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悪魔は去り、ウォッカは残った①

 この話は1967年、ポーランド東部のLubenka(ウクライナとの国境から20㎞ぐらいの距離ですかね)で採収された話です。
 当時は、ポーランドでアルコールと言えばウォッカか違法の自家製酒でした。今現在は、ビール消費人口が一番多いとのですが、ワインや高級酒の消費がこれを追い上げている模様です。
 
 それでははじまり はじまり~





 あるところにとても貧しい男がいたんだ。それでも働けるだけ働き、文句を言うことなどなかったのさ。ある時、パン一切れ持って畑を耕しに出かけたんだ。布っ切れにくるんで、後で食べようと脇に置いて働き始めたのさ。

 ああ、でも悪魔はいつでも手ぐすねを引いてるんだよ。

 悪魔はこの男が悪態をつくように仕向けたかったのさ。だから、そのパンを、遠くへ放り投げたんだ。

 この男は一仕事を終えて、持ってきたパンを少し食べようと思ったんだが、どこにもない。だが、怒ることも悪態をつくこともしなかったんだ。その代わりにこう言ったのさ。

「きっと自分より腹を空かせていた人がいたんだろう。それならそれでいいさ」

 悪魔はどうも自分の思いどおりにならないのをみると、地獄へ戻り自分の上役、あのルツィフェルに話したのさ。

「・・って、やってみたんですがね、うまくいきませんでした」

ルツィフェルは言ったのさ。

「奉公するなりなんなりで、その男に借りは返してこい」

 悪魔にだって、名誉ってのはあるんだよ。好き勝手に悪さしちゃいけないのさ。

 だからこの悪魔は農奴のような格好して、この男の所にでかけたのさ。ちょっと休憩させてもらいたいとか、ちょっくら泊めてほしいとか、そして仕事がなくてほうぼうの村をほっつき歩いているとか言って、そしてここで仕事はないのかと聞いたんだよ。

 この男は言ったさ。

「俺は、自分の仕事すらたいしてないんだがな。しかしお前が気の毒になってきた、そんなに若いのに、、、行くところがないなら、ここに居ればいいさ」

 そうやって、農奴の姿をした悪魔は男の所にいすわり、仕事を手伝ったんだ。

 どういうわけだか、この若い農奴あくまはその年がどんな年になるかが分かったんだよ。

 例えばだ、

「今は高台に麦をまくことにしよう。次の夏は、多分雨が多そうだ」

 そう言って、麦の種を高台にまくと、彼らの麦はよく育ったが、よその麦は湿っぽかったんだよ。だからな、次の年は他のよその家みな、麦を高台にまいたのさ。だが、この農奴の若者あくまは、男に言ったのさ。

「自分達は、谷にまこう。今年は乾いた天気になる気がする」


 男はこの若い農奴あくまにとても満足していたのさ。金も払ってなかったが、いい働きをしてくれて、貧しかった男の所には麦の貯えもでき、もうひもじくもなかったのさ。こうして3年、若い農奴あくまはこの男の所で働いたのさ。

 ただな、このまま何もせずに出ていったら、悪魔じゃないわな。

 つづく


 そうですね。このまま出ていったら、どう見積もっても、いい人判定になりますね。ということで、悪魔が悪魔たる理由は、次回へ持ち越します。

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