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ポーランド民話

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ここには、悪魔の出てこないポーランド民話をまとめています。悪魔の苦手な方はこちらへどうぞ!
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ポーランド口承文学 ~『死神』と代母 A-①~

 今回は『死神』のお話。『悪魔の奥さん』の話といい、今回の死神といい、ポーランド民話に残っている『人ではないモノ』に対する人々の視線が、一神教が早くから広まっていた西側の大陸より、ちょっぴりやわらかいものに感じるのは私の贔屓目でしょうか。  ちょっと長いので、2部に分かれます。  それでは はじまり はじまり~  あるところに、貧しい男がいたんだよ。仕事もなくて、ただ箒を作って売っていたんだ。 「ちょっくら出かけて、箒のための枝をあつめてくるか」  そう言うと森へと出

ポーランド口承文学 ~『死神』と代母 A-②~

 ちなみに、この話は1967年にポーランドの東部で採収されたものです。ということで、原本では代母はKuma (クマ)と呼ばれていますが、現在私が住んでいる地域はドイツ、、、というかハプスブルグですかね?の影響を受けている地域で、この言葉を一度も耳にしたことがありません。旦那さんも「あ~、聞いたことあるけど、東の言葉だよね、それ」と。  ここではゴッド・マザーのポーランド語版、Matka chrzestna(マトカ フジェストゥナ)が一般です。    それでは 第2部の はじま

ポーランド民話『二人のドロータ』①

 この話は、ポーランド中央部の昔話です。仏教説話のように、よい行いは報われる、というお話ですので安心してお読みください。  ちなみに、ドロータはポーランドの女性名。2018年には、国内総人口女性の名前の中で23番目に多かったそうです。  それでは はじまり はじまり~  遥か遥か遠いところに、高い山の向こうに、大きな川の向こうに小さな村があった。その村に小さな白い小屋があって、その小屋に農奴のパズレックとその妻が住んでいた。  そしてそこには2人のドロータがいた。  

ポーランド民話『二人のドロータ』②

 井戸の底に落ちてしまった孤児ドロータ。ポーランドに限らず、ヨーロッパ地域では現世と幽世の境が井戸という話、結構ありますね。有名なのは『不思議の国のアリス』でしょうか。  さて、ドロータはどうなるのか。第2部のはじまり はじまり~ 下へ、下へと落ちていき、頭の中はグラグラし孤児は何が起きているのかさっぱりわからなかった。  そして何かが底にぶつかり、はっとした。  周りを見渡すと、月は遥か頭上の井戸の上にあり、目の前には大きな扉があった。  取っ手を引っ張ると扉は開

ポーランド民話『二人のドロータ』③

 孤児ドロータは精一杯働いて(というか、彼女にとっては普通の働きのようですね)元の世界に戻ってきました。もう一人のドロータの心の中は、それはもう、皆様のご想像の通りです。    では、このお話最終回 はじまり はじまり~ 娘は夜遅くまで、今までどこにいたのか、何を見たのか、どんな奉公に出ていたのか、そして奉公の報酬で何をもらったのかを話した。  緑のつづらを開けると、中には金銀財宝から金の刺繍が施されたリボンまでたくさん詰まっていた。  床に就いても、誰も寝付けなかった。