ポートランドに学ぶ街づくり#3・地域住民を巻き込む、たった一つの秘訣!
こんにちは、「幸せに働く人や地域づくり」をライフテーマにしているミノです。今回のテーマは「巻き込み方」についてです。
みなさんは、周りを巻き込むことが得意でしょうか?
または、周りの巻き込み方に悩んだことはありますか?
私がなぜ、この力について考えていたかというと、友人の悩みに応えたかったからです。
私の周りには、ふるさとで新しい事業を興そうとする優秀な知人がたくさんいます。
しかし、そんな彼らから周りの住民の方が、なかなか付いてきてくれないんだよね・・・・という悩みを聞きます。
そして私は、そのような相談に応えられずにいました。
一方で、米国ポートランドの街づくりは、住民の参加率が最も高い地域と言われています。90代の米国では、他市での住民の街づくり参加率が11%だったのに対して、ポートランドはその3倍の35%もあるほど(※)
この差はどこから生まれてくるのか。
その気づきを知人に持ち帰れたらと考えたのが、
「住民の巻き込み方」について考え始めた背景です。
もちろん、日本と米国は文化的背景が異なるので、そもそも比較することすらできません。
しかし、住んでいるのは同じ「人」。
普遍的なヒントがあるのではと考え、いろいろな方にお話を伺ったところ、私はその要因の一つを「境界線をなくす」ことだと考えるようになりました。
そのように考えた背景とポートランドの事例をお伝えします。
1.境界線が少ない街づくり!
まず、一つ目は「境界線が少ない街づくり」です。
ポートランドにある施設の特徴として、同じ施設に様々な機能があることが挙げられます。そして、それぞれの空間の境界線があいまいなため、日常生活の中で住民同士が出会う機会が多く生まれています。
例えば、ポートランドの顔、エースホテル。
このロビーラウンジでは、宿泊客はもちろんですが、通行人やコーヒー片手に一休みしたい人が利用しています。
まるで誰もを受け入れる公園のベンチのような存在です。
建築好きな私は、旅先で泊まってもいないのに、現地の有名なホテルロビーに入るのことがよくあります。
しかし、米国を含め他国でもほとんどのホテルは宿泊客以外はお断り。私は毎回、ロビーに迷い込んだ観光客のふりをして、キョロキョロと通り過ぎるぐらいしかできませんでした。
しかしポートランドのエースホテルのロビーラウンジは、ホテルとカフェと公園ベンチが混ざりあったような空間です。お客はもちろん、通りすがりの主婦たちや、学生さえも同様に受け入れる空間を創っています。
創業者はその空気を以下のように説明しています。
「我々は地元に根ざしてビジネスをしている以上、地元の人々を受け入れるのは当然のこと。
インターネット、雑誌、新聞はもちろん、心身ともにくつろげるか内ととびきり美味しいコーヒーショップを用意して、使いたい時はいつでも使ってほしいと想っている。
ホテルはその街を反映する空気であるべきだってそのほうが宿泊者だって、旅の気分を実感できる」
(写真:AceHotelで提供している地元のSTUMPTOWN COFFEE)
それ以外にも、施設の境界線が曖昧になっている場所がたくさんありました。ランドリーとカフェを一緒に提供している「Spin Laundry Lounge(Spin)」
映画館とカフェ等が一緒になっている「Living Room Theaters」など
https://pdx.livingroomtheaters.com/
様々な場所が複数の機能が合体しており、人々が混ざりあうような導線があるのです。
このような仕掛けは、日常生活を過ごしながらも、自分とは異なる価値観やライフスタイルを持つ人達ともふれあう機会を生み出していました。
2, 立場を変える機会があること
二つ目は「立場を変える機会があること」です。
ポートランドは、住民の8割が移住者であり貧困問題や、人種問題も根深いです。
お金がある人もいれば、ない人もいる。
そんな中で、街としての一体感が高いのは、複数の視点や立場を経験できる機会があるからだと感じました。
例えば、People’s copeは、食料品や日用品、園芸品を販売している独立系のスーパーです。一見、普通の地域スーパーと同じなのですが、このお店のが独特な点は、お客さんが従業員としても働ける機会があること。
お客はその中で「店で何が起こっているか」を学び、労働の対価として買い物が割引されます。
そして何よりお店側の視点に立つことで、どれだけの食品が購入され、どれだけが廃棄されるのか。
どれだけの人が好きなものがたくさん買えて、どれだけの人が、今日の夕飯分のお金もないのかなどが見えてきます。
このような参加型の仕組みは、他の組織にもありました。
例えば、お店の純利益の全てを非営利団体に寄付するという、クラフトビール屋、ザ・オレゴンパブリックハウス(The Oregon Public House)。
こちらでも、同じような参加型の制度があります。
従業員も全員ボランティアで、「4時間」の労働に対し「ビール1杯とフード1品」を提供しています。
事前にホームページから連絡をすれば誰でもボランティアとして働くことが可能です。
このようにお店の制度として公開している以外にも、ポートランドには多くのNPO法人があります。しかも、一人あたりのNPO法人数は、全米一。
それらの団体では常にボランティアを募っているため、その中から自身の志向にあった街づくりに参加する事ができます。
こんな風に、立場を変えて街を見る機会が多くあるからこそ、それらが街づくりを自分ごと化できるきっかけになっていきます。
3, 街と企業がシームレス!
最後は、街と企業の境界線をなくし、常に同じ目線を持とうとしていることです。
例えば、ポートランドにある世界的なクリエイティブエージェンシー、Wieden+Kennedyは社会的課題に取り組んでいる3つのNPO組織にスペースを提供しています。
この取組は、決してCSRやパブリックイメージが目的ではなく、オフィスは現実社会のアナロジー(類推)であるべきだ、という彼らの信念に根ざしたものだと伝えています。
代表のJohn C Jayも、あるインタビューで以下のように伝えています。
「W+Kにとってビジネスとカルチャーは切っても切れない関係なのです。だから我々は常に新しいカルチャーが生まれるところ、カルチャーのエネルギーに満ちたところにしか興味が無いのです。
我々は常に社会とシームレスにつながっていなければならないと考えています。」
もちろん、ポートランドのすべての企業が、このような考えであるはずがないですが、ポートランドを牽引するような企業だからこそ、周りの企業に与える影響も大きいのではないでしょうか。
社会と同期して、常に同じ景色をみるようにする。
そのためにオフィス内にも複数の組織をまぜて創っていく。
Wieden+Kennedyは、社会と対面するのではなく、社会を取り込んでいるからこそ、世に受け入れられるようなメッセージを生産・発信していく事ができるのかなと感じました。
まとめ
街のリーダーが、住民を巻き込めないと感じる背景は、
その情報が、住民にとって自分ごと化されていない状況があります。
だからこそ、そのような状況を創らないように、住民たちの生活圏やコミュニティーの境界線をあいまいにすること。そして、立場を超えられる仕組みを用意することは効果的だと思いました。
もちろん、私の滞在はわずか数日であり、まだまだ見えない部分や知識が浅い部分はあると思います。
しかし、お店も企業も、ホテルでも「境界線がない場」を取り入れており、それが参加型の街づくりに貢献していることは手触り感がある気づきです。
そんな気付きを、ぜひ友人に持ち帰ろうと考えていたミノでした。
ではでは、みなさま、今日も素敵な一日を。
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