ニュージーランド隔離生活4日目

前回からの続き。

2020年12月20日(日)、晴れ

 朝、8時過ぎに目が覚める。湯を沸かしコーヒーを入れているところに、朝食が運ばれてくる。いつもの9時過ぎよりちょっと早めだ。自分の部屋は最上階だからいつも一番最後かと思っていたが、どうやらそういうわけでもなさそうだ。それか一時的に滞在している人が少ないかのどちらかだろう。この日はその後も比較的各食早く運ばれてきた。

 朝食は滞在中初めてのキッシュで、こういう変化がつくのも悪くないと思い平らげた。フルーツはりんごだけ食べてみかんは冷蔵庫へ。

 朝食後、ベッドでゴロゴロしながらyoutubeで最近ハマっているトゥルルさまぁ~ずを見ていると、館内放送が入る。どうやら先日のPCR検査で陽性が出たらしく、これからホテル全体の消毒に入るとのことで、これは夕方ごろまで費やして行うとのこと。タバコを吸いに出るタイミングを逃したが仕方がない。あびる優がカワイイので我慢する。

 前々から気づいてはいたが、午前中というのは意外と短く、あっという間に昼になる。朝5時ぐらいから起床して活動していれば午前中と午後と同じ様な時間配分で過ごせるのかもしれないが、なかなかそうもいかないのが現実である。

 そんな感じでまたあっという間に昼食の時間になる。今日は揚げた豆腐を豆板醤かなんかで炒めたもので、似非麻婆豆腐とでも言おうか。トロみのある汁はないがなにか汁的なものが白飯を浸しているのは確かだ。昨日が昼にチキンの揚げたもの、夜にツナのグリルしたデカイやつとかなりタンパク質寄りなメニューを選んでしまい胃の調子が悪かったので、やはり白飯と豆腐など食べ慣れたものが出ると嬉しい。普段あまり肉は好んで食べず、魚は好きで外食した際などはよく食べるが、自炊するとしたら野菜だけでどうにかすることが多い。だからかどうかはわからないが、よく痩せすぎだと人から心配される。しかし、物心ついたときから太っていたという経験が皆無なため、自分は恐らくこれが適正体重なのだろうと勝手に思っている。身長164cm、体重48kg前後、この隔離生活のおかげで少しは増えているかもしれないが、体重計が無いので測りようが無い。

 昼食を終えしばらくギターを弾いた後、まだ夕食まで時間もあるので風呂に浸かることにする。10階と言えど水の出はかなり良いほうなので、10分もしないうちに湯が張れる。最初は熱めに入れるがそのうち体温と同じぐらいまで冷めるので、ゆっくり浸かっていると彼女から電話がかかってくる。昨晩も電話をかけたのだが間が悪く、どうやら色々やることがあったらしく邪険にされたので、仕事もしていることだし気を遣って今日は一度も連絡を取っていなかったのだが、向こうから電話をかけてきたということは多少はそのことを自覚して心配していたのかもしれない。

 小一時間ほど湯船に浸かりながら電話をしていると、また館内放送があり、明日は早朝6:45〜10:00の間にホテルを出る人たちがいるのでロビーが閉じるとのこと。またしばらく電話をしていると、開けっ放しにしたバスルームのドアのすぐ側の部屋のドアの外がまた騒がしくなる。いつもなら19時過ぎてから夕食だが、今日はまだ18時半だ。運ばれてくる飯はいつも大体半分ぐらい冷めているのだけれど、このまま風呂に浸かって冷え切った飯を食うのも嫌なので電話を切り上げシャワーを浴びているとドアがノックされる。とりあえずシャワーを終えて夕食を回収する。今晩はサワラかなにかをグリルしたものに、トマトとチーズのソースが付いているものだ。昨晩のツナがっつりは食べきるのにだいぶ苦労したが、こういう淡白な魚は食べ疲れしないのでいい。

 夕食を終えてコーヒーを飲み、ようやく本日1本目のタバコを吸いに外へ出る。21時前だというのに、この時期のニュージーランドはまだ明るい。喫煙所は一段高くなっているのでフェンス越しの通りが見えるが、明かりの付いたデイリー、向かいのビルの上を羽ばたいている数匹のコウモリ、まばらな歩行者の往来、BNZのオフィス、別にこの場所にあって当たり前のものだけれど、あのフェンスを隔てただけでそれがこちら側からしたら非日常になるという現実を、改めて強く実感した。窓も開かない部屋で日がな一日中過ごしていると、せわしなく飛んでいるコウモリですら何か面白いものに思えてくる。歩いて30秒の通りの向こうのデイリーも、ものすごく遠くて意味の無いものに思えてくる。目に見えているのに、触れることができないものがある。こんな感覚を経験することは、たとえ服役したとしても無いだろうと思う。この距離ですら分断を感じるし、いやこの距離だからこそ分断を感じるのかもしれないけど、世界は今物理的に、どの時代と同じぐらいまでに隔てられてしまっているのだろうか。自分が日本からアフリカまで旅をして戻ってきたような時代、状況には恐らくもうそう簡単には戻らないだろう。ニュージーランドのようにコロナを抑え込む国々と、日本のようにwithコロナでやっている国々はこのウィルスが完全に駆逐されない限り、以前のように往来が自由になることはないと思う。そんなことを考えているうちにタバコがフィルターのところまで燃えてしまう。

 タバコも吸い終わってしまったことなので、部屋に戻って寝る準備をする。ベッドに横になりyoutubeでトゥルルさまぁ~ずを流しっぱなしにしながら就寝。かしこ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?