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中東の対立

 イランのイスラエルへの攻撃でガザに続いて、中東での騒ぎはいったいどうしたのでしょう。そもそもイランとイスラエルは対立関係なのでしょうか。なぜ、これほどまで対立しているのでしょうか。中東情勢が世界経済に与える影響は、特に原油価格が上昇している中、インフレ抑制に世界各国が躍起になっているので、今回のイランとイスラエルの対立は、原油価格100ドルを超えるとインフレの再燃や株式相場など広範囲に及ぶと考えられます。
 イスラエルとイランは今でこそ敵対関係にありますが、1950年代、60年代には国交があり、20年以上にわたって良好な関係を維持していました。当時、イランでは親米の国王が国を治めていて、やはり米国を後ろ盾としていたイスラエルとの間でも、近しい関係にありました。両国の間では直行便も運航され、人々の往来も盛んにおこなわれていました。
 状況を一変させたのが、1979年にイランで起きたイスラム革命です。革命によってイランでは親米の王政が倒され、宗教を厳格に解釈したイスラム体制が樹立されました。新たな体制はイスラエルについて、イスラム教の聖地でもあるエルサレムを奪った「イスラムの敵」と位置付けました。このため、両国は国交を断絶。イランは現在でも、イスラエルを国家として認めておらず、反イスラエルを国是としています。イランで行われる反米デモは「米国に死を」「イスラエルに死を」と人々が叫び、敵意を示す光景がみられます。
 ただ、イスラエルとイランが過去に直接、戦争をしたことはありません。イランは、イスラエルに対する武装闘争を続けるイスラム勢力を軍事面で支援していて、両国は間接的な形で衝突を繰り返してきました。2021年5月にイスラエルと軍事衝突したパレスチナのイスラム組織「ハマス」や、イスラエルと過去に戦争をしたことがあるレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」はいずれもイランと密接な関係にあります。米国が後ろ盾となっているイスラエルが、最新鋭の兵器を保有しているのに対し、イランは武装勢力を通じて睨みを利かせ、両国は対峙した状態が続いています。
 イランでは、2000年代に核兵器の開発疑惑が持ち上がり、イスラエルとの対立が先鋭化する大きな要因となってきました。イランは、核開発は原発などの平和利用が目的と説明していて、核兵器の開発を否定しています。そのうえで、イスラエルこそが核兵器を保有していると非難しています。
 一方でイスラエルは、イランの核開発を「国の存続にかかわる脅威」と位置付けています。イランが保有する弾道ミサイルの射程距離は、2000キロ以上あるとされています。イスラエル全体を射程圏内にとらえており、イスラエルは警戒感をあらわにしています。
 特にイランがここ数年、米国による経済制裁への対抗措置として核開発を強化させて以降、不審な事案が頻発しています。これらに対してイランは、イスラエルによる仕業だと断定し、報復を宣言しています。イランによる報復行動とみられています。イスラエルは過去に、イラクやシリアで原子炉を攻撃し、中東のイスラム諸国の核開発能力を排除しようとしてきた歴史があります。今後、イスラエルがイランの核兵器に、より直接的な軍事行動をとれば、後戻りできない衝突につながると懸念されます。
 イランに核開発を止められるかどうかに焦点が集まりますが、これは無理ではないでしょうか。映画「オッペンハイマー」をみればわかるように、核兵器を開発し、長崎と広島に投下して使用してしまった事実は、開発したオッペンハイマー氏はいみじくも述べたように既に世界中で核兵器を濫立させてしまう事態に発展させ、世界を壊すことにつながってしまったのです。誰かが核兵器のボタンを押せば、世界壊滅につながるのです。
 中東の対立の根本は宗教に発しているという認識に立ち、世界宗教者会議を行って、どうすれば対立を回避できるかを各国の宗教代表者が集まって協議したほうが良いと感じます。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教、そして仏教やヒンドゥー教も交えて世界平和に向けた対話を行うことが今こそ求められているときはないと思います。そして、自国に戻り、宗教者が自国民と対話することが必要なのではないでしょうか。

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