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アラフォー女、仕事と恋と人生と 『恋愛ワードを入力してください』

「恋愛ワードを入力してください〜Search WWW〜」を完走。

「日本語タイトル、どうなのよ」とツッコミを入れてたくなるところはさておき、ドラマはめちゃめちゃ面白い。

38歳の非婚主義バリキャリ、ぺ・タミ(イム・スジョン)を中心とした、お仕事ドラマであると同時に、年下男とのロマンスにときめく。
個人的にはかなり共感性の高い作品だった。

ということで、ドラマの余韻を忘れないうちに「恋愛ワードを入力してください〜Search WWW〜」について感想を綴っておく。


1.ペ・タミの生き方と姿勢に共感

日本語タイトルだと恋愛ドラマと勘違いしそうだけど、このドラマの肝は「仕事」。それも仕事に生きる女たちの話。


主人公、ぺ・タミは業界1位のポータルサイト「ユニコーン」に自分の青春を賭け、全力で貢献してきた。

さて「ユニコーン」のマネジメントトップ(理事、社長)は女性。
タミもまた、上級社員の地位に就いている。
つまりは、女性が活躍する社風であることが冒頭から強調され、このドラマが目指すべき方向性が示されている。

そして、タミの転職先である業界2位の「バロ」。
この会社の社長は男性だけど、いわゆるおじさんサラリーマン的ではない。そして、社員たちの役職も男女どちらかに偏ることはなく、「現代的な職場での仕事」を語るに絶好の舞台設定となっている。ちなみに、対比として描かれる政治家たちが「おじさんだらけ」なのに対して、このドラマでは女たちが当たり前のように主導権を握っている。



ともあれ、「バロ」に転職後のタミは、その手腕を発揮しライバル社であり古巣の「ユニコーン」との差を縮めていく。
マーケティングを深く理解している彼女のやり方は、正攻法というよりも、時に意表をつく、言うなれば最も効果的な手法。
時には理解されず反発も買うが、ことごとく結果につながるために「結局、皆納得」という感じ。

私自身、仕事においては結果主義なタイプ。
なので、彼女のやり方が小気味よく、痛快だった。

そして、タミの先輩であり、ユニコーンの理事でもあるソン・ガギョン(チョン・ヘジン)、バロの同僚スカーレット(イ・ダヒ)との対立や協働もこのドラマの見どころのひとつ。彼女たちがぶつかり合いながらも、ガチで勝負をする姿はスリリングで目を離せない。

とにかく仕事に真摯な彼女たちを見ているだけで、共感の嵐なのだ。


思うに、タミの魅力は一貫した態度にある。
「有名人の私生活暴露」という社会性のない話題を、名誉毀損としてポータルサイトの急上昇ワードから削除するか否かの判断をする際、彼女は自分の哲学を押し通す。


急上昇ワードは世論であり 大衆は(それを)知る権利があります



ポータルサイトが急上昇ワードを選別するのは僭越だというのがタミの考えなのだ。それは彼女自身がゴシップのネタにされ、急上昇ワード上位にランクインした時でも揺るがない。そのゴシップが事実無根であるにも関わらず、彼女は自身の評判を落とす情報によって急上昇した「ペ・タミ」というワードを削除しようとはしない。


つまるところ、たださえ影響力の大きいポータルサイトにおいて、社内で決める「基準」は果たして正しいのか?

彼女はそれを常に問うているのだ。


はてさて、ここで考える。
「もし自分だったらどうしただろう?」
そう思いながらドラマを見ていた。
たぶん、スカーレットと同じような判断、つまりは「急上昇ワードの削除」を提案をすると思う。たとえ有名人であっても社会性のない私生活を暴露される筋合いはない。つまりは有名人の人権を守るという大義。

しかしその大義を振りかざすのには、もうひとつの理由があることも否めない。
ポータルサイトの社会的意義云々よりも、「会社を守る」という保身によるもの。名誉毀損に該当し面倒を起こしかねないワードなら、「削除」する方が楽だし、なによりリスクを大幅に削減できる。

もちろん、企業とは利益追求を目的とした組織なわけで、自己保身に走ることが悪いことだとは思わない。でも、その姿勢は内側(社内)に向かっていて、サービス提供者としての役割を果たしていないととることもできる。


自分に当てはめて考えてみると、「組織」という場所に所属する時、(タミのような大きな話ではないにせよ)「これだけは守る」と決めている基準がある。それは私だけの行動基準で、他者からみればささいなことかもしれない。

でも、それは働く上での大切な指針であり、組織という、他者に合わせることが正義となりやすい場所においては、持って然るべきものだと思う。楽な方に流されがちな私だけに、それがなければ、自分の軸を失っていたような気がする。


