シンプルに考える子どもの英語習得、まずはこの3ステップ
前の「おうち英語とは何か」という投稿では概念的なことばかり書きましたので、おうち英語は「思ったより面倒」「実践は難しい」という印象になってしまったかもしれません。
今回は、もっとシンプルに考えて、日本の子どもが英語を習得していくための3ステップを検討します。
子どもの英語習得、全体の流れ
子どもの英語の取り組みを無理なく進めていくには、それを導く親があらかじめ流れのイメージを持っておくことが大切です。
※子ども=乳幼児~小学生を想定
「おうち英語」に限らず、子ども向けの英語教材を利用したり、子どもを英語スクールに通わせたりするとき、自分の子どもは今どの段階にあって、次は何を目標にするかという意識があれば、親の不安や迷いがなくなります。
Minnieの超シンプル英語育児では、次の図のように捉えています。
「聞く」「発する」「読む」の3ステップでインプット
上の図で、乳幼児から小学生までの間にやっておきたいことは、①「聞く」②「発する」③「読む」によるインプットです。
これらを通して、英語の「音・リズム」と「ことば」と「文法」を、ただひたすら吸収していきます。
ステップ①「聞く」
まずは、たくさんの英語の音に触れます。
家の中で英語の歌などを「かけ流し」したり、絵本を読み聞かせたり、読み聞かせ音声を聞かせたりします。
音楽は、メロディやリズムが耳に残りやすく、絵本は、歌詞やお話を理解する助けになります。
同時に「楽しむ」活動として、英語の動画を観ます。
これも意味付けの大きな助けになります。
楽しみながら、英語の音とその意味を吸収していきます。
ステップ②「発する」
英語の音に耳が慣れてきたら、その音を真似て発する段階です。
日常的に音を聞いていると、自然に口マネをし始める子もいます。
そうでない場合は、親が何らか働きかけて声に出してみます。
幼児なら、英語の歌を部分的に口ずさんだり、耳に入ってきたおはなしの一部を発してみたりするところから始まります。
文字(ひらがな)を読む前の時期はものすごく貴重です。
日本語にしても英語にしても、ことばの情報はすべて耳から受け取っているので、英語も聞こえた通りに上手に口マネをして、親を驚かせてくれます。
始めた時期や取り組む年齢にかかわらず、発しにくい音が出てきます。その場合は、ピンポイントで、フォニックス用の音声などを使って、母音や子音の音を個別に練習します。個々の音を聞き分けて再現できるようにしていきます。
フォニックス(phonics)とは、聞き馴染んでいる音を、文字に当てはめていく作業です。
「聞く」によるインプットの蓄積が大きければ大きいほど、耳で知っている言葉が多く、類推ができ、文字に当てはめる作業が楽になります。
小学生になってから始める場合は、幼児よりも文字の処理が早いことを利用して、「聞く」と並行して、文字を見ながら「発する」練習を進めることが有効です。
慣れてきたら、易しい絵本やリーダー本を使って、お手本音声を聞いては声に出してみます。これを繰り返し練習し、一人で音読できるようになるまでを目指します。
「発する」練習をすると、「聞く」力が研ぎ澄まされます。
自分で発することができる音は、必ず聞き取れます。聞いた通りに発することができるようになれば、「聞く」力としては完成です。一度完成すると音の聞き取りに困ることはありません(意味の理解は別です。理解力は「読む」で高めていきます)。
「発する」は、そのまま「話す」の準備になります。
日本で英語を「話す」機会は限られますが、「発する」練習は家庭でも進めることができます。
いざ「話す」ことが必要になったとき、「発する」練習で培った力が活かされます。
ステップ③「読む」
「聞く」と「発する」ができるようになると、楽しい「読む」の世界が待っています。
「聞く」と「発する」が育っていれば、英語圏の小学校で使われるようなリーディングの教材も使える状態になります。
子どもが気に入ったリーディング教材やオンラインコンテンツでペースをつかみ、英語でも「読む」ことを習慣化していくことが、上達への近道です。
「話す」について
さて、ここまできて、コミュニケーションに肝心な「話す」はやらないのかと疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
もちろん取り組んでよいのですが、順番として「話す」ことは急ぎません。
話すことそのものを練習しなくても、十分なインプットを重ねていくことで、英語で発想する力、思考する力が育ち、いずれは自然に話せるようになるからです。
「聞く」「発する」「読む」に取り組んでいれば、日本の小学校の英語授業で扱う内容は簡単にクリアできてしまいます。小学校の英語の教科書の内容を先取りする必要はありません。
授業で初めて耳にする内容が出てきたとしても、その場で吸収しておしまいです。
日常的に英語にふれることができるなら、例えば、家族が英語を話したり、学校の授業を英語で受けていたりすれば、「話す」は「発する」と同じくらいのタイミングから始まることでしょう。
しかし、日本語での生活の中では、英語の「話す」は子どもの性質や親の態度に左右されるところであり、「しゃべっている」ように見えても、実際には「発する」の域を出ていない場合がとても多いです。
すぐに英語を使う必要のない小学生に、早い段階から「話す」ことを求め過ぎないことです。インプットで着実に力を蓄えておくことが、将来の「話す」につながります。
「書く」について
「話す」と同様に、英語を「書く」ことも急ぎません。
「書く」ことは、子どもにとっては「聞く」「読む」に比べると負担が大きく、インプットとしては効率の悪い方法です。
「読む」がある程度上達してから取り組むほうが、はるかに早く身に付きます。
また、まずは日本語で、論理立てて文章が作れるようになるまで待つことです。
今のところ小学校の英語授業の内容では「書く」ことはほとんど求められません。しかし、中学校に進めば、嫌でもたくさん「書く」ことになります。中学に進むまでにできる限り「読む」力を伸ばしておく方が無駄がありません。
一方、英検取得のために「書く」を意識する家庭は多いと思います。
英検の3級以上でライティングが課せられます。小学生がこれに取り組むなら、最低限の書き方のルール(spelling、punctuation、composition)だけ身に付けるように練習します。
内容の発想は「聞く」「読む」の蓄積で対応できます(2級くらいまでは)。
自分の意見などを「考えて」書くことが必要になるのは、せいぜい英検準1級くらいからです。それまでは、「書き方のルール」と「聞く」「読む」で培った文の組み立ての力で対応できてしまいます。
(ついでに、英検のスピーキングについても全く同じことが言えます。)
※英検の「書く」については、こちらの記事でも説明していますので、ご興味あれば参照してください。
(目次から飛んでください)
・ ライティングのアイデア出し
・ 英検2級は“高校生レベル”?いいえ、英語自体は“小学生レベル”です
まとめ
子ども(乳幼児~小学生)の英語習得のためにまず取り組むべきは、①「聞く」②「発する」③「読む」によるインプットです。
小学生までの間に、この3ステップで英語のインプットを蓄積しておけば、中学校以降の英語の学び方が根本から変わります。
教科書の内容が聞き取れる、読める、理解できる状態であり、そのうえで語彙や文法を「確認する」ことになります。
「知識」として初めて学んだ語彙や文法で、外国語としての英文を読み解く作業とは全く異なるわけです。
日本語で生活し、日本語で教育を受ける子どもにとっての英語習得は、日常的に英語を使う状況にある場合とは異なります。今回は、特にこの点を踏まえて検討しました。
ふだんの取り組み内容や、教材の使い方を検討する参考になりましたら幸いです。
お読みくださりありがとうございました。
Image source: Vecteezy.com
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