見出し画像

結婚のスーパーコミュニケーター免許

「メシ・風呂・寝る」は、日本の夫が家庭で発する言葉の全て――。昭和の話かと思っていたら、つい最近、奥様が亡くなるまでお使いだった男性もいらっしいました。

この方は奥様亡き後、全てを快くやって下さった奥様に甘えていたことに気づかれ、このような生き方で良いのかと考えておられるそう。

現在は世界でも、コミュニケーション不足による「孤独」という疫病が広まっているのをご存知でしょうか? 

アメリカでは、ネットワークづくりが苦手な男性の孤独からの自殺が多く、全自殺数の8割にも。一見社交上手そうなアメリカ人ですが、ネット社会でこもりがちな現在は、事情が違ってきています。

「最初の一歩」が難しいコミュニケーションは課題であり、関心事。コミュニケーション法についての新刊↓が、NYタイムズ・ベストセラーになっています。

「スーパーコミュニケーター」とは、日本の「空気を読む」みたいな話かな?と思ったら、ちょっとだけ違うよう。

ピューリッツァー賞受賞ジャーナリストの著者が、Leuis Howsの人気トークショーに出演した動画がこちらです。(聴き易い英語)

著者によれば、スーパーコミュニケーターは”ループコミュニケーション”という手法を使うそう。➀相手の話をよく聞く②自分なりに言い換えて相手に返す③「これでいいのかな?」と質問する。

特に③がカギ。たいていの人は②まではやるものの、そこから自分の類似体験の話にすり替えたり、下記の3つのうち相手の欲していない種類の反応を返すそう。

➀解決法を議論する ②感情を分け合う ③社会から見た自分たち及びお互いを見る自分たちについての意見交換。

空気を読む日本とは逆に、ディベートに価値を置くアメリカ。著者は、その文化にも注意を呼びかけます。私もアメリカ人の説得ディベート上手には、脱帽して従ったことが度々。

一番最初は大学生の時。学校主催の夏休み全米ホームステイツアーでのことでした。サンフランシスコのご家庭で、美味しい手づくり料理の夕食後。「ホームメイドアイスクリーム」をみんなに勧められました。

お腹がいっぱいなので断っても、ご夫婦とティーンの娘さん(シイラとリサ)の全員は「あの手この手」の説得をやめません。しまいに仕方なく同意すると、どんぶり一杯のキャラメルアイスクリームがドーンと目の前に……。

めまいがしましたが、食べ出すとあら不思議。アメリカのアイスは甘みが少なく、瞬く間にお腹に収まりました。

次はデトロイトのご家庭で。若い白人ご夫婦にはアジア系の養子の愛らしいジェフ(2歳)がいました。他の都市での大邸宅と比べると慎ましいなから、気持ちよく整った木造の一軒家でした。

ショートカット美人ママの心尽くしの夕食の後、ケーキとコーヒーのおしゃべりタイム。拙い英語で話すうち、話題は運転免許に。私が「反射神経が悪いし不器用なので運転は無理」と話すと、パパが説得にかかりました。

私が免許を取りたくない理由を一つ言う毎に、パパは否定の理由と勧める理由を並べるのです。日本人の常識では、30分も議論すれば、相手の主張を認めそうなもの。免許なんて命の危険がありますから、アイスのようにカンタンには譲れません。

ところが、1時間経っても2時間経っても、パパは説得をやめません。ママは何度もあくびをしながらも、付き合ってくれています。ついに夜中の1時を過ぎ、私には反論の理由が尽きました。  

「日本に帰ったら免許を取る」と約束させられた結果は、大正解。娘の保育園の送り迎えや実家への長距離移動など、デトロイト・パパの言っていた利点の全て以上を納得しました。

日本流に「空気を読む」ならば、気の進まない相手にデザートを押しつけるなんて、まずないでしょう。免許なら責任も伴うので、もっとあり得ないかも。

かといって、言葉少ない日本流の「メシ・風呂・寝る」は、コミュニケーション以前。

男女差別をなくす主張で知られるこちらの学長さまによれば、「メシ・風呂・寝る」は長時間労働の産物。だとしても、それを聞いて育った子どもは、母親を召使いだと思うでしょう。

私の夫は「女は男の世話をするもの」と思って育った人。「メシ・風呂・寝る」的な態度をされていたので、もっと反論すればよかったと思います。

当時は育児が優先で、「波風立てずにやり過ごしたほうがいい」と放置していました。空気を読んでしまったかも。

前述の著書によれば、スーパーコミュニケーターになるには、相手の様子を細かく観察し、相手の欲することを深く考えること。それは生まれ持った才能ではなく、困った経験から必要に迫られて身につけるものだそう。 

他人の目を気にして暮らす日本人には、素質が十分ですね。その場の有力意見に流される意味での「空気を読む」は、コミュニケーションとしては不成立。私はコレをやってしまっていました。

ですが相手を思い遣って意図を汲む意味での「空気を読む」人は、まさにスーパーコミュニケーター。日本人の特技です。

日本人も「あ・うんの呼吸」に留まらず、あと一歩言葉を繋げばすぐさまスーパーコミュニケーター?!

説得ディベート上手なアメリカ人に降参する私の場合、上記を始め結果はまずまず吉と出ています。今でもキャラメル・アイスクリームは大好物。

とはいえひとつ間違えば、一晩中腹痛に苦しむ結果にならなかったとも限りません。アメリカ人もスシやカラオケと同じように、「空気を読む」を輸入しても良いのでは?

逆に私も、日本で暮らす夫に引き続き”スーパーコミュニケーション”を試みて、説得上手になりたいです。

上記YouTubeによれば、ハーバード大学が100年に渡って行ってきた卒業生の追跡調査による「幸せで長生き」のたったひとつ飛び抜けた条件は、「コネクション」。コミュニケーション上手で、平均の2倍の意味深い繋がり人数があれば、最長20年長生きだそうです。

“スーパーコミュニケーター“は、望む未来のために持っておいてもいい免許証キーワードかもしれません!