【読書記録】『宇多田ヒカルの言葉』①〜『HEART STATION』から『Utada Hikaru Single Collection Vol.2』まで〜

口でうまく伝えられたら、歌にする必要はない。
そう思うときがある。

口下手な私は、文字や歌に助けられている。
口だと、重要な時に言葉が出てこなくて、
あとから、ああ言えばよかった…。と後悔する時が多々ある。
あとから、自分はあの時こう考えていたんだ…。と整理がつく。
口が立つ人が心底羨ましい。

そんなことは私にとっては日常茶飯事だが、
特に、恋愛や誰かとの別れの曲面など、「口にできなかった思い」は
誰にでもあるだろう。
そんな時、それを代弁してくれるような、優しい言葉。
自分の名のつかない気持ちを的確に表してくれる言葉。
宇多田ヒカルさんの言葉にはそんな魅力があるように思う。

そんな前置きはさておき、
『宇多田ヒカルの言葉』を読んで、
宇多田ヒカルさんの1stアルバム『First Love』から
「あなた」までの75編の歌詞に向き合ってみた。
宇多田ヒカルさんの歌に何度も救われ、感化されてきた一個人として、
あくまで本を読んだ自分の備忘録として、つらつらと思ったことを
書き連ねたいと思う。

長くなってしまったので、分けながら投稿していこうと思う。
リリース順ではなく、書き上がった順で。(苦笑)
今回は、私が宇多田作品の中でも1番影響を受けた『HEART  STATION』を中心に
書いていきたいと思う。

5th Album『HEART STATION』

歌詞とサウンドから、自由さと遊び心も感じられる5th Album。
「ぼくはくま」から「Prisoner of Love」まで振り幅を感じることのできる、明るさと切なさが同居した作品。また、楽曲の主人公像も曲により様々。

「Flavor of Life」

オリジナルより「Ballard  Version」の方が有名であろう本楽曲。
人生と恋のほろ苦さを掛け合わせた楽曲。

友達でも恋人でもない中間地点で
収穫の日を夢見てる 青いフルーツ
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.226

→恋の「実り」をフルーツに喩えた歌詞。
まだ実らない恋。

どうしたの?と急に聞かれるとううん、なんでもない
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.227
「愛してるよ」よりも「大好き」の方が君らしいんじゃない?
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.227

→「花より男子」の主人公2人のやりとりと関係性を彷彿とさせる歌詞。

「Stay Gold」

ちょっと年下の彼氏を想像させるような、母性も感じる温かみのある歌詞。
美しいピアノの旋律と、一点の曇りもない愛情を感じる楽曲。

あなたの瞳の奥に潜む少年
私の本能くすぐって止まない
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.240
無邪気に笑ってくださいな いつまでも
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.241
就職も決まって 遊んでばかりいらんないね
大人の常識や知恵 身につけるのもいい                             
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.241


「Prisoner Of Love」

暗い雰囲気の楽曲だが、歌詞の末尾の母音が揃っていることで、リズムも感じられる楽曲。恋だけでなく、友達・家族・周りにいるいろいろな人との愛を乞う。
みんな愛に囚われ、愛を求めている。

ないものねだりブルース
皆安らぎを求めている
満ち足りてるのに奪い合う
愛の影を追っている
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.258
退屈な毎日が急に輝きだした
あなたが現れたあの日から
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.258
強がりや欲張りが無意味になりました
あなたに愛されたあの日から
自由でもヨユウでも一人じゃ虚しいわ
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.259

「Kiss & Cry」

宇多田ヒカルならではの韻が感じられる作品。
壮大な楽曲なのに、遊び心のある歌詞で自由さが感じられる。
映画の幕開けを感じるようなイントロの入りと、
何よりもカップヌードルのCMが鮮烈だった。(歌詞にカップヌードルと入っているのも。)

あなたの笑顔がぼくの心に
クリティカルヒット
いつの間にやらハイテンション
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.230
みんな夜空のパイロット
孤独を癒すムーンライト
今日は日清CUP NOODLE
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.231

「Fight The Blues」

前向きに始まる、本アルバム1曲目の楽曲。
随所に慣用句など、キャッチーで耳に残るフレーズが入っていて、押し付けがましくない、でも頑張ろうと感じられる応援歌。

金じゃ買えない
目には見えない
答えはメンタルタフネス
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.245
I hate to lose
鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス
今宵もファイトのゴングが鳴る
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.246

「Celebrate」

テクノっぽいビートに、「DJ」、「Sexy Lady」、「ドンペリ」。
クラブを彷彿とさせながら、はっちゃけたくなる1曲。だが、刺々しくなく、「ターコイズブルーの夜」・「月の見える丘で」など優しく包まれる感じのする不思議な曲の様に感じた。

Mister DJ この歌調子いいね
もっとあげて もっともっとあげて
Sexy Lady 背中のあいたdress
似合ってるね お前がナンバーワンだぜ
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.246

「HEART STATION」

今アルバムのタイトル曲。
言葉にしなくても通じ合える、まさに「暗黙の了解」。それは電波のように送受信し合い、お互いの心に届いている。
多分あまり良い状況じゃない、歌詞の中の2人。
そんな情景をラジオの「STATION」に例えるなんて。。

心の電波 届いてますか?
恋人たちのHeart Station
今夜もリクエストきてます
I Love You
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.254


Utada Hikaru Single Collection Vol.2

「Goodbye Happiness」

タイトルの通り、諸行無常を感じさせるような切ない歌詞。
なのに、悲しさを感じさせない不思議な楽曲。

So Goodbye Happiness
何も知らずにはしゃいでた
あの頃へはもう戻れないね
それでもいいの Love me
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.291
過ぎ去りし days
優しい歌を聴かせて
出会った頃の気持ちを今でも覚えてますか?
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.291

「Can't Wait 'Til Christmas」

クリスマスが「楽しみ」、「待ち遠しい」ではなく、「クリスマスまで待たせないで」という他にはない始まり方のクリスマスソング。

会う度に距離は縮むようで
少しずつ心すれ違う
約束事よりも今の気持ちを聞きたくて
宇多田ヒカル(2017)『宇多田ヒカルの言葉』エムオン・エンタテインメントp.291

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