ニュージーランド隔離生活0日目〜その2〜

 前回からのつづき。

帰国後

 無事日本からニュージーランドはオークランドへ到着してまず、機内でしばらく待たされた。その後も同じような感じで、ちょっと進んでは列になって待たされ、というのを何度か繰り返した後ようやっとヘルスチェックがはじまる。ここではいくつかの簡単な質問と、検温をするのみにとどまる。自分の担当だった人は軽い感じのおじさんで”(2週間も隔離があるけど)シャンプー十分に持ってる?”などと冗談を交えて和ませてくれた(自分の髪の毛はは尻まで伸びている)。

 このヘルスチェックが済んだ後、イミグレを通ってパスポートにスタンプを押してもらいようやく入国ができる。自分はプリントアウトしたビザを見せてすぐに済んだ。その後、預け荷物をピックアップしてそれらの検疫とX線のチェック、ここまではいつもと一緒だ。それらが済んでようやくミーティングエリアに出ることができるが、ここまで不要な人とまったく接触せずに来ている。このエリアにもいつものように帰国者を待っている一般人は一人としていないし、ここにくるまでのすべての店舗なども閉まっていて、接触したのは各セクションを担当していた数えるほどの人数だろう。その際も絶対にアクリル板越しか、2mの距離を空けてである。また、ここから更に用意されたバスに乗って隔離期間を過ごすホテルへ案内されるのだが、ホテルも隔離専用になっているためフェンスで囲われているので、まったくもって市中の一般人と接触する機会が無い。到着してからここまでのこうした管理の徹底ぶりには心底驚いた。というか、ここまでやらないと恐らくこれだけ抑え込むことは不可能なのだろうとも思う。

ホテル到着後

 空港から30分弱で、オークランドCBDのホテルへ到着した。

 事前に情報がなかったので、正直どんなみすぼらしい狭い施設へ連れて行かれて閉じ込められるのだろう、とナーバスになっていたのだが、着いた先はそんな心配を吹き飛ばすほどの高級ホテルだった。街の一番いいところに建っているが、恐らくこんなご時世に誰も旅行には来ないということで隔離施設として利用されているのだろう。

 バスから順番に降りてまた必要な手続きを行っていく。

 まず、ロビーを通過してボールルームへ通され、入った側のデスクで再度のヘルスチェックと隔離期間終了後の予定などについての質問を受ける。それが済むとその向かいのデスクで国防軍の人から連絡先などについて質問や隔離期間の費用の免除についての案内を受けて、隔離期間中の案内パンフレットを受け取る。simカードが必要かどうかも聞かれるのでこの時点で購入できるが、自分はすでに有効なものをもっていたので断った。

 それらが済むと今度はロビーで、次の日までの食事のメニューの選択とデポジットの支払いをする。

 ちなみに、ニュージーランドの2週間の隔離は8月頃までは政府が費用を負担していたが、それ以降は一定の条件を満たしていない限り自費となっており、一人あたり3100NZD(2020年12月のレートでおよそ230,000円ほど)かかる。この費用を支払う義務があるかどうかをチェックするフォームもあり、自分は本来支払わなければならなかったのだが、先述の理由(身内の病気)での一時帰国であることとその証明ができれば免除になる場合があるとのことだったので、その申請をしたところ無事に通った。

 これらの手続きをが終わってようやく部屋へ行ってゆっくりすることができる。事前に説明を受けるのだが、エレベーターも一度に乗っていい人数は、子連れの家族などを除けば一人までだ。

 自分の部屋はホテル最上階の10階で、恐らくこのホテルでは最もリーズナブルな部屋なのだろうが、キングサイズのベッド、デスク、一人がけ用ソファとコーヒーテーブル、ミニバー、クローゼット、バスタブとシャワー、大型の壁掛けテレビなどが揃っており、普段から吝嗇家の自分としてはこれまでの人生で泊まったことの無いような部屋のため、落ち着かない。

 部屋に辿り着いた時点ですでに午後3時を回っていたのでこの日はランチを取りそこねたのだが、とりあえずシャワーを浴びて、受け入れ中で立入禁止のエントランスのロックが解けるのを待ってからタバコを吸いに出た。部屋の窓は開けることができないため、外の空気を吸うのにはホテルエントランスの車止めのところまで下りてくるしかないのだが、ここに出入りするのにも待機している国防軍の人に自分の部屋番号を伝えなければならない。運動ができるのも自室かこのエリアしかないので、自分が下りていった夕方5時頃には皆この幅30メートル奥行き15メートルほどの狭いエリアを流れるプールみたいにぐるぐる歩いてワークアウトしていた。

 部屋に戻って、不用意に部屋から出ることも許されているわけではないので、帰国してとりあえず落ち着いた旨を日本の家族や友人などに連絡しながらゆっくりしていると備え付けの電話が鳴った。なにかと思って出れば、そろそろ担当者が取りに行くから明後日以降の食事のメニューを決めてチェックを入れた紙を部屋の前に置いといてね、とのことだった。そんな書類もあったと思って先程到着時に受け取った書類から取り出し、メニューを選ぶ。あまり食べたいものはないが、とりあえず米と一緒に出てくるものを中心に選ぶ。それを済ませてしばらく他の書類に目を通しているうちに、廊下のほうがが慌ただしそうになって自分のドアもノックされ、夕食が運ばれてきた。これももちろん部屋まで誰かが入ってくるわけではなく、大きめの紙袋に入れられて部屋の前に置かれているだけである。受け取って中身を開けると、なんのことは無いマカロニチーズ、チャバッタ、フルーツ、ボトルの水とオレンジジュースが入れられていたので、ミニバーに備えてある食器を必要に応じて使って食べる。この晩は昼を逃したこともありチャバッタだけ残してあとは食べきったが、それでも自分が普段食べる倍の量ぐらいのものがこれから毎食運ばれてくると思うと、吝嗇家の部分が出てきてもったいない気持ちになってくる。いくら出されたものは基本的にすべて食べきることをポリシーとしている自分でも、さすがに2週間は無理だろう。先程メニューの希望を出した際、欲張ってデザートにチェックを入れなくてよかった、と思った。

 夕食後、仕事の終わった彼女としばらく電話をして帰国前後の流れなどを報告し、夜9時半も回る頃には外も暗くなってビル群は夜景に変わっていた。普通の旅行であれば外へ繰り出してビールでも飲めてこんないい部屋で、なんて思ったりもしたが別に2週間の我慢である。そしていい部屋なのには変わりがない。適度に体を動かして普段できないことをまとめてやるのにはいい機会だ、なんてことを思いながら11時前には眠りについた。かしこ。

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