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発達障害の大きなカテゴリー分けと特徴について②(知的障害)

前回の記事では、
ASDの特性について、また、それらに対する対応策(社会生活を送る上で、困り感を減らす方法)
といった内容を解説した。

今回は、前回に続いて、発達障害の大きなカテゴリーの1つ、知的障害とは何か?
また、それに対する対策法(社会生活を送る上で、困り感を減らす方法)を書いていこうと思う。

知的障害とは、

記憶、推理、判断などの知的機能の発達に有意な遅れが見られ、社会生活などへの適応が難しい状態

と定義されている(文部科学省より)。

簡単に言い換えると、

全般的な能力(運動、学習、コミュニケーション、社会的能力など)の障害を特徴とし、社会生活への適応が困難となる

といった特性を持つ。

Down症候群や、脳性麻痺を伴う知的障害、てんかんを伴う知的障害などがこのカテゴリーに含まれる。
原因は、先天梅毒や妊婦のタバコ、出生後の脳炎、胎内での無酸素症、水頭症、染色体異常(Down症候群)など様々。

厳密には、知的障害は発達障害のカテゴリーには含まれない。
ただ、ASDやADHDと併発していることがある。

では何故、全般的な能力の障害、といった広い範囲の問題点が挙げられるのか?

学習面で言えば、言語理解や書字、計算の問題。

運動面では、手指の細かい動きの難しさから、運筆(鉛筆やペンなどを使った書く動作)や食事動作(箸やスプーンの操作)、疲れ易さ(階段の昇り降りだけで疲れてしまう)などの問題が挙がる。
また、語彙の獲得量も少ない為、話の理解や表出の幅も少なく、コミュニケーションの問題や社会性の問題に繋がる。

生活面でも、先を見越した計画などは難しい為、予定に合わせて身支度を整える・準備する、優先順位をつけて行動する、などは難しい
記憶力や論理的判断、金銭管理、などの困難さもある。
重症度にもよるが、他者と比べて自信のなさや、不安感が強いという問題も多く、二次障害も起こり易い。

これら以外の問題も全て包括して、全般的な能力の障害、とした。

(言語理解や語彙の獲得などの記事や、運動面やコミュニケーションについての記事はまた今後、詳しく書いていく予定だ。)


また、知能指数(精神年齢/生活年齢)の程度で分類される。
必ずしもIQと日常生活能力の程度は一致しないが、目安として日常生活能力の項目を記載する。(過去に支援した児童を参考に各項目で実際の様子や支援の方法を加える)

軽度知的障害(IQ:50〜69)
食事や衣類の着脱、排泄など日常動作に支障はないが、漢字の習得の困難さなどの緩やかな言語発達が特徴で、18歳以上でも小学生レベルの学力に留まる事が多い。精神年齢は8〜12歳。

(対象児童は小学生、実年齢に対して学力はマイナス2学年分ほど。(小学6年生なら4年生程度)言語表出に問題があり、情緒の不安定さや攻撃的な物言いが目立つ。学習面での苦手さを実感しており、周囲との差を感じ不安感が強い。4月が近付くと不穏になる。
言葉の理解には問題がなかった為、善悪の判断や気持ちの代弁、言語化を繰り返し練習する、という支援を行なった。
本人の調子次第ではあるが、他者を思い遣る声かけや、自身の気持ちを他者へ伝えるなどができるようになった。)

中度(中等度)知的障害(IQ:35〜49)
言語発達や運動能力の遅れが見られる。
身辺自立は部分的にはできるが、全ての自立は困難。
成人になってからは、課題を注意深く構成され、熟練した監督下であれば、単純で実際的な仕事は可能。主に就労支援A型・B型が適応される。精神年齢は6〜9歳。

