見出し画像

認知革命として読む萩尾望都の『A-A'』

最近『サピエンス全史』を読んでいて、(ええ、全編カラーの漫画版です。原本は難しすぎる。。。) ホモ・サピエンスが他の人類と比べて飛躍的に進化した要因として、フィクション (虚構) を創り、そしてそれを信じることができる能力が挙げられると知りました。

この事を知ってから、認知革命をテーマに物語を描いたら面白そう。。と考えていたところ、私の一番尊敬する萩尾望都大先生の一角獣シリーズ作品『A-A'』って、ある意味で認知革命がテーマでは?!と思いました。

私はこの物語は、感情の起伏に乏しい主人公が愛に気づき、他人に対して心を開くようになる物語と認識しています。

ここで愛に気づくというのは、 "愛" というフィクションを信じることだと思ったのです。


主人公のアディ (アデラド・リー) は、一角獣種という遺伝変異種の人間です。この種は統計やコンピュータの扱いに長けている一方で、感情を持たないと考えられていました。

しかしアディは、子供の頃に大好きなポニーが事故で死んだ時、生まれて初めて涙します。アディはそのポニーに対して確かな愛情を持っていましたが、その時はまだ認識することが出来ずにいました。

その記憶を心の奥底に持ちながらアディは成長し、一角獣種特有の性格のせいで周りに感情を持たないと勘違いされることもあります。そんな中でも、アディのことを気遣ってくれるレグに次第に心を開くようになります。

互いの肉体の死、クローン、記憶の喪失という複数の要素が絡む出来事に遭遇しながら、アディは子供の頃のポニーが死んだ時に抱いた感情と、レグに抱く感情の共通点に気がつきます。そしてそれが "愛" だと気づいた時、彼女は2度目の涙を流します。

この瞬間が "愛" を認知した、アディの認知革命ではないかと思ったのです。


認知をすることでホモ・サピエンスは大きな進化を遂げました。そしてアディの愛の認知によって一角獣種にも認知革命が起こり、きっとこれから土星に帝国を築くのかも。

いい作品だぁ。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?