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ドラマ「だが、情熱はある」第11話 "感情出すな、死ぬぞ"が回収されれた日

何者かになりたかった二人が、何者かになった後のストーリーに入った本作。
自分の居場所を見つけた若林には、怒涛の別れが待っていました。

”会いたい人にもう会えないという絶対的な事実が、会うことの価値を急激に高めた”

若林ターンのキーパーソンは、間違いなく父徳義です。
幼い頃から呪いのように、父から「感情を出すな、死ぬぞ」と言われ続けた正恭。
おかげで、「パスタ」が恥ずかしくて言えない、30代自意識過剰男が出来上がる。

おまけに、徳義は容易に「すごいなー」とは言ってくれない。
正恭の父に対する憎まれ口や反発は、認められたい気持ちの裏返しであることは明白です。
(なんでも「すごいねー」って言っちゃう山ちゃんのお母さんとの対比が、また秀逸なのだけれど)

そんな父が息子を認める。
それは、ドラマチックなきっかけがあったようには描かれません。
いつの間にか、だんだんに、ふと気づいたらお互いを認め合っている。
病気を患った父の病院へ「ただいま」と帰る頃には、あたりまえの親子がそこにいました。
病院に集う若林家の家族は、今までの中で一番平穏で幸せそうに見えました。

子どもの頃の呪いの言葉
「感情を出すな、死ぬぞ」
が、回収されたのは、父のこんな言葉の後。

久々に外出して本屋に来た徳義。
残された時間がそう長くはないことを、口には出さなくても二人は知っている。

若林「親父はさあ、いま、幸せ?」
父「ああ…今は…死にたくないって思うくらい、幸せだな」

思わず涙する正恭に父は言う。
「感情を出すな、死ぬぞ…」
ひどく優しい「死ぬぞ」でした。
でも多分…、きっと、ずっと今までも、優しさだったのだと思います。
不器用な徳義なりの。

もうそれが、呪いの言葉ではなくなった日。

会いたい人にもう会えないという、絶対的な事実が会うということの価値を急激に高めた。
誰と会ったか、と、誰と合ったか。
もうほとんど人生は合う人に会うってことでいいんじゃないかと思った。
誰とでも合う自分じゃないから、合った人に会えるように頑張る

「だが、情熱はある」11話


Amazonでベストセラーになっていました。



ネガティブをつぶすのはポジティブではない、没頭だ

これは、公式HPにある言葉だけれど、まさに没頭という静かな戦いの末に、自らの居場所を作り、呪いを解いた若林正恭。

”もうほとんどの人生は、合う人に会うってことでいいんじゃないか”

この言葉、呪縛が解かれた開放感すら感じました。

でも、1話からの積み残しのあのシーン。
”たりないふたり”のラストライブで倒れた若林が呼び続けた、
「オヤジ〜〜〜ッ!!」
呪縛が解かれたはずの彼。
一体、どんな思いで父を呼んだのか。
最終話の回収を楽しみにしています。


ところでお父さんの、
阪神が負けるところ見れたら、もう、勝ちだよな
という言葉、好きです。


最終話感想はこちら

若林をつくった呪いの言葉についてはこちら

「だが、情熱はある」感想まとめはこちら


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