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ドラマ「unknown」最終話 感想・反省会 愛を忘れた加賀美圭介が愛を思い出すまでの物語だったんだ

このお話、加賀美圭介の目線で見ると、孤独な少年が優しい嘘にすがった結果の悲劇であることが見えてきます。考察こねくり回してごめんなさい(反省)。美しく哀しく切ない加賀美の今後を思うと、ただただ胸が痛いのです。

1.加賀美目線で振り返るunknown


<両親との突然の別れ>
はじまりは、加賀美圭介5歳の時。
両親と公園に遊びに行った圭介は、スズランの花を見つけます。
きっと大好きな花なのでしょう。
30歳になった今も、彼は部屋にスズランを飾っています。

かわいい花を紅茶に入れたら、きっときっと美味しくなるに違いない。
圭介はポットの中に、刻んだスズランを入れて遊びに行ってしまいます。
しかし、遊びから帰ってくると、大好きな父も母も亡くなっていました。
圭介は、それがスズランの毒によるものだとも知らず、誰からも真相を話されることもなく、まほろば太陽園に引き取られます。

<梅先生との出会い>
園でも、圭介は周囲に馴染めません。
父と母は誰に殺されたんだろう…。
その疑問が消えない圭介は、心の底から楽しいと思うことができなくなっていたのかもしれません。

でも、梅先生だけは、圭介に寄り添ってくれました。
そして、ある日とても大切なことを教えてくれたのです。
「両親を殺したのは、吸血鬼なんだよ」
梅先生にとっては、彼を傷つけないための、苦肉の策の言葉だったかもしれません。
けれど、圭介にとっては一筋差し込んだ光のような、ある種の”希望”だったのだと思います。

家族の中でひとり生き残った彼は、ずっと生きる意味を見出せないでいた。
でも、この時初めて生きる理由ができたのです。
梅先生が悪い吸血鬼を退治してくれる。
その時、僕は、力を貸さなければ。
一緒に戦うんだ!

<吸血鬼の存在を知る>
大人になるにつれ、さすがに、吸血鬼の仕業だ…とは思わなくなっていました。
父母の死の真相を求める加賀美の気持ちは、宙ぶらりんになってしまいます。
ところが、ある日、衝撃の告白をされます。
親友が、”吸血鬼”だったのです。
本当に吸血鬼はいた。
やっぱり、両親を殺したのは吸血鬼。
加賀美の怒りは、狂気へ変わっていきます。
皮肉なことに、その狂気は、彼が生きるための糧となりました。

でも、あくまで加賀美の1番の目的は、吸血鬼を殲滅することではなかったと思うのです。
俺の両親を殺した人、知りませんか?
彼は、親がなぜ死んだのかの答えを、ずっと探し続けていたのだと思います。
25年の間、ずっと。

そして、第一の事件を起こします。

<こころとの出会い>
こころとバディを組む中で、こころが吸血鬼ではないかと疑い始めます。
吸血鬼だと確信を得るほどに、憎しみは募る。
でも、同時に、あたたかな感情が芽生えていることを、加賀美自身は最後まではっきりとは気づけない。

こころが好き。

気づかなかったのは、両親と別れてしまったあの日から、怒りと憎しみ以外の感情を感じなくなっていたから。
異常なまでの悲しさや辛さを感じた時、心をいっさい揺らさない鎧を着ることで、壊れそうになる自分自身を守ろうとするのはよくあること。

そして、こころを殺すことに躊躇してしまったあの日から、彼の計画は狂い始めます。
人間を殺してしまったことに、大いに動揺する加賀美は、
吸血鬼=悪
人間=善
という、極端な思考の持ち主であることがわかります。
一条彪牙は殺人犯ですが、加賀美にとっては人間というだけで「善」になるわけですから。

この潔癖すぎる善悪二元論は、まるで小さな子どもです。
加賀美は、5歳のあの日から心の成長が止まってしまったかのようです。

<最後の晩餐>
加賀美が、晩餐会に来た理由はなんでしょうか。
こころを殺すため、だったら虎松もいるであろう(なんなら、凛とか南十字がいてもおかしくない)場所に来るはずはありません。

私の解釈ですが、
加賀美はただ、こころに会いたかったのだと思います。
なぜ、そんなにも会いたいのか。
彼はまだ、自分の真意に気づかない。

吸血鬼を殺すために会うんだよ。
それ以外の理由、ある?
(違う、君はこころが好きなんだ)

<スズランの悲劇>

探し求めた、「俺の両親を殺した人、知りませんか?」の答え。
あんただよ。

両親を奪った者への復讐が生きる糧だったのに。
この狂気を止める方法は、自分で自分を終わらせること…。


2.感想という考察


いやー、だいぶエモくてすみません。
しかし、このように彼の心理を追っていくと、この手のミステリーには珍しく心の流れの矛盾がほぼないんですよね。
状況の矛盾を排除していくと、心理的な動きは雑になりがちですから。
素晴らしい。

また、加賀美が時折見せるさりげない配慮(虎松にはできなさそうな)も、本当の優しさだったのだろうと思います。
それは、彼が気づいていないこころへの愛情からきていると思うし、
そういう配慮ができるということは、細やかな愛を注がれて育てられてきたのだとわかります。

加賀美は根っからのサイコパスではなくて、そうならざるを得なかった然るべき理由があったわけです。
こういうところも、納得です。

加賀美のこころへの愛情、と言いましたが、
多分その感情は、恋愛よりは思慕に近い気がします。
本来は、お母さんに求めるようなものを、こころの中に見ていたのではないでしょうか。
こころの前の加賀美は、やんちゃで優しい小さな男の子のように見えましたから。

こころの方も、加賀美への態度は母のようでした。
まるで道理も道徳も知らない子を、慈しみたしなめるような…。

加賀美は何しても嫌いにならないよ
これ、恋愛では成り立たない感情のように思えます。
まるで親ですよね。

この辺りの、虎松への感情と加賀美への感情の違いの繊細な演じ分けが、
高畑充希ちゃんすごかった!


