おっさんずラブリターンズ -牧が笑えば世界が幸せ もしくは makiフライエフェクト-
本放送が終わり一週間以上。リターンズ中、そして終了後の感想を読み、その意見の様々さに改めて”おっさんずラブ”の特異さと凄さを感じる。もちろん、全てに目を通したわけではないけれど、ひとりひとりにその人だけの思い入れがあり、それぞれ物語を大切にしているのがわかる。その違いを、”賛否”などという便利な言葉で片付けて欲しくはない。
ポジティブに見えるにせよ、ネガティブに見えるにせよ、ひとつとして同じじゃないくらい、自分だけの”おっさんずラブ”がみんなの中にある。
凄い、凄いよ。そんな作品、後にも先にもないんじゃない!?
* * *
私は、リターンズを見はじめて、自分の中の強き想いに気がついた。
牧が幸せならそれでよし
自分、思った以上にこの5年間、牧凌太を心配していたようだ。
箱推しだけれど、あえて推しを問われれば、圧倒的”春田創一”だと拳をあげて宣言する。
なのに、1月5日。1話やスピンオフ”春田と牧の新婚初夜”を見た私は、久々に会った牧凌太が幸せそうに笑っていたことに、心の底から嬉しかったし安堵した。この4年間、自分はひとえに牧凌太の笑顔を待っていたことに気がついた。
久しぶりゆえ少々ぎこちなく春田に向ける、はにかみの笑みすらナチュラルで幸せいっぱいなのが良い!ガチ喧嘩を春田に仕掛けるのも良い!不満はあっても不安はないって感じ、すごく良い!!
春田を愛する以上に春田に愛されてたことがわかる、つやつやでホワホワな牧凌太最高。目尻の笑い皺なんて、一本一本”幸せでーす”って言っている気さえした。
春田よ、よくやった。君がどれだけ牧に対して、正直な愛情を注いできたのかがわかろうってもんだ。1話早々に”褒めることなんて、ひとつもねえ!”と怒られていたけれど、私だけは春田を胴上げして褒め讃えたかった。
牧君のこと、大事に大事にしてきたんだね。
牧の中で、春田への信頼が揺らぐことは、最後までなかったように感じた。
* * *
そもそも…2018年
なんで、牧は自分を「欠陥だらけ」なんて言うんだろう、と彼の寂しそうな笑みを見るたびにこちらも悲しくなった。
周りが認めるハイスペ男子でありながら、この自己評価の低さどうしたことか。
賢いし、配慮もできるし、見目も麗しい。見たところ、家族もサポーティブに愛情いっぱいに育ててくれた感じがする。それでも埋まらない、彼の中の何か。
それを紐解くことは、やめておく。セクシャリティに起因する…などとわかったように語ることは避けたい。人は多面を持っていて、その行動を作る原因は一つではないはずだから。
ただ、”完璧”に振るまおう”として、そうできてしまう牧だからこそ、自分の足りない部分もまるっと愛してくれる人を欲していたんだろう、というのは想像できる。それを、2018年とLOVE or DEADの春田は全力で受け止めたことも、十分すぎるくらい知っている。だから、心配はしていない…つもりだった。
しかし、幾年月…。
今頃、牧凌太は幸せだろうか。彼は笑って過ごせているだろうか。
ふとした瞬間に、そう思う。大好きな甥っ子ふうふを案ずる、親戚のおばさんのごとし。
そして、4年ぶりに帰ってきたリターンズを見てしみじみ思ったのだ。
牧が幸せならそれでいい。
1話の感想で書いていた。
牧凌太が自分たちの関係を後ろめたく感じなくなること、まずはこれが一番大事。結婚式前夜、子どもの話…まだ、牧の中の不安の火は消えていないことは感じるから、よけいにそう思う。
社会の問題として、制度や偏見の壁は依然としてあるのは十分承知。だけれども、私は、彼らに社会的なメッセージまでは背負わせたくない。彼らが、彼らの価値観で幸せでいてくれたらそれでいいと思っている。なんせ、こちら親戚のおばちゃんのマインドなので。
でも、一方でこうも思っている。
牧が笑えば桶屋が儲かる…。
じゃなくて、牧が笑えば世界は幸せになる。
もしくは、牧が羽ばたいたら(笑顔になったら)、最後に予想もつかない大きな出来事につながるーmikiフライエフェクト…(なんだ、それ)。
牧の幸せを、あたりまえのように願う人が増える。牧が幸せに過ごせるような世界を願う。自分の隣にいる人も、牧と同じように笑えているか考える。そうこうしているうちに、案外世界って変わるんじゃないのかなあ。いや、そんなイージーなって思うけれど、そういうイージーさを私は歓迎したい(茂木健一郎先生からの批判は甘んじて受けるw)
まずは、身近にいるひとりを大切に思うこと。その人が大切に思っている人を大切に思うこと…そんなやり方だって、けっこう変革への力になる思うのだ。
ま、これ、春田創一がやってることなんですけどね。
もちろん、そんなんじゃダメだ!って考える人がいることも大事だ。そう誰かが思った時点で、蝶の羽ばたきが起こっているわけだから。
それも含めて、認めてくれるのが、このドラマの世界観なのだと思う。
* * *
はじめの話に戻る。
私が、牧が幸せならそれでいいと思うように、誰もが自分の中の大切な”おっさんずラブ”があると思う。それだけに、その全ての想いに寄り添いながら作品を作ることは難しかっただろうと想像する。
でも、制作陣は2018年のファンに、極力寄り添うことを選んでくれた。”2018年を超えるのではなく包み込むような作品にする”という貴島Pの言葉を、私はそう受け取った。
いち視聴者の立場でこんなことを言うのもおこがましいが、前回のような”ブーム”やある種のインパクトを狙ったら、というか欲を出したら、おそらく今回のような、春田と牧の日常を覗き込み、彼らの人生をなぞるような話にはなっていなかったんじゃないかな。
だから、”リターンズなんか違う〜”と感じたとしても、願わくば悲しまないでほしい。たまたま今回の切り口がそうだっただけで、それぞれのおっさんずラブもちゃんと存在していると思うから。
春田も牧もドラマを超えて、この世界のどこかで、息をして、ご飯食べて、ケンカしてキスをして…生活しているはず(妄想)。だから、彼らの選ぶ道の正解は、一筋でなくてもいいはず。
何より、このドラマ自体が、多様に解釈できる余地をあえて残してくれている。多勢も無勢もなく、それぞれを大切にしていけるといいよねっていうのがこの物語の真髄だもん。
おっさんずラブ5年目にして、牧強火だったかもと自覚した人のお話でした…。
最終話感想はこちら
エモすぎてキモかったらごめん 感想まとめはこちら
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