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どんなピアニストがウケるかなんて、わからない。だから……

今日は、私が音楽活動の拠点にしているアメリカのショービズの特徴について。推しアーティストの情報などを交えながらご紹介致します。

まず、私が弾いているピアノという楽器は、共演者要らずで個性丸出し。なので、演奏の好みが分かれ易いんですね。

戦後に一世風靡した不動の大物ピアニストの多くが世を去っている現在……。健在のピアニストを対象にした「世界ピアニスト・ランキング」各種でも、昨今はかなり戦国時代のよう。

中でも、↑これなんかは好み。クラシックかどうかは意見が割れるでしょうが、私のジャズ・ピアノの恩師は「ショパンはジャズだ」と明言なさるし。(和声がモロ) 

王道のアシュケナージやルビンシュタイン、アルゲリッチは無難にカバー。その上で、異端系のティグラン・ハマシアン、アムランやファジル・サイが入っている点も、ポイント高いです。

とにかくカッコいい!次世代の音。

↑こちらは正統派クラシック。まずまずなセンでは?

↑こちらは更にマニアック。生きてる人ばかりじゃないけど、10位にライル・メイズ様が入っているのが、個人的にツボです。(スムース・ジャズの大御所 パット・メセニー・グループのピアニスト)

流れるように美しいピアノ・ソロ

実は、私が今までにもらった最高の褒め言葉は「ライル・メイズに似てる」なんです。ウソでもお世辞でも嬉しい! ニューヨークで最初に共演したドラマーに言われた言葉です。

インダストリアル系キーボードのバンド・セッションから、アコースティック・ピアノまで。ライル・メイズの真髄を網羅したTEDライブ。

ヨーロッパほど伝統を重んじないアメリカだからか、誰かのひと声で瞬時にスターが産み出されるワクワク感があります。

必ずしもコンクール優勝者でなくても、人気が出ればスターに! 

ショパン・コンクール出身で上記ランキングに入っているのって、せいぜいキーシンぐらい? (アルゲリッチは別枠。ポリーニは、最近は○○でさっぱりらしいですし……)

アメリカ育ちのランランさんとユジャ・ワンさんが、当然のごとく全ランキング入り。まさに無冠で世界のトップ・ピアニストになっていますよね。

スターお2人を名門 カーティス音楽院で教えた名匠(ホロヴィッツの同級生)のインタビューと、当時の演奏動画。[概訳]ランランさんは、13歳で中国から先生にデモテープを送付。「まだ無理だから14歳になったら連絡を」と返信したところ、1か月後(まだ13歳)、ランランさんは引っ越し荷物を持って学校に来てしまったそう笑。15歳で入学したユジャ・ワンさんは、レッスン終わりに「週末にちょっとこれ弾いてみました」と、見事な演奏(ホロヴィッツ編曲のビゼー=カルメン)を披露。「で、楽譜が要るんですけど」(つまり全て耳コピだった)笑。

してみると、アメリカはヨーロッパの権威コンクールに強豪を送り込むことよりも、青田買いをして自前のスターを育て上げることに長けているよう。

日本人だと、中村紘子さん(ジュリアード主席)や五嶋みどりさん(ジュリアード・プレカレッジ、バイオリニスト)。 


こちら、五嶋みどりさんのお母様の著書「天才の育て方」です。お母様はみどりさんが幼少の頃、とある筋から「彼女は日本で受賞は難しいタイプだから、海外に出たほうがいい」とアドバイスを受けました。

