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稲盛和夫さん、松下幸之助さんに学ぶ二泊三日の旅。

こんにちは!レベルフォーデザイン、デザイナーの赤嶺です。
先月、会社の次期リーダー研修(NLC=Next Leaders’ Camp)で京都に行ってきました。L4Dの経営理念やコアバリューにも大きく影響している稲盛和夫さん・松下幸之助さんのライブラリーを訪れたので、そこで学んだことや感じたことをお伝えしていきたいと思います。

1日目:稲盛ライブラリー


〈レベルフォーデザインの経営理念〉
全社員の物心両面の成長と幸福を追求し、デザインの力で社会に貢献する

この経営理念は、稲盛和夫さんの創業した京セラの経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」を参考にしています。

弊社代表の清水は盛和塾に所属し、稲盛さんのもとで仕事に対する考え方や経営を学んできました。そのため、「デザインの力で」という言葉は加えているものの、基本的には京セラで稲盛さんが掲げた理念を生かしてこの経営理念がつくられました。(稲盛さんも、塾生には「この言葉(経営理念)をぜひ使ってください」と呼びかけていたようです)

 また、新卒・中途を問わず入社すると必ず行われる「フィロソフィー研修」では、稲盛さんのご著書『心を高める、経営を伸ばす』を輪読します。
 
このように、日々考え方を学んでいた稲盛さんのライブラリーが京都にある京セラ本社に併設されているということで、そこに代表清水と、次期リーダー研修に参加していた飯田・中田・續田・赤嶺の計5名で訪れました。

そこに写っていたのはただの一人の若者


稲盛ライブラリーを訪れて、まずはじめに感じたこと。
ちょっと恥ずかしい感想なので書くか悩みましたが、

「稲盛さんって実在してたんだ」。

もちろん、実在の人物だと頭では理解していました。ただ、本や清水を通じて聞いていたエピソードや考え方、経営手腕があまりに偉大すぎて、どこか現実味がなかったのかもしれません。
しかしながら、ライブラリーに掲示されていた稲盛さんの青年時代の写真には、ほんとうに普通の、いわゆる"どこにでもいる兄ちゃん"が写っていました。そして、それがすごく衝撃的でした。

新卒で入社した「松風工業」は、当時労働環境が整っているとはいえない状態で、一緒に入社した同期は全員辞めてしまって稲盛さんが一人残されたそうです。自身も辞めて自衛隊へ入ろうと実兄へ手紙を送ったところ、辞める許しが出ませんでした。そんな状況を「それなら研究に没頭しよう」と前向きに捉えて、昼夜を問わず研究に明け暮れた結果、素晴らしい研究成果が出るようになったそうです。

稲盛さんも、もともと特別な人間だったわけではなく、普通のひとりの若者で、ただひたすら真剣に努力を重ねてきただけなんだ」と今まで学んできたことの本質に、ようやく、少しだけ近づいた気がしました。

▼こちらのページに青年期の稲盛さんの写真が掲載されています。


ものごとを成し遂げていく時に、何よりも大切なこと

 
稲盛ライブラリーは5階建てになっており、「総合展示」「技術・経営」「思想」「社会活動」などそれぞれのテーマに沿った展示が行われ、5階には稲盛さんの執務室を模したスペースなどもありました。

執務室のデスク上には、サミュエル・ウルマンの「青春」が。

青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。 
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、
怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、
こう言う様相を青春と言うのだ。 
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。 
歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。

サミュエル・ウルマン「青春」より一部抜粋

京セラ、第二電電(現KDDI)を創業しただけでなく、78歳でJALの再建を無報酬で引き受け、日本のためにと心血を注いで見事復活させた稲盛さん。
『心を高める、経営を伸ばす』や『誰にも負けない努力』などのご著書にも「ものごとを成し遂げていく時には、才能や能力より、熱意や情熱が大切」と繰り返し書かれています。年齢をものともせず、常に前向きに、好奇心を持って、仕事に真剣に生き続けた姿に触れて、その情熱の「熱さ」を体感するとともに、若輩者ながら率直に、ひとりの人間としてかっこいいな、こうありたいなと感じた一日でした。
 


2日目:松下資料館


松下電器(現パナソニック)を創業し、日本を代表する企業の一つにまで成長させた松下幸之助さん。
次期リーダー研修で『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』が課題図書の一つにあったので、ひと通り読んで考え方に触れてはいたものの、あまり詳しいことは知らないまま資料館を訪れました。

入口に飾られているボード「道」


松下幸之助さんと「デザイン」

まず最初に、館長による講話を30分ほど受けました。(松下資料館では講話を事前予約することができます。)事前に申し込んでいたテーマは「リーダーの心得」。ですが、会場に到着し館長の後藤さまにご挨拶すると、「デザイン会社さんならこの話がいいかもしれない」と、急遽プログラムの一部を変えて、テレビやラジオのデザインを持っていった技術者に対する松下さんのエピソードを話してくださいました。

ある技術者が新型ラジオのデザインを松下さんに説明したとき。
松下さんが「これはもっとこうしたほうがええのと違うか」と聞くと、「実は私も試作段階でそう思っていたのですが、上司がこうしろというのでそのようにしました」と。それを聞いた途端に松下さんは「自分がいいと思ったのであれば、なぜ上司を説得しなかったのか。上司を説得する権限はきみにある」と言ったそうです。

ご自身のことを「学がない」と言って(松下さんは十歳で丁稚奉公に出ています)優秀な部下の意見を聞き、集合知で経営をしていた松下さんだからこそ、そして最後まで熱意を注いで製品を開発してきた松下さんだからこその叱咤であると感じました。

