村松克哉

これまで化学・電機メーカーを30年間勤務、営業とマーケティングを行っていました。退職後…

村松克哉

これまで化学・電機メーカーを30年間勤務、営業とマーケティングを行っていました。退職後は、岩手県の農業法人に4年、横浜の半導体関連ベンチャーに1年半。さすがにこれ以上の転職は無理と悟り、フリーランス編集・ライターを目指して勉強中。ワントゥワンマーケターでもあります。

最近の記事

成長のドライバーはモノ消費からコト消費・トキ消費へ転換

 1990年代のバブル崩壊以来、日本人はモノの所有ではなくモノの利用価値を重視するようになりました。消費増税を繰り返し賃金も低いままに置かれ負担にあえいできた家計をやりくりする人々はモノ自体に価値を認めるということはできず、モノの機能性を評価・判断するようになりました。例えばかつては自動車所有がステータス・シンボルでしたが、今は公共交通機関の方が便利になり、必要なときだけレンタカーを利用する方が「コスパが良い」と考える人が主流です。幅広いジャンルでサブスクリプション・サービス

    • 日米のROEは売上高利益率の差にあり

       日米の主要企業のROE(自己資本利益率)を比較すると日本企業が米国企業に比べて低く、この状況が継続していることに経済力格差の原因があります。これは日本と欧米企業の売上高利益率の差が主因であると言えます。稼ぐ力が弱ければ賃金も上昇することは難しいです。したがって個人消費も振るわない。コスト構造の違いや為替によるマージンの圧迫、新興国などの新市場への進出状況など、売上高利益率の差の要因は多岐にわたると思われますが、日本企業の利益率は相対的に低く利益率の改善は依然として日本企業に

      • 強いドルは米国の威信

         強いドルは米国の威信の現れであり、戦略です。48年連続で経常赤字でもドルを供給し、ドルを支えているのは5つの要因からです。  一つは原油のドル決済です。原油取引がドル建ては歴史的な経緯を背景に、慣習上、ドル建てでの取引になっています。歴史的な背景としては、①1960年代までは米国を筆頭としたメジャーズ(総合石油会社)は原油取引を支配していたこと、②80年代前半に原油取引のスポット取引が拡大するとともに価格変動リスク回避のために先物取引も始まり、その先物市場に主として米国市場

        • 今、円安対策をやりすぎると円安が加速する

           円安が進行している原因は日米の金利差を背景に投機筋が円キャリートレードに走るということが言われています。自民党の河野太郎氏がブルームバーグのインタビューで「円は安すぎる。価値を戻す必要がある」と語り、日銀に政策金利引き上げを要求したと報道されました。円安対策に日銀が利上げも視野に入れて検討していますが、本当に利上げすれば円安は是正されるのでしょうか。  7月の日銀政策決定会合のポイントは3つあります。第一は利上げの有無です。賃金と物価の好循環をデータで見た上で利上げを決める

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          6月訪日外国人旅行者数は過去最高を記録

           6月の訪日外国人旅行者数は3,135,600人となり、前年同月比で51.2%増、通年で過去最高だった2019年の同月比で8.9%増となり、単月として過去最高を記録しました。東アジアでは台湾、東南アジアではフィリピン、欧米豪・中東地域では米国などで訪日外客数が増加したことが6月の押上げ要因となりました。  2024年上半期の累計においても17,777,200人となり、過去最高を記録した2019年同期比で100万人以上、上回りました。政府は2025年までに2019年の訪日客(3

          6月訪日外国人旅行者数は過去最高を記録

          自信を取り戻さなければならない

           企業の資金余剰が30年以上続いてきた結果、過去最大の資金が日本企業にあります。しかし、日本企業は借金をしてまで設備投資することに消極的です。一方で日本の若年層は日本の将来に悲観的です。資金はあるにも関わらず、日本の将来に期待が持てないというのが今の日本の姿と言えます。日本銀行の調査統計局が四半期ごとに作成し、3か月後に速報、6か月後に確報を公表している資金循環統計で国内の金融資産・負債の推移を企業・家計・政府といった経済主体ごとに見ることができます。  過去最大の資金を使っ

          自信を取り戻さなければならない

          都知事選の石丸フィーバーは一過性か

           東京都知事選挙で2位の165万票を獲得した石丸伸二氏がマスコミで取り上げられ、選挙後もその熱は冷めていません。マスコミの都知事選での取り上げ姿勢に不満を感じ、開票直後のマスコミからのインタビューには塩対応していた石丸氏も各情報番組へのゲスト出演に応じ、各番組のコメンテーターや他のゲストらと丁々発止のやり取りを展開、視聴率稼ぎにも貢献しています。  若干41歳の石丸氏は広島の安芸高田市長を経て東京都知事に挑みましたが、YouTubeを中心にSNSを活用して20代30代を中心に

          都知事選の石丸フィーバーは一過性か

          自然災害リスクへ官民で対応を

           アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると2024年のハリケーンシーズン(6月1日~11月30日)のハリケーン発生数は85%の可能性で平年以上になると発表しています。ハリケーンは北米(太平洋・大西洋沿岸地域及び南部地域)及び中南米(カリブ海・太平洋沿岸地域)で例年6月から11月頃まで発生する熱帯低気圧の一種で風速が毎時74マイル(119キロメートル)以上のものを指します。  ハリケーンは最も激しい気象現象のひとつであり、上陸すると大きな災害を引き起こす可能性があります。ハリケー

