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【第11回】Netflixドラマ『ハリウッド』を見る前に知っておきたいティンセルタウンのこと

【海外ドラマファンのためのマガジン第11回】

2018年、Netflix5年間3億ドルという破格の契約を結んだクリエイターのライアン・マーフィーの新作ドラマ『ハリウッド』が配信中です。

ライアン・マーフィーと共に『glee/グリー』『ザ・ポリティシャン』などのヒット作を生み出した脚本家のイアン・ブレナン全7エピソードを書き下ろしています。

舞台は1950年前後のティンセルタウンとも呼ばれるハリウッド。
映画黄金期に、一つの映画が作りあげられる過程を描く物語です。

当時の雰囲気を再現した衣装音楽を駆使し、テンポよい展開でとても見やすいドラマなのですが、アメリカの映画史を知っておくと、より物語の内容が理解できると思ったので、ドラマに必要なポイントを書き起こしておきます。

ハリウッド黄金期の映画製作 

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1920年代後半から1930年代にかけて、無声映画から完全にトーキーへ移行していくと、映画はますます庶民の娯楽になっていきました。
男女の恋愛ものや、ギャング映画など、観客を刺激する映画がヒットしていきます。

当時のアメリカは、今よりもさらに完全なる白人社会
カトリックの思想が世の中を支配している時代です。
映画の世界も同じで、セックスや暴力の描写などを、カトリックの思想に基づいて自主規制しようという動きが現れます。
これがドラマの中にも登場するヘイズ・コードというものです。

ヘイズ・コードはカトリックの思想により作られたものなので、聖職者をバカにする描写もダメで、白人と黒人の恋愛や、ゲイの描写などももちろんタブーでした。

一般社会でもそれは同じで、ゲイだとバレてしまったら、暴漢に襲われてしまうような世の中です。
なので、カミングアウトなどできるはずもありませんし、白人と黒人のカップルたちも、身の危険を感じながら過ごすことになります。

ところが、映画産業の発展により、全米、さらにはヨーロッパから夢と才能を持った若者たちが集まるようになり、ハリウッドの中にも多様な考え方が生まれ始めます。

しかし、クリエイターたちは多種多様な考え方を持っていても、映画を製作する映画会社側は、完全なる白人社会プラス男社会
「新たな発想」を嫌い、昔ながらのカトリック思想に凝り固まった人たちが決定権をもっていて、映画会社の上層部を支配しています。

黒人青年が書き下ろした『ペグ』を映画化

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このような時代背景の中でドラマが展開するのですが、新たな発想を実現しようとする若者たちが提案するのが、「ペグ」という映画なんです。
実在したペグ・エントウィスルという女優が、24歳という若さでハリウッドサインHの上から飛び降り自殺したという実話を映画化しようという企画。

この「ペグ」の脚本を執筆したのが黒人脚本家アーチー(ジェレミー・ポープ)なのですが、彼はゲイでもあります。
そして、この脚本を監督する青年レイモンド(ダレン・クリス)は、母親がフィリピン人でアジア系と白人のハーフなのです。
レイモンドは、黒人新人女優カミール(ローラ・ハリアー)と交際しています。

ハリウッド黄金期では、どんなに才能があっても表舞台に立てなかったマイノリティの人々が主人公。

だんだんライアン・マーフィーっぽくなってきましたね。

ここに、退役軍人のジャック(デヴィッド・コレンスウェット)が俳優を目指すというストーリーが加わります。
彼は生活のためにセックス・ワーカーをしてお金を稼ぐのですが、顧客に映画関係者がいるのでキャスティング・カウチ(セックスの見返りに役をもらうこと)の問題も描かれていきます。

このドラマの中には、フィクションとノンフィクション混在していて、見ていて私も少し混乱しました。
キャスティング・カウチの問題で言えば、主人公のジャックは、創作キャラクターですが、ジャックのライバルとなるロック・ハドソンは実在した俳優で、そのマネージャのヘンリーも実在の人物です。

ロックとヘンリーの関係性も実際にドラマの中で描かれたようなものだったと言われています。長くなってしまったので、その辺のフィクションとノンフィクションの境界線は別の記事にしてアップすることにしますね。


※記事内の写真は、無料フォトサイトACからダウンロードしたものです。













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