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ポーランド口承文学~悪魔の婚約者A-①~

 ポーランドの口承文学の中でも「悪魔」をメインに収集された話の訳です。ちなみに、ポーランドがキリスト教を受け入れたのは966年。それですら、西ヨーロッパに比べたら遅いのですが、じゃぁ、それまでこの地域に住む民に宗教観みたいなものはなかったのかと言えば、とんでもない。彼ら独自の神々や妖怪がいましたし、キリスト教がいうところの『悪魔』にあたるものもいました。
 ・・・と、、前振りはこのぐらいにしてお話のはじまり はじまり~


 あるところに娘っ子がいたんだ。これがまた、男を選んで選んで決めずにいたら、悪魔が娘の所に馬車に乗ってやってきたんだよ。

 娘は「ここらで決めようかしらね」と言っていた。

 馬車でやってきた男は綺麗な身なりだった。彼女はこのあくまに決めたと伝えてはいたんだが、また別の日にあくまが来た時つぶやいたんだ。

 「これはどういうこと?(私の家から帰るとき、この男は)馬車に乗ったかと思ったら、もう姿が見えなくなっていなくなる!」

 気になった娘は、針と長い糸を用意した。糸は遠くに行っても大丈夫なように大きな玉の糸で、針にその糸玉の先を通しておいた。そしてこのあくまが来るとズボンのすそにちょっぴり、針を刺しておいたんだ。

 あくまが娘の家から出ると、糸の玉はすぐさま無くなったのさ。娘はロザリオと祈祷書を手にとると、急いで糸の玉を手繰って追いかけた。

 追って、追いかけて、そしてたどり着いたのは墓場さ。そこで悪魔が死体の骨にしゃぶりついていたんだよ。その悪魔は、ほら、彼女のところにきていたあの男だったんだよ。

 娘は急いで逃げようとしたんだが、その時あくまがふりかえって、逃げる娘を見たんだよ。

 娘は逃げて、逃げたんだ。

 逃げながら、祈祷書のページをちぎって投げ捨てたんだ。

 そうすると、あくまの前に大きな山がそびえたったのさ。

あくまがようやく山を越えた時には、娘は遠くに逃げていたんだ。

 祈祷書のページがなくなると、今度は娘はロザリオの珠を投げて、投げたのさ。

 この時も、大きな山ができてあくまを引き留めることができたんだが、娘はもう疲れ果てて道の真ん中に倒れてこんでしまったんだ。

 ああ、それはだめだ!

つづく


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