豊かさとは何か。暮らす場所についての話。

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■豊かさとは何か 

朝起きて、本を読んでいた。 

豊かさとは何かについての本だが、筆者が西ドイツに滞在中、森を通って仕事にでかけたそうだ。 

そこで、中年の男性が、森の中の椅子に寝転んで、ただじっとしている。
夕方、筆者が帰りにその森を通ると、同じ人間が同じようにじっとしている。

なんとなくおかしくて筆者は中年男性に「あなたは一日中、そこで何をしているのか」と尋ねた。

その男性の答えに朝から考えさせられた。

以下、本文を引用する。

「人間は能動的に、なにかに働きかけ、仕事をしているときも、得るものがある。しかし、目的に向かって一生懸命に何かをしているときは、周りにあるものは目に入らない。
こうして何もしていないと、小鳥の声、風のそよぎ、落葉の音、陽の光、そういうものが、黙っていても聞こえ見えてくる。受け身で、自分をカラにして受け取ることもまた豊かだ。
私はこうして時々自然と対話をし、交流して、イメージをいっぱいにして都市に戻る。
自然と共に生きること、支え合い与え合うこと、平和のこと、子孫に残す社会のことなどを、身体でかんじ、自分のものにするのです。」

現代のような、お金やモノにあふれた社会は物質的に見たら豊かではあると思う。

でも豊かさの本質は個人的には違うくて、この男性の言ってることがそうなのだろうと思う。それはどう物事を捉えるかと言った心の豊かさだ。

もちろん何が豊かかと言う答えは人それぞれで違うだろう。

では具体的に何が自分にとっての豊かさなのだろう。

それを考える時、暮らす場所がキーワードであると感じる。

■能登での暮らし

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自分は今石川県の能登半島で暮らしている。

自分にとって能登での暮らしは、豊かだ。

まず自然が豊かだ。

青い海があり、なだらかに続く緑の山々があり、空気は澄んでいる。

そして暮らしの豊かさがある。

能登の豊かな自然は、例えば、はざ干しや海女漁をはじめとする伝統農漁法や、田の神様を祀るあえのことの神事、千枚田と言った独特な景観を生み出してきた。

自然と密接に関わる暮らしの中で、炭焼きや能登杜氏と言った酒造りの技術も継承されて来た。

そして、夏から秋にかけては豊漁や豊作を祈願する祭りが盛んに行われる。

と言ったように、この土地の人々は自然と共生をしている。

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実家は畑をしているが、今の時期はいちごが実り、毎朝たくさんのいちごを食べる。これから夏になるとトマトやピーマン、とうもろこしやスイカなどたくさんの野菜が実る。

採れたての野菜は新鮮で美味しい。そして畑で土に触れ汗を流す、ふとした時の風が心地よく、耳には鳥のさえずりが聞こえ、祖母が畑仕事をしている向こうに海が見える。陽射しが少し眩しい。

そうしたことを感じれることが、自分にとっての豊かさだ。

また、いちごや野菜などをお世話になっている方にあげたりすると、御礼にと肉や魚、お菓子などをいただいたりする。人との交流を通して、物々交換のような文化があり、共有できるものがあると言うことも豊かさの1つだと思う。

それは、その土地ならでの暮らし方を楽しむと言うことでもある。

つまり、豊かさは暮らす場所によって変わってくる。

■暮らす場所が豊かさを決める

少し話は変わるが、以前出会ったおじいさんが、過疎によって住んでいた場所に人がいなくなって金沢市街に息子家族がいるために引っ越した。

おじいさんは、「住み慣れた場所を離れるのはとてもさみしいし、残念だけど、仕方がない」と言う。

それを聞いてとても悲しくなった。

もし自分が能登ではない場所で暮らしていたらどうだっただろうか。

自分の住む地域に住むことができなくなったら自分はどう思うのだろうか。

このまま過疎が進むと、いずれは現実として迎えることになるのかもしれない。

もしくは何らかの理由により住めなくなってしまうかもしれない。

今自分が感じている豊かさは、能登で暮らしているからこそ受け取ることができている。

社会全体を見る時に、お金やモノのために、時間に追われながら健康や家族と過ごす時間をないがしろにしてさえも働かなければいけない時代で、社会には貧困や差別、社会への無責任や無関心が蔓延し、原発や環境問題など様々な問題が容赦なく自分たちに降りかかってくる。

改めて豊かさとは何なのだろう。

今回のnoteを書いている中で、それは自分は何のために生きて、どこに向かうのかと言うことを考えることでもあると思う。

自分が能登で暮らす以上は、やはりこの土地だからできる楽しみ方をしていたいし、本の中で男性が言っていた、自然と共に生きることや支え合い与え合うこと、平和のことや次の世代に残す社会のことなどを、能登での暮らしの中から問いかけていきたい。

お金や物にあふれる暮らしもそれはそれでいい。それでも自分は自分の身の回りにあるものを見つめた暮らしを大切にしていたい。そしてきっと意味をもつのは、もしかしたら住む家や畑とかの土地があること、 自然を感じること、人との関わり合い、次の世代に残すこと、そうした心の捉え方が大事なのだろう。

皆さんにとっての豊かさとは何でしょうか。

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