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【第72回】「夏」と「冬」で描く『ミッドサマー』のようなカルトスリラー『サード・デイ ~祝祭の孤島~』ワンカット?の「秋」も発見

【海外ドラマファンのためのマガジン第72回】

HBOの新作スリラードラマ『サード・デイ~祝祭の孤島~』全6話を鑑賞しました。

ロンドンの近くにあるオシー島が舞台になっているサスペンスで、今年日本でも大ヒットした映画『ミッドサマー』の趣をもったカルトな集落の物語です。

ホラーと呼んでしまうほど怖くはないのですが、ケルトの宗教儀式として、生け贄が捧げられる描写があるので(内臓など)苦手な方はご注意を!(ミッドサマーよりは軽いです)

『ミッドサマー』は、カラフルな色彩と、映像の加工が印象的で不気味さを増しているのですが、『サード・デイ』も映像にこだわっています。

あえて川や空の色にフィルターをかけて、色彩の調整をしている映像が独特です。
特に森の中では、水彩画のような色彩を強調して怪しい力がある感じ、または怪しい薬をやってトリップしている感じを表現していきます。

ジュード・ロウが演じている主人公のサムは、精神が不安定な状態なので、彼が見ているこの怪しい映像が、「幻想なのか、現実なのか?」と、視聴者も判断しづらいのです。

前半の3話は、特にサムの登場率が高いのですが、彼の精神が安定しないからなのか、祭りに参加していると思ったら、次の場面では森の中にいたりします。

この状態は島の魔力なのか、サムの精神状態なのか、飲み物に何か薬を入れられているのか、視聴者もわけが分からなくなるという、物語の非日常性に引き込んでいく力が強いドラマです。

後半の3話は、黒人女性のヘレン(ナオミ・ハリス)と娘のエリーとタルーラが主人公。

考古学好きの娘エリーの誕生日プレゼントとして、ケルト文化の残る島にロンドンから旅行にくるのですが、ネット予約したはずのコテージでは、宿泊を拒否されてしまいます。

しかも、島の中では住民がもめていてなんだか変な雰囲気。
普通だったら、怒りを秘めながらも、「不気味だから帰ろう」となると思うのですが、ヘレンは粘るんです。

「絶対に島に泊まってやるからな」と捨て台詞まではくので、「いやいや、娘たちの安全を考えたら帰った方がいいのでは?」とツッコミたくなるのですが、ヘレンには島にこだわる理由があったんです。

素直にドラマを見ていると第5話のラストで衝撃を受けます。

前半の3話は「夏」で、後半の3話が「冬」と二部構成になっているのですが、前半と後半が見事に連携していました。

ちなみに「秋」という12時間近くのライブストリーミングが放送されたらしいのです。なんとワンカットで撮影しているのだとか。ドラマの「夏」と「冬」の間のできごとを描いています。

冒頭部分をHBOのyoutubeで発見しました。

ジュード・ロウも出演しています。12時間ワンカットは、本当にワンカットだとしたらドラマ&映画史上最長の可能性もありますね。

ドラマの撮影は、実際にあるオシー島で行われたのですが、このオシー島と本土をつなぐ一本道は、潮が満ちると海に沈んでしまうので、本土に帰れなくなってしまうのです。

「あと2時間で道が沈むから早くかえりなさい」と島の住民に言われても、何かしら気になることがあったり、誰かの捜索をしたりして間に合わず、主人公たちは帰る道をなくしてしまいます。

「間に合うと思ったのに間に合わない」というようなありがちな時間の感覚が、非日常な島での出来事にリアルな状態を持ち込み、密室感を演出してサスペンスを盛り上げていきます。

孤立した島で起こる、カルト宗教の悲劇。
『ミッドサマー』にハマった人はぜひ。


スカイ・スタジオ、プランBエンターテインメント、パンチドランク共同制作



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