(対象児童は小学生、実年齢に対して学力はマイナス5学年分ほど。(小学6年生なら1年生程度)また、遊びの発達は実年齢に対してマイナス7歳程度であった。(12歳なら5歳程度)
トイレの問題(便失禁など)や細かい手指の動き(箸の使い方)、他者とのコミュニケーション(言語表出と理解力の問題)での問題が多かった。
支援としては、定期的なトイレ誘導や、気持ちの代弁、自身の気持ちを行動で示そうとする為(言葉で伝えるよりも攻撃する、という行動を取ることが殆ど)、その都度静止し、言語化の練習などを多く取り入れていた。
怒った時に以前はすぐに他害行為を行なっていたが、徐々に他害行為を行うまでの時間が伸び、調子が良ければ「やめて。」などの言葉がでるようになった。)

重度知的障害(IQ:20〜39)
言語発達や運動能力の遅れ、学習面ではひらがなの読み書き程度に留まる。
情緒の発達が遅く、身の回りの処理を1人で行うのは難しい。精神年齢は、3〜6歳。

(対象児童は小学生、実年齢に対して発達段階はマイナス8歳程度。2語文を多く話し、3語文は殆ど出ない。また、自身の名前(平仮名)は読める(恐らく読んでいる訳ではなく、形を記憶している)が、他の文字や数字は読めない。排泄はオムツで行い、トイレでの排泄時の清拭は要介助。トイレの成功率は20%ほど。誤食がある為、見守りが必要。
支援としては、トイレの自立を目指し、排尿・排泄コントロールを自身で行えるように定期的なトイレ誘導を行なった。
繰り返し定期誘導を行なった為、生活リズムが定着し、また、この時間になったらトイレに行く、ということを覚えた。それに伴って成功率は50%ほどまで上がった。)

最重度知的障害(IQ: 〜20)
言語の発達はなく、声を出す程度が殆ど。
身の回りの処理が全くできず、親を区別・認識することが難しい。
適切な訓練を受ければ、簡単な単語を言えるケースもある。

(対象児童は小学生、実年齢に対して発達段階は生後6〜16ヶ月ほど。(知能と運動発達が凸凹である為、このような表記となっている)
対象者が発する声は「あー。」のみ。他者の話の理解や他者の区別はしていない。
また食べ物の認識はなく、口に入るサイズのものがあれば全て誤食のリスクがある為、それらのリスクがあるものを配置しない、などの環境の調整が必要。排泄は全てオムツで行う。
支援としては、トイレの自立を目指し、尿意や便意の感覚を掴む為、定期的なトイレ誘導を行なった。
支援をしている期間に、改善が見られることはなかった。)

の4つに分類される。

では、そういった症状に対して実際の現場で家族からはどのような要望があるのかというと
言語理解・表出ができるようになって欲しい
身辺自立(主にトイレと食事)ができるようになって欲しい
の2つが多く挙げられる。

そんな要望をもとに、知的障害を抱える人の社会適応のための対応策として提案するとすれば、重症度にもよるがやはり日常生活動作の獲得を目指すことが多い。
(僕が担当してきた児童の殆どの場合が、言語関連か身辺自立に繋がる支援を行なっている。)

目指すことが多い、と抽象的に表現したのは各児童によって、できることの水準が大きく異なるためだ。
問題点が広範囲である為、各児童のできることを強みとして、強みの強化とできないことへのフォロー、弱みの底上げを必要とする。
身辺自立が全て自立しているのであれば、コミュニケーションや社会性の問題点に着目して、支援すれば良いのでソーシャルスキルトレーニング(SST)は有効だ。

また、個人的な意見ではあるが、将来の見通しを立てることが非常に難しいのが知的障害の特徴だと思っている。
理由としては、繰り返すことで作業自体(単純なものが良い)は獲得できることが多いが、いつどのタイミングで作業を獲得できるようになるかが分からない為、根気強く年単位での関わりが必要になるからだ。
そのため、IQに応じて目指すべき目標を定め、場合によっては障がい者就労などができるかもしれない、と思いながらの支援を続けることになる。


簡潔にまとめると、彼等の問題点である
・全般的な能力の障害
は、まず各児童の能力の水準を見極めたうえで支援する必要があり、また、生活自立度の向上を図っていく必要がある、というのが一般的な対応策である。


今回は知的障害の特徴、対応策について書いた。

次回はADHDの特徴と分析、対応策について書いていこうと思う。

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