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新しいマインドフルネス認知療法(MBCT-L)を受講して【前編】

はじめに

事務局の宮本です。
11月から参加してたMBCT for Life(以下MBCT-L)の8週間コースが昨日で終わりました。

先生は前回ご紹介したLiz先生で、時間帯は毎週水曜日のイギリス時間の10:00、日本時間の19:00という、仕事終わりで無理なく受けられるとてもいい時間のコースでした。今回は、この受講を終えての雑感です。

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Liz先生(Oxford Mindfulness Center HPより

※なお、本稿ではMBCT for Life(以下MBCT-L)を「新しいマインドフルネス認知療法」と訳し、MBCT for Depression(以下MBCT-D)と「マインドルフネス認知療法」と表記します(定訳)。

本稿のポイント(前編〜後編)

①MBCT-Lとは、ウェルビーイングの向上を目的に、一般の人に向けて開発されたプログラム(雛形はうつ再発予防のためのMBCT-D。さらにその雛形は、MBSR(マインドフルネスストレス低減法))
②MBCT-L、MBCT-D、MBSR、MBCLなど様々なコースがあるが、どれも登り口の違い、目指すところは同じ。
③8週間プログラムは、その時々の自分の成長過程に応じて、毎回新たな気付きがある。

MBCT-L(新しいマインドフルネス認知療法)とは?どのようなコースなのか

MBCT-Lは、MBCT-D(うつ再発予防のための従来のマインドフルネス認知療法)、ひいてはMBSRの基本フォーマットを引き継いでおり、基本的に以下のような進め方となります。

①講師1名(2名の場合もある)、参加者は10数名(今回は講師1名、受講者12名くらい。イギリス、スペイン、香港、中国、日本と様々な国から参加していました)。
②1回あたり2時間、週1回で合計8回(プラスPractice Day)、講師のファシリテートのもとグループでクラスをおこなう。
③クラスの内容は、瞑想を中心とする気づきの練習、認知療法的なワーク。
④各自、クラスとクラスの間は、45分から1時間程度、ガイド音源を用いた自主的な瞑想練習が求められ、毎回クラスで、その1週間の練習体験について振り返りを行う。

このような構成のもとで受講を進め、体験的に、認知のあり方を変えていくトレーニングになります。一つ重要なことは、これは治療行為ではなく、あくまで講師の指導の元、自分で体験的に(⇔知識的に)ものの見方、感じ方について新しいあり方を得ていくものだということです。

MBCT-LとMBCTの違いは?

さて、それでは、MBCT-LはMBCT-D(うつ再発予防のための従来のマインドフルネス認知療法)と何が違うのでしょうか。

まず、クラスの対象となる人について、MBCT-Dがうつの再発予防を目的とし、うつの経験がある人を主に対象として開発された経緯があります(これについてはOxford Mindfulness CenterのKuyken博士の講演が参考になるかと思います)。同時に、実際には一般の方にとっては、うつの予防という観点から学ぶところの多いプログラムと言えます。一方、MBCT-Lは、一般の人(必ずしもうつを経験した人ではない人)が、ストレスに対処し、幸福度を向上させていくところに主眼が置かれています。

以下のように、人口の全体の底上げをするようなイメージで語られます。縦軸は人口に占めるパーセンテージ、左右は精神的な状態(左は気分が落ち込んでいる人、右側は元気な人)です。つまり、山が左にあるほど、社会全体でうつっぽい人が多く、山が右にあるほど精神的に元気な人が多い、この山を左から右に移そう、ということです。

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そして、実際のプログラムにおける大きな違いは、コンパッション(※)の取り扱い方です。

(※ コンパッションは、苦しみに寄り添う心という意味で、日本語に訳しづらい概念ですが、本稿では、やさしさ、という言葉に置き換えて読み進めていただくことでも結構かと思います。以下の慈悲の瞑想もコンパッションとはややずれますが、大枠でコンパッション、やさしさの練習の一環として読み進めて下さい)

このコンパッションのワークは、MBCT-Dの開発の過程で議論になり、結局MBCT-Dには含まれなかったと言われています。例えば、MBSRでは慈悲の瞑想と呼ばれるもの(またはそれに類する瞑想)をコース中に行うことがありますが、MBCT-Dにはそのようなプラクティスがありません。

この慈悲の瞑想というのは、自分が好意的な感情を抱いている人、自分が苦手と思う人、そして自分 自身に対し、その人達の幸福を願うというようイメージを用いる練習です。この練習においては、自分が苦手と思う人や自分に対して、その幸福を願うのが難しい、という反応を示す受講者の方が結構います。そのときに、うつの経験がある人にとっては、それが、自分を過度に責めるきっかけになる可能性があるということで、コンパッションについては表立ってトレーニングに組み込まず、講師の態度で表現するものとされています。

一方、MBCT-Lでは、明示的にこのあたりが含まれる練習が組み込まれています。具体的には、身の回りにある出来事で感謝の対象となるものを1日10個思い浮かべる練習や、他者の苦しみにやさしく願いをかけていくイメージの練習、他者に親切な行動を試みる練習などです。

MBCT-D、MBCT-L、MBSRのどれを受講すべきか?

MBSRも含めた内容の違いについては機会を改めて書きたいと思いますが、結論から言うと、いずれでも良いのではないかと思います。

また、上記の3つに加え、MBCL(Mindfulness Based Compassionate Livingマインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング)というコンパッションをメインに置いたプログラムもあります。

ある瞑想の先生は、「どのプログラムでも目的は同じで、それは山にレジャーに行くか、海にレジャーに行くか、というようなもので、行き先は違うが、目的は同じ(レジャーならそこで家族と楽しむために行く)。」ということを言われました。

別の言い方をすると、これらは切り口は違えど、マインドフルネスとコンパッションを体験的に学ぶプログラムであり、どの登山口から登ってもよいし、様々な方向から山を見ればその山の全容がもっとよく見える、とも言えると思います。

先日MBCT-Dを修了された方(うつの経験は無い方)から、「MBSRは参加したことがあり、今回のMBCT-Dに参加することで、ワークはそれぞれ特徴があるが、エッセンスの部分は同じで、そこの理解が深まった」とという感想もありました。

(後編へ続く)


【募集中】現在募集中のプログラム

Zindel Segal博士ウェビナー:2月21日(日)12:00-14:00
MBCT開発者の一人であるSegal博士による日本向けウェビナー(通訳あり)です。事前のご質問もお受けしています。

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MBCT-L 無料オリエンテーション:1月10日(日)20:00
MBCT-L 8週間コース:1月19日開講 19:45
MBSR 8週間コース:1月25日開講(月曜19:45コース)
MBSR 8週間コース:1月27日開講(水曜13:00コース)
マインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング(MBCL):1月30日開講)





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