そこで、つてを頼ってニューヨークのジュリアードの教授ににみどりさんのデモ・テープを送ったところ、「準備ができ次第いらっしゃい」と返事が。

そして11歳でニューヨーク・フィルと共演し、ドイツ・グラモフォンから世界デビュー〜一躍トップ・スターに。

この話を読んだ時は、まだニューヨークに行く計画はなく、感心するばかり。当時は子育て中だったため、どちらかというと育児書として読み耽りました。

ところが子育て後、ニューヨークでビックリ。この話は、みどりさんのように鍛錬を積んだ神童に限ったことではない!「誰でも」なのです。ただ、程度の差があるだけ笑笑。

賞歴とか出身校とか年齢に関係なく、パフォーマンスが気に入られさえすれば、相応のアメリカン・ドリームを手にできる社会です。

それを目の当たりにしたのは、ハリウッドでの音楽カンファレンスで。個別相談に申し込んで、進路のアドバイスを仰ごうとした時でした。

私のデモCDを聴いたASCAP(日本のJASRAC相当)のコンサート部門副社長シア・トスカニーニ女史は、「メトロポリタン美術館で演奏させてもらえば?」と提案してきました。

元プリンセスのキュレーターの件でも話題になっている、あの最高峰の美術館です。「ええ〜っ?!」と驚く私に、シア副社長は平然と「あそこは企画美術展に合わせた音楽イベントをよくやっているから、頼んでみればいい」と説明。

当時の私は、まだアルバム・リリースもしていない「ニューヨークのただの人」。名のあるプロやジュリアードの優等生を差し置いて、演奏なんてできるワケない……というのは、日本の常識のよう。

(今度ニューヨークに帰れたら、トライしてみよう)

実際は、誰もが何の実績もないところから始めているんですよね。例えば、私の推しピアニスト、ティファニー・プーンさん↓。

親しみ易い英語で語る、17Live・SHOWROOM ふうチャンネル。この回は、ピアノについて大切に思う「サプライズ」「楽譜はノートパッド派」など。

9歳で香港からニューヨークへ。前々回のショパン・コンクールでは、惜しくも(意外にも)一次予選で敗退。

それはどうでも、インスタグラムに日々投稿される彼女の普段着の演奏が大好きです。コケティッシュでセンチメンタルで、アイドル系の彼女のルックスそのもの。

どの投稿も生き生きしていて、どんよりしがちな私のピアノ・ライフに喝を入れてくれます。

中でも、とあるカルテットとのリハ動画は圧巻でした。ティファニーさんが共演者と散らす音の火花!「どうしてこんな稀有なピアニストが、メジャーな機会に恵まれないのかしら」と、密かに心を痛めていたところ……。

やっぱりやってくれました! 7/29リリースのこちらのアルバム(ソニー)で、カルテット/トリオとして共演!

これぞニューヨーク流ドヴォルザーク。ソロ・ピアノのシングル・カット盤はこちら↓。8年ぶりのリリースだそうです。

ということで、以上アメリカのクラシック音楽ショービズについて、懐の広さを独断でお伝えしました。

ご覧のように、この業界はかなりクロスオーバー。ゆえに、スキルのランク付けが難しいのです。また、人種が雑多で、趣味趣向は様々。

それだけに、上手ければいいってものではないし、何がウケるかなんて、やってみなくちゃわかりません。そこが人生の面白いところ?

グローバル化が進む現在では、この傾向はアメリカに限らず「世界のどこでも」かも。いかがでしょう、やってみたくなりませんか? (アメリカのお仕事情報は下記マガジンにて)

最後に、私の来月のサロン・コンサートのご案内を。

演奏曲目は、夏ソングとして”風鈴” や、ファースト・アルバムからこちらの曲↓(日本の友人間で一番人気)など、オリジナル4曲です。 


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チケットご予約: 下記コンタクト・フォームからご連絡いただけば、お知り合い割引¥1500(当日払い)に。(キャンセルはお知らせいただければ無料)

残暑の涼みに、お時間あればぜひおいでください。ではでは、どうぞ良い週末を!

冒頭の写真は、娘からのご招待(勤務先の福利厚生利用)で行った、伊香保温泉の宿ロビーのピアノ(2018年夏)。「天才の育て方」は、成功した……のか?!