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6月訪日外国人旅行者数は過去最高を記録

 6月の訪日外国人旅行者数は3,135,600人となり、前年同月比で51.2%増、通年で過去最高だった2019年の同月比で8.9%増となり、単月として過去最高を記録しました。東アジアでは台湾、東南アジアではフィリピン、欧米豪・中東地域では米国などで訪日外客数が増加したことが6月の押上げ要因となりました。
 2024年上半期の累計においても17,777,200人となり、過去最高を記録した2019年同期比で100万人以上、上回りました。政府は2025年までに2019年の訪日客(3188万人)を超え、2030年までに6千万人とすることを目標に掲げていましたが、2019年の訪日客を上回るのは1年前倒しで今年中に達成できそうです。
 そうなると次の目標である2030年までに訪日客数の6千万人をいかに達成するかに焦点は移りますが、現在明らかになっている問題点である、宿泊施設が不足している、オーバーツーリズムの問題に対処しなければなりません。先般、政府は2031年までに全国35の国立公園すべてに高級リゾートホテルなどを誘致する方針を示しましたが、地元関係者からは誘致への不安の声が上がっています。訪日外国人の訪問先は都市部に集中しています。一方で日本を満喫している外国人観光客は日本の大自然を絶賛しています。地方に眠る観光資源、大自然を活用して地方滞在の魅力を向上させ、訪日観光客を都市部から地方へ分散させる狙いのようです。
 国立公園への高級リゾートホテルの誘致は世界遺産を含め、自然遺産の景観を乱す可能性があることを地元関係者は不安視しています。また外資の高級大型リゾートホテルを誘致すれば、現在、小さな宿を経営している地元の宿泊施設が大きな影響を受けることになることも不安を招いています。国立公園の目的は日本を代表する自然の風景地を保護し、次世代に伝えていくことです。また、公園での体験を通じて国民の豊かな心を育み国土の保全や文化的観点からも国の基盤をなすものと言えます。
 国立公園では開発などの人為を制限するとともに風景の鑑賞などの自然に親しむ利用がしやすいように必要な情報の提供や利用施設を整備しています。国立公園内は自然の景観だけではなく、野生の動植物・歴史文化などの魅力にあふれています。森林・農地・集落などの多様な環境が含まれており、ほとんど手つかずで残された自然を探勝できる一方で、自然と人の暮らしが織りなす景勝地で歴史や文化に触れることもできます。環境大臣が自然公園法に基づいて指定し、国が直接管理する自然公園ですので、本来、守るべき自然を優先するのは当然でしょう。
 期待するのはさびれている地方のエリア全体を上質化して再生することです。高級リゾートホテルを誘致することで新たなビジネスチャンスが生まれます。優良な観光資源である地方の大自然を守りながら外国人旅行者にその魅力をアピールすることで地方にお金を落としてもらい、地方経済を再生することが大事です。国立公園内施設の維持管理にもお金はかかりますから自然保護と地域振興利用はセットで考えなければなりません。
 大型の高級リゾートホテルが来ることで小さな宿が影響を受けることはあります。しかし、小さな宿には小さな宿にしかない魅力があります。少ない宿泊者で心の温まる経験は大型高級リゾートホテルにはない良さではないでしょうか。日本人の強みとするおもてなしは小さな宿にあると私は考えています。この際に差別化を小さな宿は自らの強みを磨いてもっと自信を持ってほしいです。
 インバウンドは3大都市圏だけで7割超も占めており偏在していることもあり、地方への誘客は必然となっています。これまで私たちが見てきたオーバーツーリズムの弊害対策も考えなければなりません。対策は入場制限や予約制、ダイナミックプライシングなど考えられる手はいくらでもあります。観光業は「生産波及効果が19兆円・雇用誘発効果が156万人」と試算されており、地方にお金が落ちればホテル業から波及して飲食・小売・サービス・運輸・農水・不動産・金融業まで広範囲に影響が及びます。インバウンドの経済効果が地方でも実感できる仕組みを整えることは大変重要です。列車も外国人の身体サイズに合わせた座席を備えた車両開発も大事です。我が国の観光資源は素晴らしい自然の魅力を持ちながら世界の富裕層を惹きつけるだけの観光パッケージが不足していました。そういった準備も整えながら今後の取り組みにより世界に誇れる日本の観光コンテンツをパッケージ化して訪日外国人旅行者に利用してもらえるようになることが次の成長目標の達成には必須です。


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