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光浦靖子『お前より私のほうが繊細だぞ!』

 大学生の頃、MORIOKA TSUTAYAをふらふら歩いて見つけたのが、この文庫本だった。

 1年生の終わりごろだったかもしれない。今から10年くらい前。

 そのころの自分は、とにかく間違うのが怖かった。人間として正しくありたかったし、優しくていい人間でありたいのに、なぜかいつも変な方向に走っていき、すぐ怒ってしまう自分が嫌いだった。

 家もとにかく嫌いで、帰りたくなかった。
 同じサークルの友達や先輩たちと遊んで、日付が変わってから帰ることもよくあった。
 家にいる時間を出来るだけ少なくしたかった。

 ひとりのときはどこかの本屋で時間を潰すこともあった。そんなときに出会ったのが、この一冊。

 なんとなく気になってぱらぱらめくると、ちょうど読んだページには、光浦さんの勢いのいい文章で、思いっきり間違ったことが書いてあった。

 光浦さんのところにきた相談に対して、彼女はあらましを勝手に決めつけて理不尽に怒ったり卑屈になったり、悲しんだりする。
 とんでもない理屈やものすごい剣幕で話を進めるものだから圧倒されるし、光浦さんの独特の感性にクスッときてしまう。



 ふと、「あれ?間違ってもいいのかも?」と思った。

 だって、なんだかおもしろい。


 彼女のとんでも理論から相談にただのるだけでは生まれない何かが生まれていて、わたしはこの本が大好きだ。

 誰かにも読んでほしくて、いったんお店に並べてみたけれど、やっぱり自分にとって必要な一冊だと確信して、持って帰ってきてしまった。

 機会があったら読んでみてほしい。
 読んだ人がどう思うかはわからないけれど、あのころ、今より頑固だったわたしの頭をぶん殴ってネジをとばして、少しだけ考え方をゆるくしてくれた大切な一冊だ。


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