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アフリカ・カッパーベルトをめぐる各国の思惑

 アフリカ内での銅生産の第1位はDRコンゴ、第2位がザンビアであり、この2か国の産銅地域は古くからカッパー・ベルトとして知られています。コバルトが付随する上に世界の銅生産量の1割ほどを占めるポテンシャルがあると言われている、この2か国の銅の生産動向は注視されています。
 中国は紫金鉱業がコンゴの「カモア・カクラ鉱山」の第2期プロジェクトを稼働させており、また五鉱資源は海外鉱山の買収を通じて銅関連事業の比重を高めています。さらに中国はザンビアの銅生産拠点とタンザニアのダルエスサラーム港を結ぶ鉄道の改修にも10億ドル(約1500億円)を投じています。
 再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など脱炭素社会の実現に向けた技術に「銅」は欠かせません。中国はこの技術覇権に向けてアフリカの銅産出国に既に食い込んでいます。ザンビアでは中国向け輸出が7割を占めています。銅価格は5月に最高値を更新しました。中国が米中対立から鉱物資源のサプライチェーン独占に向けて歩みを加速させる中、世界の国々は中国支配のサプライチェーンに危機感を募らせており、経済安全保障に取り組む必要性が急速に高まっています。日米欧や多くの企業が銅の確保に向けてアフリカへの投資を加速させています。
 日本は精錬によって得られる高純度の銅の生産量こそ世界4位ですが、原料となる銅鉱石は海外からの輸入に依存しています。輸入先はチリ・インドネシア・オーストラリア・ペルー・カナダの5か国で95%を占めており、現時点でコンゴやザンビアにまたがるカッパー・ベルトに進出している日本企業はありません。今後は銅を含む鉱物の需要は確実に高まるため、今から日本はアフリカの資源国と交流を深めていく必要があります。
 2003年に中国は米国を抜いて世界最大の銅消費国となり、翌年には米国よりも46%多くの銅を消費しました。2006年には中国は鉱産物の戦略備蓄を設定し、ウラニウム・銅・アルミニウム・鉄鉱石およびその他の鉱物を貯蔵すると発表しました。備蓄構築により中国は重要な緩衝を得ることになり、市場の乱高下を調整し危機管理し資源供給確保を保証することができるようになりました。
 アフリカは中国経済への主要鉱物の供給において重要な役割を果たしています。鉱物の場合、中国はコバルト輸入やマンガンに関してサブサハラ・アフリカに依存しています。サブサハラ・アフリカはまた木材、クロムの重要な供給国であり中国の輸入全体のそれぞれ約7分の1を提供しています。ただし鉄鉱石と銅の輸入についてサブサハラ・アフリカは増加しているもののまだ比較的貢献度は小さいです。中国はザンビア・タンザニア・モザンビークを含む南部アフリカ中央部の鉱山帯への関心を強めてきました。この地域は銅・鉄・マンガンやその他のベースメタルが潤沢です。
 アフリカの場合、クーデターや内戦などのカントリーリスクもつきまといます。中国は部族対立や人権問題が起きても内政不干渉を貫き、国有企業がリスクを承知で鉱山権益の買収や開発投資を続けています。特に銅やコバルトを豊富に有するコンゴとの関係は深く、両国関係を全面的戦略協力パートナーシップに引き上げています。一方で中国企業は現地住民を雇用せず経済波及効果も小さいと現地での評判が悪いのも事実です。コンゴが中国との鉱山開発合弁事業について出資比率を32%から70%へ引き上げる計画があるとロイターが報じたのも自国にもたらされる利益が少なすぎることへの不満の表れとみられています。
 ザンビアの担当大臣からは特定国への過度な依存を避け、パートナーの多角化を目指す資源国側の動きに呼応した発言がありました。日本がアフリカで鉱山開発に乗り出すのであれば相応の経済的貢献が求められます。素材(鉱石)のまま輸出せず自国で加工して付加価値を高めるための日本の技術や資本に期待しているとザンビアの大統領は注文を忘れませんでした。重要鉱物の獲得競争で先行する中国の後を日米欧が追いかけて今後は競争がより激しさを増すことになりますが、アフリカへ単なる投資ではなく人材育成や技術移転といった日本ならではの支援が必要で互いにWin-winの関係構築の先に鉱物資源の確保があることを忘れてはなりません。

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