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森の香りはどんな香り?

一つ前の記事で、洗剤や石鹸などへの香りづけに使用される「機能性フレグランス」に書いたが、このカテゴリーの中で秀逸だなと思うものに、入浴剤バスクリンの「森の香り」がある。おもに使っていたのは子供の頃だが、香水を含めた森の香り、ウッディ系の中で今でも私の中のナンバーワンだ。

香水を見に行って好みの香調を聞かれると、甘いのは苦手だが、かといって柑橘類のシトラス系だともの足りなく感じるので「森の香り」か「ウッディ系」と答えることにしている。実際、この系統でいい香水があれば欲しいと常々思っている。

和を推しているブランドだとヒノキやヒバがよく用いられている。木の香りそのものは好きだが、フレグランスには直球すぎる。外資のブランドだとサンダルウッド(白檀)がはっきり香りすぎたり、男性的すぎたりして、ピンとこない。かいだ瞬間、宙を舞う気持ちになるような、そんな香りにはまだ出会っていない。

そもそも「森の香り」ってどんなだろう。
このカテゴリーは具体的なようでいて、抽象度が高い。

「森」を構成している要素は一つでないし、色々なバリエーションがある。
針葉樹なのか、広葉樹なのか。
湿っているのか、潤っているのか。
日は差しているのか、いないのか。
新緑なのか、枯葉なのか。
苔は?花は? etc…

そんなことを色々考えているうちに、むかし好きだったバスクリン「森の香り」のことを思い出した。

香水で森の香りといえば、針葉樹などのすっきり系、パチュリなどで土の香りを表現したスパイシーなものなど色々があるが、記憶の中のバスクリンは少し甘さがあって、そこがバスクリンらしくて心地いい。

今回これを書くにあたって久しぶりに買ってみたが、昔と香りが違っているような気がした。何十年もたっているので当然か。
浴槽に入っている時はあまり香りを感じないのだが、風呂から出てきた人からはさわやかで、リフレッシュしたんだな、というような香りが漂ってくる。

子供だったので特に好きだということを意識していなかった気もするが、母が違う香りやバスクリンより安価な別メーカーのものをかったりすると、次はぜひバスクリン「森の香り」を買うよう頼んだりした。

今思うと、ユズやラベンダーといったそのものの香りとは違い、「森の香り」は香りとしての抽象度が高い。そこに香りを作った人の確固とした「森」の姿があり、それが香りで表現されている。

この一言で言い表せない感じ(香り)を子供ながらに心地よく感じていたのではないか。そしてこの体験がいまだに「森の香り」を求める源流なのでは、とすら思えてくる。

ところで、バスクリン「森の香り」のイメージが強すぎて、同じメーカーから出ている発泡入浴剤「きき湯」の緑の粒も当然森の香りだと思い込んでいた。ここ何年か、冬の寒い日に個包装のものを時折コンビニで買っていたのだが、先日よく見ると「カボス」の香りであると知って、衝撃をうけた。この香りは柑橘系の酸味があまりなく、全体的にまろやかにしあがっている。この「かぼす」の香りは子供のころにかいでいた「森の香り」に近いように感じる。

いつか機会があれば、バスクリンの中の人に「森の香り」について色々聞いてみたい。


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