢調査で人口数が278人。(現在さらに数が減ってる可能性大)  この数値だけを見ても、フォークロア魂が震えそうな立派な『村』でございます。 では はじまり はじまり~  三人の男がいたんだ。その男たちは魔術の本を読んで、黒い鶏から卵をかっさらったのさ。卵はな、その鶏の一番目の卵じゃなきゃいけんのさ。そんでな九日、わきの下で温めたんだよ。  一人がわきの下に卵をはさんだまま、

悪魔は去り、ウォッカは残った②

 さてさて前回のお話の続きとなります。    読み損ねた方、こちらからどうぞ  パン一切れの代償が3年のご奉公、って、それこそ悪魔のような罰ゲームですが、それでおわっちゃ、悪魔が廃るってもんですわ。  それでは 続きのはじまり はじまり~  「ご主人さんよ、麦はよく獲れて、もう売れるぐらいあるし、パンを焼くにしても十分ですわな。ちょいと、1立米ほど頂いてもいいですかね。作ってみたいものがあるんですよ」  男は言った。 「ああ、お前さん相手に惜しむものか。必要なだけもっ

悪魔は去り、ウォッカは残った①

 この話は1967年、ポーランド東部のLubenka(ウクライナとの国境から20㎞ぐらいの距離ですかね)で採収された話です。  当時は、ポーランドでアルコールと言えばウォッカか違法の自家製酒でした。今現在は、ビール消費人口が一番多いとのですが、ワインや高級酒の消費がこれを追い上げている模様です。    それでははじまり はじまり~  あるところにとても貧しい男がいたんだ。それでも働けるだけ働き、文句を言うことなどなかったのさ。ある時、パン一切れ持って畑を耕しに出かけたんだ。

ポーランド口承文学 ~黒猫には塩気のない蕎麦の実の粥を~

 ノートで、猫がテーマだというので、猫テーマで探してみました。やっぱり悪魔の猫?といえば黒猫ですね。ちなみに、我が家には悪魔も魔女もいませんが(多分)、黒猫はいます。  それでは はじまり はじまり~  ある男が、屋根裏で黒猫を飼っていたんだ。あそこには、いつでも黒猫がいたんだよ。  蕎麦の実の粥を与えていたのさ。牛の乳でたっぷりと煮込んだやつ。ただし塩を入れるのはダメだったんだ。塩の味付けはダメだ。  ある日この男はChełm(ヘウム 現ポーランド東部)に用事があって出

ポーランド口承文学 ~悪魔よりひどい嫁~

 この話は1972年にGiełczew gm. Wysokie(ポーランド東部)で採集された話です。調べてみると、今現在は人口1100人の村ですね。  それでは はじまり はじまり~  ある男に嫁さんがいたんだがな、それがまた不平不満ばかり言う女で、もう我慢できねかったんだよ。とにかく、男に対して文句ばかり垂れ流す女だったんだ。この嫁さんと1年、いや2年かね、一緒にいたらしいが、もうたえられねぇって。  「この嫁、どっかにやってしまわねぇと」  近くに森があったのさ。

ポーランド口承文学 ~悪魔からのソーセージとカシャンカ~

 日本全国に広がる狐の民話になんだかそっくりな話を見つけてしましました。この話はポーランド東部で1960年に採収されています。  それでは はじまり はじまり~  あるところに、夜な夜な客を乗せて走っている御者がいたのさ。  あれは冬のことだった。  御者は家にいたんだが、こんな、ほれ、こんな帽子をかぶって、マントを羽織った男たちが二人、夜更けに馬車を出してくれとやってきた。  御者は言ったのさ。  「いや、もうちょっと遅すぎるで。もう馬はださんよ、こんな時間、わ

ポーランド口承文学~悪魔の婚約者A-①~

 ポーランドの口承文学の中でも「悪魔」をメインに収集された話の訳です。ちなみに、ポーランドがキリスト教を受け入れたのは966年。それですら、西ヨーロッパに比べたら遅いのですが、じゃぁ、それまでこの地域に住む民に宗教観みたいなものはなかったのかと言えば、とんでもない。彼ら独自の神々や妖怪がいましたし、キリスト教がいうところの『悪魔』にあたるものもいました。  ・・・と、、前振りはこのぐらいにしてお話のはじまり はじまり~  あるところに娘っ子がいたんだ。これがまた、男を選んで

ポーランド口承文学~悪魔の婚約者A-②~

 この話、日本昔話の『3枚のお札』のようなシーンもありますが、結末はちょっと(いや、相当)ちがったりします。走る主人公。歩くだけでも転ぶ私は、物語の主人公には絶対なれないな、と全く関係ないことを考えてしまいました・・・、  それでは、前回の続き はじまり はじまり~  娘は棺桶をその場所にみたて、その周りを叩きながら祈りを捧げ角にロザリオの珠を置いて棺桶を囲むと道に座り込んだのさ。  男は叫びながらすぐそこまでやってくると、その棺桶に捕らえられた。  ロザリオの珠で出来

ポーランド口承文学~悪魔の奥さん~

 今回は、珍しく女性の悪魔がヒロインの座を獲得。悪魔の話といえば男性版が圧倒的ですので、ちょっと意外です。さらに、この女性の悪魔がですね・・・って、私ここでネタばらしてどうする。 それでは、はじまり はじまり~  若者が貧しい小屋に住んでいた。この若者のところに、夜な夜な悪魔の娘っ子が訪れていたんだ。真夜中まではこの若者といっしょにいるんだが、真夜中を過ぎるとどこかへ消えてしまう。  これがまた、べっぴんだったんだよ。  で、どうしたかって?若者は、これだけべっぴんの娘