となりの匂い
この人のこと、きっとこれから大好きになるな
と、駅で別れた後ふっと思った。
きっとその時からもう好きだったのかもしれない。
その時彼がつけていた香水。
私も好きな香りだった。
前会った時につけていた香り、私すごく好き。
そう伝えたら、頻繁につけてきてくれるようになった。
今日あれだよ。うん、ずっと思ってたよ、いいね。はは、お気に召しましたか?
なんて会話、思い返したってなにも起こらないのに。
シャンプーを変えた。
今まで使っていたヘアオイルの香りがシャンプーの香りと合わなくなって、新しいヘアオイルを買った。
ほんのり、彼の香水と香りが似ていた。
つける度に、ほんのり彼のことを思う。
自分の髪の匂いを嗅ぐことが癖になった。
だんだんとそれは私の香りになってきた。
最後に会った日は、あの香水はつけてなかった。
私は変わらずあのヘアオイルをつけていた。
家に帰ってお風呂に入り、ドライヤーで髪を乾かす。
ヘアオイルを手に取って、
つける度に思い出してしまうかなと心配に思った。
でもその夜を越えて日常が始まってみればそんなことなかった。
この香りを純粋にいい香りだと思うし、好きだ。
夜寝る前、朝家を出る前、この匂いを嗅いでかなしい気持ちになることもない。
それでも、結局こんなに考えてしまうくらい、まだ、いっぱいだ。
きっとしばらく。
全然、大したことないのに、ね。
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