話をタミに戻す。
非婚主義者だからというわけではないだろうけど、タミにとって人生の優先順位は「仕事」だ。
ポータルサイト業界の成長と発展に自分の人生を賭けてきた。
そういう意味でタミには迷いがない。自分の軸がしかっりとしている。
そこが彼女の魅力なのだと思う。



2.10歳年下の男との恋愛とは

パク・モゴン(チャン・ギヨン)とタミは酔った勢いで一夜と共にする。
少なくともタミにとって、モゴンは一夜限りの相手のはずだった。


一方のモゴンはそうではない。
若さゆえの情熱か、はたまた無謀さゆえか、気の無い態度のタミに積極的に近づいていく。

そして、冷たくされればされるほど燃えるのが恋心。
モゴンのタミへの情熱は募る。だが、追っては逃げるタミの態度は後からじんわりと効いてくるパンチのように、キツい。

しかし、彼は傷つきながらも根気よく、そして気長に彼女を待ち続ける。そんなこんなで、モゴンがたまに見せる寂しそうな表情あれこれに、視聴者はキュンとするという流れ。


さて、女38歳と男28歳。
同じ時代を生きているという意味では、大した年の差ではないのかもしれない。
でも現実問題として10歳の差はなかなかだ。

それだけではない。
「結婚に夢を抱く若い男」と、「非婚主義者の年上の女」という相性の悪さたるや。
年齢差より、こっちの方がよっぽどハードルが高い。


まずは年齢差について考えてみる。
仕事では何事もバシバシと決断していくタミだが、モゴンについては終始気持ちが揺れている。

それもそのはず。歳を取れば取るほど、人は恋に臆病になる。傷つくと治癒するまで時間がかかるので、恋愛には慎重になるのだ。
それに40歳も近くなれば、自分にとっての生きるペースというのが出来上がっている。それは試行錯誤した中で手に入れた生活基準であり、最適化されていればいるほど崩すのは容易ではない。

そして、世間の目。
他人には関係ないことだとわかりつつも無視できない。周囲、特に相手の家族にとって、10歳年上の女というのは受け入れづらい雰囲気が未だ存在するのも事実なのだ。


うん。なにかとめんどくさい。
そう思ってしまう年上女の気持ちはよく理解できる。

それに加えて、年長者として相手を気遣ってしまう自分にゲンナリもしている。恋する時はもっとわがままに自分の気持ちに素直になった方が楽なのに(というか恋とはそういうものだと思うけど)、相手の将来までをも気にしてしまう。
結婚を望むモゴンの大切な時間を奪っているのではないかという罪悪感に苛まれるタミにとって、「人生経験がある」というアドバンテージは、恋においては不利に働く。


そして、非婚主義について。
タミの考え方は一般的ではないかもしれないが、明瞭で筋が通っている。

「真剣に愛し合う二人ならいずれ結婚するのが自然」と考えるモゴンは、一緒に暮らしたとしても、結婚はしないと言うタミが理解できない。

そんなモゴンに対してタミは売り言葉に買い言葉、「じゃあ、一緒に暮らすならば結婚が必要なことは理解できるのか?」と言い返す。
そしてこうも言う。

一緒に暮らすのは愛しているから


うん、確かに。
もっともな言い分。

そもそも結婚とは契約だ。
「愛し合っているから結婚」よりも、「愛し合っているから一緒に暮らす」の方が、契約という合理性を排除した分、「愛」に対する純度は高いと言えるのかもしれない。

何はともあれ、愛を法や制度で縛られたくないというのがタミの考えだ。

誤解のなきよう言っておくと、彼女は結婚制度を否定しているわけではなく、ただ自分が結婚しないという選択をしているだけ。
つまりはモゴンとは価値観が違うだけ。それにつきる。



さて、恋に落ちてた相手に愛を伝えるモゴンの行動は極めてシンプルでわかりやすい。

それに対してタミの想いは常に複雑。
それは、歳の差もさるころながら、彼女の価値観がマジョリティ側ではないことに起因する。そういう意味で「少数派の価値観」を持つ人間の生きづらさみたいなものが描かれており、この視点はとても興味深い。


ともあれ、「価値観の違い」というのは離婚理由の最たるものでもあるのも事実。
そう考えれば、超えるのはなかなか難しいハードルだ。



それでも、自分の気持ちを抑えられないモゴンは一途だ。


1年後や、2年後 もっと遠い未来は分からない
明日は一緒にいられるという確信

僕の望はそれだけだ



うーん。
こんなことを言われたら降参してしまうではないか。
これにときめかない女はなかなかいないし、複雑な想いをすっとばす念力がすごい。

結果、タミは自分の気持ちに正直ならざるおえない。
そして「好きという気持ちはとめられない」という、シンプルで、且つ出口のない答えに行き着くのだ。


にしても、仕事で疲れた心を癒してくれる、自分を愛する年下男子がそばにいるなんてこの上ない幸せな状況。そして、そういう場面は人生何度も訪れるわけではない。だからというワケではないけれど、今の気持ちに素直に生きることが結局のところ正解なのだと思うのであった。



