なにものにも期待しない

 どういった人生をもって良い人生とするのかは、議論のあるところだと思います。私の思う良い人生とは、「幸福」-「不幸」の値がなるべく大きくなるような人生です。「幸福」や「不幸」は、特に厳密な定義をしているわけではありませんが、自分が幸福だと感じれば「幸福」の値は大きくなりますし、嫌だなあと感じれば「不幸」の値が大きくなります。非常に主観的ですが、人生観というのは客観的足りえないため仕方ありません。人様に押し付けるつもりもありません。「幸福」-「不幸」=「良い人生度」として話をしていきたいと思います(しかし、「良い人生度」はセンスがないですね)。

 「良い人生度」の値を上げるためには、大きく分けて2つのアプローチがあります。1つは、「幸福」の値を大きくすること、もう1つは「不幸」の値を小さくすることです。今回は後者、「不幸」の値を小さくすることについて、その方法の1つを書いてみようと思います。

 マイナス要因を減らす、というあまり前向きではないように思えるアプローチですが、実践はしやすいのではないでしょうか。考え方の問題といえるからです(しかし、考え方というのは変えやすい反面、変わったあと定着しないものです)。

 タイトルがすべてなのですが、「期待しない」ことが、「不幸」の値を小さくすることにつながる、という考え方です。それほど目新しい考え方ではないと思いますが……。

 期待して、その期待に届かなかったとき、落胆する。この落胆による「不幸」は、期待で得られる高揚感による「幸福」よりも大きく、総量としてはマイナスである。しかし、期待しなければ、それによる「高揚感」を得られない代わりに、落胆しないためマイナスは小さくなるし、期待や落胆による体力や精神力の消費も抑えられます。また、もしうまくいったときでも、期待通りだった、と思うよりは、期待以上だったと感じる方が主観的にはお得ではないでしょうか。

 期待しない対象は様々ですが、やはり一番期待しないことで効果が得られる対象は人間でしょう。

 この人間には、大別して2種類あります。自分と他人の2種類です。

 自分に期待しない、というのは、なんとも悲しい話に聞こえますが、謙虚であるというのとあまり変わらない様に思います。自分の能力を過信しない。自分の正しさを常に疑う。より良い生き方はないか、より良いやり方はないか、常に考える。自分の能力に期待しないからこそ、むしろ前向きに能力不足を捉え、常に考え続けることができる。自分に期待する場合も、それは自分ならできる、自分には能力があると思うことでしょうが、うまくいかなかった場合の落胆に消費するエネルギィが大きい。感情の揺れ幅が大きいと、体力を大きく奪われる気がします。非常に、しんどい。期待しないことで、感情の振幅を小さくして、疲れない人生を送る。「不幸」を減らすという考え方からくる発想です。

 また、他人に期待しないというのも、一番大きいのは感情の振幅を小さくできるということ。例えば仕事で、彼ならやってくれる、成果を上げてくれるだろうと「信じて」仕事を任せることは、もしできなかった場合の精神的負荷は大きなものになるでしょう。しかし、全幅の信頼を置かず、うまくいかなかったときのバックアップやバッファを、物理的にも精神的にも持っておくことは、人生観だけでなく良い仕事をするうえでも必要なことではないでしょうか。例えば恋愛でも、相手は自分のことが好きだろうと期待すると、とてつもない落胆が待っていることでしょう。しかし、こと恋愛においては、こういった期待というか思い込みがある方が上手くいくように観察されます。私は恋愛関係であまりうまくいったことがないのは、こうした考え方が問題なのかもしれません(言い訳に過ぎないのかも知れません)。

 気に入らない人がいる時、どうにかならないかなと考えるのは、ほとんどの場合他人に期待した状態と言えるでしょう。あの人の仕事の仕方が変わらいないかな、うざい絡みをやめてほしいな、馬鹿な考え方を辞めてほしいな……などなど。願望のレベルなら、考える(願う)ことはとくに迷惑なことではないので良いのですが、期待し始めると、他人は変えられないという現実に直面した時、大きく落胆することになるでしょう。

 とかく、人間関係は煩わしいというところに帰着してしまうのですが……。

 アドラーによると、悩みのすべては人間関係であるそうです(確かに、すべての悩みを人間関係に関係づけることは可能だと思いますが、そう言ってしまっては、すべての悩みは自然現象であると言っているのと変わりないようにも思います)。アドラーの主張は言い過ぎのように思いますが、とはいえ大きく的を外したことを言っているわけではないのではないかとも思えるようになりました。

 今回は「良い人生度」を大きくするために「不幸」の値を小さくするための1つのアプローチを書きましたが、他の方法や、「幸福」の値を大きくするというアプローチもあります。覚えていたら書きましょう。

 Think, think, think.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?