【長崎新聞連載②】 金曜の夜を延ばそう。
金曜の夜を延ばそう。
3月に福岡を訪れる機会があった。その日はちょうど「まん防」(新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置)が解除されたばかりの金曜日で、春の訪れを告げるようなあたたかい日だったからだろうか。街が浮き足だっていた。立ち飲み屋などがある通りでは、人々が外のテーブル席までいっぱいで、立ち飲みパブの店内でかかっているBGMも通りに響き、にぎわいが路地まで滲みだしている。終電近くの公園を通ると、そこら中で男女が語りあっているようで、なにやら熱気にあふれている。ふと長崎市のまちなかに足りないのは、こういった夜のにぎわいなのではないかと感じた。
長崎に戻り、私が所属しているシンクタンク「長崎みんな総研」の定例会議でそのことを話すと、福岡と長崎の違いはどこにあるのかという話題で盛り上がった。店内の盛り上がりが路地に滲み出すようになっていない、店やまちのつくりの違いではないか。長崎は福岡よりもコミュニティーの輪が小さいため、出会いの場でも慎重になるのではないか。様々な仮説が生まれたが、なかでもメンバーの林田光弘さんが投げかけた「長崎には終電文化がないからでは」という仮説で議論が白熱した。
終電で帰るか、それともオール(オールナイトの略)するか。その思案の先に、夜のまちの盛り上がりがあるのではなかろうか。長崎市のまちなかは路面電車やバスの最終便が22〜23時頃である。19時くらいに1次会が始まって21時くらいに終わったとする。2次会に行って終電を逃しタクシーで帰ることを考えると確実に電車やバスがあるうちに帰ってしまったほうが安心。結果、もう1軒行こうとなりづらいのではないかというユニークな視点である。
林田さんは続ける。深夜0時ごろまでバスや路面電車が動けば、時間の余裕があるから2軒目へ行く人も増えるのではないか。数年前に話題となった「プレミアムフライデー」のように、月に1日、第3金曜日だけ夜が長くなる、長崎まちなか版プレミアムフライデー(仮)を実証実験として実施してみてはどうか。そんなアイデアがうまれた。
月に一度のこの日には、まちの飲食店とも連携する。実証実験に参加しているお店ではレートハッピーアワーと称して、遅い時間に入店したお客さんに1品だけ料理をサービス。参加店をマッピングしウェブで公開すれば、飲みたい人は簡単にお店をみつけられるし、集客したいお店にとってもメリットとなるだろう。
先日最終バスに乗って家に帰ったメンバーの話では、コロナ前に比べて最終バスの乗客もかなり減っていたそうだ。コロナ禍を経て、長崎の夜のまちはいまふたたび盛り上がりを取り戻しつつあるが、夜のにぎわいが増すことはまちにとっても、飲食店を経営する人たちにとってもプラスであることは間違いない。
コロナ感染者の様子もみながら、そんな取り組みを実際にやってみたいと考えています。どうでしょう。電車、バス、タクシーといった公共交通機関のみなさま。飲食店を営むみなさま。まちを盛り上げたいと考える地域の企業のみなさま。協力してくださる方々を募集中。それもアリだと思ったかたはtwitterへのメッセージをお待ちしています。
( 長崎新聞 2022年5月24日 掲載)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?