加賀美=鏡
こころの鏡になっているのかと思ったけれど、むしろ虎松の鏡なのかもしれないな、と。
両親を亡くして闇堕ちした加賀美と、同じく両親はいなくても首席で警察官になった虎松。
親の死や犯罪の真相が闇の中で苦しんだ共通点はあるけれど、なにが違っていたかと言えば…そう違っているものはない。
ほんの小さなきっかけで、善悪どちら側にも行けてしまう。
それは、誰にでも起こりうることなのだと思います。

ところで、
時に「知らない」ということは、「残酷な事実を知る」ことよりも、苦しみを与えることがあります。
真実がわからないまま、何かを乗り越えるのは、とても大変なことです。

虎松も加賀美も、ある日突然、大切な人が自分のそばからいなくなった悲しみや怒りを、ただ闇雲に乗り越えなければなりませんでした。
加賀美は幼かった分、より困難だったのではないかと思います。

「unknown」
なんでもその真相を知りたくなってしまう。
でも、生きていれば、源治さんが言っていたように「ない答えを探して生きていくしかない」時もある。
そして、暴くことが正義でない時もある

伊織の朝のニュースを見る限り、被害者が吸血鬼であることは、どうやら暴かれていないようです。
加賀美が証言しても信じられていないのか。
加賀美は言わなかったのか…。
後者であって欲しいなと。
加賀美は、こころを…なんなら吸血鬼を最後は守ってくれた。
多分、そういうことなのだと思います。

何もかも暴くのではなく、秘密を秘密のままなんとなく一緒に抱えてあげられる優しさを、自分も持っていたいし、世界も持ってくれるといいな。
このドラマを見て感じました。


3.反省会


…というわけで、
なんとなく「unknown」が残った気もする本作。

虎松と加賀美、単独の秘密の縦軸は矛盾なく本当によくできていると思います。
この二つが交錯する横軸の部分で、ちょっとやりきれなかったところがあったのかな、と。
もとから全く別の事件だったものを、ひょっとして関連してるの?と思わせる公式の策に、自分が溺れただけなのかもしれませんが笑

ずっと、子どもが親を殺すのやだなーという気持ちがあって、加賀美犯人説回避してきたのですが、スズラン毒はすごく納得できるといいますか、悲しくはあるけれども殺意ではなかったので良かったと思えました。

逆に、彪牙は、なにも宗像さんちの子どもまで手にかけなくても〜。
7話が宗像事件回収なんだとしたら、源治さんの言葉からでもいいので、彪牙がだいぶ追い詰められて正気じゃなかった感じを一言ね、付け加えてくれればよかったかな、と。

でも凛さんが出てきたということは、なにか本当は別の真相があったと、今でも思ってます。

個人的に回収されて良かったのは、南十字さん!
ファイナルアンサーで犯人にしちゃったので、南十字の切れた電話の回収欲しかった。
地底人だから、電波が切れやすいところにお住まいなのね?
(ジョンもマンホールにいるのか?地底犬?)

凛も吸血鬼?とか色々予想しましたが、これも暴かれないだけで、本当は人外の方、たくさんいると思っています。
なんなら加賀美も、刺されても毒盛られても、数日経つと”すん”としてるあたり、ただものではないと思ってるんだけど…。

でも、ここは「unknown」はunknownのまま抱えて行こうと思います。

あと、もう庭月カポーが最後まで平和で、「吸血鬼?」とかなってたのが、実に可愛らしかった。
末長く、幸せでいてほしい。

この話、ごちゃごちゃ考えずに、愛を忘れた加賀美圭介が愛を思い出すまでのストーリーとしてみるのが正しいかもしれないな、と思います。
裏主人公は、間違いなく加賀美圭介。

そんなわけで、圧巻の町田啓太劇場堪能しました。
町田くんといえば、”チェリまほ”よりは”花子とアン”が好きだったんだけれど笑。
代表作になりますよね。
自分で自分にアイスピックを向けた時の、うって変わったへっぴり腰。
無邪気と狂気のさじ加減とか、もうしびれました。

推しも褒めておく。
名セッターのごとく、シリアスコメディあらゆる種類のボールを拾いに拾いまくって、いいところにトスあげる。
これ田中圭にしかできない所業ですから。
そして、田中圭をそういうふうに振り切って使いまくるの、あのチームだからできることですよね。

では、unknown最終話考察これにておしまい。
この3ヶ月で、一生分のunknownって単語を打った気がします笑。

長文失礼しました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


夢オチなら加賀美が救われるけど、違うみたい涙 
余興公式見解についてはこちら


気がつけば話数よりたくさん記事を書いてましたw
楽しかったです


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