これまでの仕事を振り返ったときに、上司やお客さまへ自分が考えていることを常に100%きちんと伝えられていたか」・・・。決してイエスとは言えないな、と己の未熟さを痛感したエピソードでした。

真々庵での自己観照

真々庵(しんしんあん)は、1961年に松下さんが会長に就任した際に、PHPの研究活動を再開するために求めた別邸です。

「真々庵」をイメージした庭園シアター

松下さんは、この真々庵で「自分は今日一日、素直な心であったか」と毎日自己観照をしていたそうです。

素直な心 10ヵ条
第1条「私心にとらわれない」/第2条「耳を傾ける」/第3条「寛容」/第4条「実相が見える」/第5条「道理を知る」/第6条「すべてに学ぶ心」/第7「融通無碍」/第8条「平常心」/第9条「価値を知る」/第10条「広い愛の心」

PHP研究所 ウェブサイトより引用  https://www.php.co.jp/pfc/sunao/contents.php

第1条の「私心にとらわれない」。
人間、生きていれば私利私欲が出てきます。松下さんも「ひとつ私心を引っ込めると、また別のところから私心が出てくる」と仰っていたそうです。だけれども、「私心にとらわれない」と意識することで、"私心にとらわれている自分に気づくことができる"のが大切だということでした。

ファーストリテイリングの柳井さんが松下資料館を訪れた際に「私も同じことをしています」と仰っていたそうです。稲盛さんも著書の『誰にも負けない努力』で、毎日の反省を習慣にしていると書いていました。
稲盛さんも松下さんも柳井さんも、毎日の内省を行うことで己の人格を磨き、私利私欲のない正しい判断をしてきた。こんなに素晴らしい経営者の方々でも毎日反省をしているんだ、いや、だからこそここまでの実績を残されているんだ、と衝撃を受けたのを覚えています。


まとめ:2日間を通して考えたこと


良いリーダーとは

ここで、リーダー観に関わる印象的なエピソードを一つ紹介します。
松下資料館にはたくさんの映像が所蔵されており、その中から自由に選んだものを再生することができます。清水さんから「舞、選んでよ」と言われたので、ぱっと目についた「出鼻をくじくな」を再生しました。

部下からの提案に対して、出鼻をくじくような言動は決してやってはいけない。部下が自ら発案して「こうしようと思うんです」と言ったとき、それに対していきなり「これはいかん」などと言ってはいけない。何か足りないことがあった場合でも、「それはいいな。やってみてくれ。ただこの部分だけ少しこのようにしてみてくれないか」と言う。

松下資料館 所蔵映像より(内容を簡略化して抜粋)

当たり前なようでなかなかできない、すごく重要な視点であると感じました。稲盛さんも松下さんも、誰よりも熱意をもって仕事に取り組んで成果を上げてきた。ものごとを成し遂げるときには、能力よりも才能よりも熱意が大切。だとすると、良いリーダーとは、”部下の熱意を育てることができる人”なのではないか?という仮説が私の中に生まれました。

また、両資料館とも、リーダーをテーマにした展示がありました。判断や責任、人材育成など、リーダーだからこそ重要な事項もあれば「人間として正しいことを正しいままに貫く」「仕事を好きになる」など、すべての社会人に当てはめることのできる普遍的な価値観も書かれていました。

松下資料館「リーダーの心得十ヶ条」

「リーダーとは」以前に、一人の社会人として大切なことをすごくたくさん教えてもらったような気がする二泊三日でしたが、それはそれで良かったんだといま振り返って思いました。まずは一人の社会人として、仕事に真剣に取り組み、人格を磨く。そこをベースにしてすべては成り立っているのだと感じます。


「頑張れ」と稲盛さんと松下さんに言われているような二泊三日


最後に。
冒頭にも書きましたが、京都研修に行くまでは、稲盛さんも松下さんも、あまりに素晴らしい経営者すぎて「自分とはまったく違う人間」というように感じてしまっていたところがありました。

ですが、お二人の生い立ちや若い頃の写真をみて、そして日々内省して人格を磨いていたという事実に触れ、元から素晴らしい才能と人格を持ち合わせていたのではなく、ただただ誠実に一歩一歩、目の前のことに誰よりも真剣に取り組んでいたふつうの一人のひとだったのだ、ということを実感しました。「自分とは違う人間」と切り離すことは、ただの言い訳ですね。「だから自分が同じようにできないのは仕方ない」と心のどこかで思っていた自分に気づかされました。

稲盛さんも、松下さんも、我々と同じ一人の普通の人間。

そのことに、とても勇気づけられたのと同時に、自分も今よりもっと真剣に日々を生きなければならない、と。「頑張れ」と稲盛さんと松下さんに言われているような二泊三日でした。

松下幸之助さんの実物大パネルと

現地に実際に行くって、本当に大切ですね。本を読むだけでは得られないたくさんの学びをいただきました。稲盛さんや松下さんに一歩でも近づけるように、まずは一日の終わりに、その日一日を内省する時間を設けることにした、赤嶺でした。(まずはできるところから)

いずれも素晴らしいライブラリー・資料館なので、お近くに行く際には立ち寄られることを心からおすすめします。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

⚫︎この記事を書いた人
赤嶺 舞(あかみね まい)/  L4D / デザイナー
1994年生まれ、神奈川県出身。企業や地域のブランディングデザインを中心に活動中。ゆくゆくは、大学時代からの学びを生かし、培った力を子どもや教育に還元していきたい。
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