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【第62回】日本のドラマ『麒麟がくる』が面白い オリジナル脚本の重要性

【海外ドラマファンのためのマガジン第62回】

海外ドラマファンのためのマガジンですが、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』について、少し書きたいと思います。

『麒麟がくる』は、本能寺の変で織田信長を倒した明智光秀が主人公です。
今まで光秀は、反逆者というイメージが多かったように思います。

今回は、今までの光秀像を打ち破る新たな明智光秀を描こうとしています。

そもそも、明智光秀は、ほとんど資料が残っていない武将なのです。

歴史上の資料に登場したのは、足利義昭が第15代将軍になった1568年頃のこと。義昭に仕えながら、将軍の上洛に協力した織田信長との交渉役として働いていたという記述があるようです。

ちょうど、今放送しているあたりから歴史上に名前が登場しました。

つまり、それまでに何をしていたかが、あまり分かっていないのです。
フィクションで作り上げるのは大変ですが、想像力と創造力が最大限に刺激される作業だと思います。

光秀は実在した人物ですから、大枠で何をしたかと言うのは分かっている。
歴史上のクーデターともいうべき本能寺の変をおこした人です。

その人物に何があって、どういう心境で信長を倒したのか、これを創造できるって、脚本家冥利につきるんじゃないでしょうか。

Netflixの『ザ・クラウン』という海外ドラマでは、イギリスのエリザベス女王の歴史をドラマ化していますが、即位なさった1952年からの物語なので、資料もある程度豊富に残っています。

それでもこの事件の時にどんな心境だったとか、そういう個人的な部分は想像で描かれています。

これが、違和感なく視聴でき、女王としての苦悩や、人間としての悩みなど、王室という特別な存在の人間でなければ分からない心情を描いているすばらしい脚本なのです。

明智光秀の場合、1582年に亡くなっていますから、資料などないにも等しい。光秀を主役にしてドラマ化するということは、かなり大変だと想像します。

しかも、なぜ本能寺の変をおこしたのかという疑問は、歴史上でも興味深い謎の一つで、この答をドラマで描かねばならず、注目されているだけに期待も大きいです。

そこに挑戦しているスタッフみなさんは、チャレンジャーだと思うし、原作ものが多い日本のドラマ界で、オリジナル脚本で歴史上の人物を、しかも資料の少ない光秀を描くというのは、TV界でも歴史的な挑戦なんじゃないかなと思っています。

やはり、オリジナル脚本で描いたドラマは、見ている視聴者の方も刺激をもらえます。放送終了後に、さまざまな意見が飛び交うのも、感性を刺激されているからなのではないでしょうか。

しかも、今回の『麒麟がくる』で素晴らしい着眼点だなと思うのは、光秀や信長といった武将だけでなく、当時の市井の人々のことを描いていることです。

歴史は、武将たちのものだけではなく、資料には絶対に残らない名もなき市民たちも、戦ばかりの世の中を生き抜いてきたはずなんです。

SNS上では、あまり評判が良くないようですが、私は門脇麦さんが演じている駒という人物が、キーパーソンだと思っています。

戦争ばかりの世の中で、平和を望んでいる一般市民の駒が、明智光秀をどのように評価していくのか、その視点に注目しています。





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