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野性と野生のつながり

今夜はなんだかさみしい。

静かに虫たちが鳴いている。

みんないる。

みんないて、でもひとり。

涙をだれかに拭ってもらいたいとは思わない。

流れる涙はそのままにさせて。

―――

私は動物的な感覚が少し強いのではないか、と思うことがよくある。

生き残るのに有利な感覚。

変化にすぐ気が付く。
敏感に感じ取る。
日常が刺激で溢れている。


排気ガスの匂い。
芳香剤、柔軟剤の匂い。
店内の明るさ、
流れている音楽の音量。

アリたちよりも密集していると感じられる駅。

人、人、人…



慣れていないだけなの?
ないとは言い切れない。

自分の感覚しか分かりようがないから、
比較はできない。


我慢は、しているとしていないのふたつには、分けられないと思う。


我慢ができるだけ少なくてすむように、
工夫して工夫して
避け、防ぎ、うまく逃がしながら、
あとは耐える。

我慢できないことはある。
たくさんある。


でも、多くの場面は
どこまで耐えられるか。
妥協できるか。
折り合いが付けられるか。


―――


虫の声に合わせて、呼吸する。

目をつぶり、耳を開く。

“私”が溶け込んでいく。

風に息が乗る。

カチカチに固まった肩が

力と痛みをほどいていく。

喉が閉まらないで息が入る。

背中がゆるむ。


心と身体が、全身の細胞が、
喜ぶ。

この感じは、特別なもの?

人間社会を生き抜くには不要なこの感覚を、
私は愛している。


普通になりたくて、平凡はいや。
浮きたくなくて、注目はされたい。

私は…、そう人間だ。


―――


折り合いが付けられなかった。
ゆずれなかった。

自分の中の感覚と信念と、
現実社会で生きている自分に。

私は他の命の上に生きている。
その命は、私が愛してやまないものたち。


こぶしは、自分より弱いものへ向く。
やり返さないもの、
おさえつけられるものに。

言葉を持たないものたちの苦しみは、
私がちゃんと伝えるよ。

小学生のときに約束したとおり、
私が代わりに言葉にする。

花びらをそっと閉じるように内にしまう心と身体。

いつも開いてくれるのは、
言葉を持たないものたちだった。


―――


敏感か鈍感か、ではない。
繊細な人とそうでない人、には分けられず、
どのくらいの強さで感じるか。
何に対してかも、人により違う。

グラデーション。

快と不快も。
こころよい感覚に近づくように、私たちは自然と選んでいる。

手はふたつしかなく、
何かを受け取るとき、何かを手放す。こぼれ落ちる。

抱えられるものにはかぎりがある。

あきらめないもの、
あきらめるもの。


あきらめざるを得なかった
数々のもの。

代わりに受け取ったものを
しっかり見つめ、生かすんだ。

―――

腐葉土の香りが、ふわりと私を包む。

生きているものたちの匂い。

まっすぐ、きれいなものたちの、生と死の匂い。

私が最も好きな匂い。

2024.8.21 / 23

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