3.恋の「障害」について そして素晴らしきキャストたち

このドラマでは仕事に真剣に取り組む女たちを描くとともに、彼女らの恋愛、生き方について様々な角度から描いている。

恋愛ドラマで欠かせない「障害」は、この作品においては「年齢差」と「結婚に対する価値観」という二軸で語られる。

一つ目の障害「年齢」は、実の所それほど大きな問題ではない(と個人的には思う)。
一方で、「価値観の相違」というのは前章で述べたの通り、結構深刻だ。


「愛が理由で人生の計画が崩れてしまう」


このタミの言葉が物語るとおり、好き合っていても「価値観の相違」はなかなか埋まるものではないし、結局は、どちらかが自分の価値観を諦めない限り、ぶつかり続けることになる。そしてそれは別れへの道と繋がっている。


さて、別れによる傷を恐れているのはタミの方。それは年齢を重ね、様々な経験をして大人だからに他ならない。

しかし、誰しもがいつか必ず死を迎えることを考えれば、いずれは別れる運命なのが人と人。そういう意味で、「終わるとわかっている恋愛に走るのか?」というタミの問いは、この文脈では意味をなさない。なぜならどの恋愛も永遠ではなく、いつか必ず別れを持って終わりを迎えるからだ。


そしてもうひとつ「今と未来」。
これもタミとモゴンの恋のテーマのひとつであり、「価値観」とも繋がっている。

モゴンの「結婚したい」という夢を叶えられないタミは、モゴンの未来を心配することをやめられない。それにいずれ訪れるであろう別れに対する恐れもある。
そういう意味でタミの視点はいつも未来に向いている。


一方のモゴンは今しか見ていない。
それは刹那的とかそういうことではなく、とにかく、今この時の感情を第一に生きているのだ。

「なるようになれ」

モゴンのこの言葉にはやけっぱちな気持ちは含まれていない。
ただ本当に「なるようになれ」と思っているのだ。


いずれにしても、「人は今を生きるべき」という考え方は理にかなっている。
なぜなら、今が未来を作るわけで、決まってもいない未来のために何かを諦めるのはやっぱりどこか間違っていると思う。
それに、いつ何時何時、命が終わるかも予測できないワケで。

そういう意味で、葛藤の末に結ばれたタミとモゴンのハッピーエンドには納得感があった。
二人の「障害」が消え去ったわけではないけれど「いつしかそれを『障害』と思わない日がくるのかもしれない」という希望を持てる。

そしてそれは「障害があることが、二人の日常になること」につきる。
自分の価値観や相手の価値観を変えようとするから話はややこしくなるわけで、だったらお互いを理解し、受け入れる努力をするのが一番だ。
変えられないものを無理して変える必要はない。

ともあれ、二人にそんな未来があるといいな、と思う一視聴者の私なのであった。






さて、ここからは愛すべき他の登場人物たちについて。

まずは熱血体育会系女子、スカーレット
彼女のシンプルな思考、そして美しさとファッション。何をとっても魅力的でとても好きな登場人物。

そして彼女の恋の相手、売れない俳優ソル・ジファンが個人的にはお気に入り。彼が役者役として演じる劇中劇、「義母は一体なぜ?」もツボだった。
ちなみに、ジファンを演じたイ・ジェウクは「アルハンブラ宮殿の思い出」で、ワルイド度100%なハッカー「マルコ」を演じている。どこかで見たことのある顔だと思ったけど、雰囲気が違いすぎて、はじめは気づかなかった。

次に、ぺ・タミの相手役、パク・モゴンを演じたチャン・ギヨン。
彼は「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」でIUちゃんをイジメていた借金取りの男グァンイル。
こちらもどこかで見たことのある顔だと思ったら。。というパターン。



ガギョン演じるチョン・へジンを初見したのは「秘密の森2」。
秘密の森ではほどんと笑わない役だったので(といってもこのドラマでも深刻な顔をしている場面多数だったけど)、たまに見せる笑顔にホッコリ。

「バロ」の社長、ブライアン(クォン・ヘヒョ)といえば、「私の名前はキム・サムスン」でサムスンの姉に恋する料理長としての印象強し。あの頃とちがってロマンスグレーの今の方が、渋くて優しいオーラに溢れていてヨキ。


他にもステキな俳優たちが脇を固める「恋愛ワードを入力してください」。
「トッケビ」で死神を演じたイ・ドンウクもタミの元恋人としてカメオ出演!)
バリキャリアラフォー女子の心情をすごくリアルに、そして丁寧に描いている。
かなりオススメのドラマです。


トップ画像:tvN「Search WWW」公式サイトより引用
http://program.tving.com/tvn/searchwww


★こちらのブログ「ミントドラマ」でも、ドラマ・映画の考察など書き綴っていますので、是非覗いてみてください★


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