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          「投資なくして成長なし、株価は信頼と期待の表れ」伊藤忠商事の石井社長

           業績好調の伊藤忠商事の石井社長のテレビインタビューをテレビ東京「モーニングサテライト」で見ました。同社は1858年の創業で麻布の行商が原点にあります。今も繊維部門を抱えている唯一の総合商社です。売上高で14兆円、営業利益で7000億円を稼いでいますが、さらなる高みを目指しています。  経営方針のテーマは「利は川下にあり」です。社会の変化に伴いお客様のニーズは多様化しており、これまでのビジネスモデルだけでは通用せず、利益を生み出すための手がかりは常に川下にあると考えています。

          「投資なくして成長なし、株価は信頼と期待の表れ」伊藤忠商事の石井社長

          米国企業の価格戦略に注目

           ロスリーダーとはスーパーや家電量販店での目玉商品などより大きな注文を得るための「客寄せ」として特定の商品にきわめて安い価格を設定することです。コストより安い価格で販売することは一定期間またはその商品単体では赤字となります。それでもロスリーダー価格は非常に安い商品を購入するために人々を呼び込みます。その間に予定していなかった定価の商品も買ってくれるかもしれないので元の商品の損失は補って余りあることになります。  米国ではインフレから低所得層を中心に消費は慎重になってきています

          米国企業の価格戦略に注目

          賃金上昇、日本と海外で大きな差

           米国では州や市・町によって最低賃金が定められていますが、その格差は大きいです。カリフォルニア州のファーストフードで働く従業員の最低賃金は時給20ドルです。ニューヨーク州のフードデリバリーの最低賃金は時給19.95ドルです。1ドル=160円換算で時給3200円です。日本の最低賃金は、最高は東京で1113円(令和5年10月発効)、最低は岩手で893円です。全国加重平均で1004円ですが、日米で比べると3倍以上の開きがあります。  人件費の高騰は価格転嫁につながり、売上や利益を圧

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          ビバレッジ曲線(UV曲線)

           ビバレッジ曲線(UV曲線)とは、雇用失業率(U)と欠員率(V)の関係を示す右下がりの曲線で失業と欠員(Unemployment・Vacancies)の頭文字をとっています。失業者(求職者)が多ければ多いほど企業は欠員を埋めやすくなることを示しており、労働市場の非効率性を理論的に含意しています。  ビバレッジ曲線(UV曲線)はUV分析において失業率を需要不足失業率と構造的・摩擦的失業率に分解することもできます。摩擦的失業とは仕事と労働者が完全に一致しないために生じる一時的な失

          ビバレッジ曲線(UV曲線)

          Z世代のキャリア観と採用基準の変化で米国企業が変わる

           米国の若い労働者の間で「Lazy-Girl Job(怠け者の仕事)」という新たなキャリア観が現れており注目を集めています。Lazy-Girl Jobとは自宅で仕事が可能で上司も厳しくなく午後5時に必ず終わる年収が6万ドルから8万ドルの仕事を指します。Lazy-Girl Jobは一見するとネガティブな印象を与えると思いますが、この背景にはポジティブなメッセージがあります。それは自分の時間を大切にし、過度な労働から自由になることを目指すというメッセージです。  Lazy-Gir

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          米国のゴルフ最新事情

           今、米国ではゴルフブームに沸いています。企業ではビジネスゴルフが復活し、採用ではセミプロ級のゴルフの腕前を持つ人が引っ張りだこになっているそうです。そして芝生でやるゴルフがすべてではありません。これまで手付かずだったマイノリティや女性に対するアプローチが功を奏し、今、複合型ゴルフエンターテインメント施設が人気になっています。  ゴルフの練習にゲーム感覚と飲食・カラオケなどを加えて全米で90以上に施設を増やし世界にも進出している「TOP GOLF」が注目です。施設に入ってみる

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          物流DXで2024年問題を克服し運送会社の収益向上を

           物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは物流業界の企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルや製品・サービスを変革し競争上の優位性を確立することを指します。物流DXの推進により物流業務の効率化や高速化・コスト削減・サプライチェーンの最適化(サプライチェーンマネジメント)などが実現でき物流業界全体の生産性向上が期待できます。また顧客と物流企業の接点強化による事業推進も期待できます。  2024年4月より働き方改革関連法が適用されトラックドライバーの時間外労働時間の上限

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          アフリカ・カッパーベルトをめぐる各国の思惑

           アフリカ内での銅生産の第1位はDRコンゴ、第2位がザンビアであり、この2か国の産銅地域は古くからカッパー・ベルトとして知られています。コバルトが付随する上に世界の銅生産量の1割ほどを占めるポテンシャルがあると言われている、この2か国の銅の生産動向は注視されています。  中国は紫金鉱業がコンゴの「カモア・カクラ鉱山」の第2期プロジェクトを稼働させており、また五鉱資源は海外鉱山の買収を通じて銅関連事業の比重を高めています。さらに中国はザンビアの銅生産拠点とタンザニアのダルエスサ

          アフリカ・カッパーベルトをめぐる各国の思惑