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人を見て「バカみたい」とつぶやくと、自分も同じ姿になる話(後編)

コレ、本当の話だから注意したほうがいいです。人を見て優越感感じるなんてこと、めったにしない私……ですが、人生でそれをやった二回ともが、自分がバカにしたその立場に自分がなりましたw

2回目は、ニューヨークでのこと。お部屋を借りる前の2011年に、私は二週間ほど事前偵察に来ました。「娘の就職が決まったから、これからニューヨークで音楽を」と望んでいたものの、なんのコネもツテもありません。そこで、オーディションを受けて、ニューヨークで開催の日本人アーティストによる音楽イベントJAMに出演することにしたのです。

この年のJAMには、ニューヨークでジャズピアニストに転向された、シンガーソングライターの大江千里さんも出演されていました。

この偵察時には、音楽エージェントが世話してくれたシェア・アパートに滞在。ステージのための音づくりやリハの合間に、日本人ルームメイトたちと誘いあって、マンハッタンをあちこち見て回りました。

ライブに行ったり、パブに行ったり、すっかり仲良くなった私たちは、毎晩のようにキッチンでビールを飲みながら語り合いました。

4部屋あるうちキッチン脇の部屋の女の子だけは、なぜかルームメイトと親しもうとはしませんでした。

折を見て彼女に話しかけてみると、日本から留学に来たばかりだそう。「語学学校に行くんです」と、嬉しそうに教えてくれました。でも、仲良くなれそうな雰囲気ではありません。

他のルームメイトたちは、アメリカ企業でコンサルをしていたり、ニューヨーク・マラソン参加のために滞在していたりと、魅力溢れる現地エリート男女。それに比べ、留学生の彼女は影が薄く見えました。当時の私は無知で、アーティストビザがすぐ取れるものとタカをくくっていました。それで、学生ビザを得意がっているふうな彼女が、かわいそうに思えたのです。

ステージが無事に終わり、いよいよニューヨークから日本に帰る前の晩。私たちはいつものようにキッチンで酒盛りを始め、いつもに増して盛り上がり、夜更けには声が大きくなっていたのでしょう。キッチン脇の部屋から突然ラジオが大音量で鳴りだしました。

私たちはハッとして顔を見合わせました。こんなに壁が薄いとは、その時まで思ってもみませんでした。「申し訳ない」という一瞬の気持ちは、「起きているなら、出てきて混ざればいいのに」という気持ちにすり替わりました。

しばらくは声をひそめていた私たち3人ですが、「最後の夜」という免罪符のためか、結局は元と同じ音量に戻って、明け方まで話しこみました。彼女への罪の意識をごまかすかのように、私は「語学学校に行くなんて、バカみたい」と胸の中でつぶやいていました。

それから先は、もうご存知ですね? 日本に帰ると、アーティストビザはそう簡単には取れないことがわかり……学生ビザでニューヨークに舞い戻った私は、語学学校に入りましたw  [(追記)アーティストビザはこの後、無事に取得]

冒頭の写真は語学学校で、中央の友人(元ディズニーランドのお姫様役)のバースデー・パーティーの時のもの。中央上は先生(現役俳優)、メガネ姿が私です。

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[クラスの仲良し3人娘(&元娘)。私が着ているのは、右端のチャイニーズ・ガールが見立てて払い下げてくれたワンピ]

ニューヨーク市内にはコロンビア大学あたりを頂点とするスクール・カーストがあり、語学学校は最底辺だそうです。

でも私のクラスメイトたちは、ワークビザの発給を待つ医師(メディカル・ドクター)や精神科医、博士課程へ進学予定の修士、モグリで働く映画関係者やデザイナーなど、底辺のイメージとは相容れない人たちでした。

バカにしていた語学学校ですが、行ってみたら楽しくて、底辺でもなんでもよくなりました。

「ルームメイトの大学生がバカにしてくる」と気に病んでる子にも会ったけど……。そのルームメイトは以前の私みたいなかわいそうな人かもしれないので、「無視すれば?」と薦めました。

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[先生と、右端は現役医師です]

「バカと言ったら自分がバカ」というのは、娘が保育園で習ってきた言葉。「いいこと教えるなあ」と心底感心していた私なのに、やっちゃってた――というお話 前編・後編でした。3回目はありませんように……!

#コラム #音楽 #育児 #インディークラシック #語学学校 #ニューヨーク